米国は既に中国からの輸入品約2千億ドルに25%の関税を課し、今週のトランプ=習近平会談の結果次第ではさらに玩具など最終消費財3千億ドルについても追加関税を課す考えだ。
だが中国には「上に政策あれば下に対策あり」という有名な諺がある。この格言を関税問題に当てはめると「第三国を経由した輸出」が「下の対策」と言えるだろう。
典型的な例では、これまで米国に製品を輸出していた中国のメーカーは、関税を回避するために、製品をベトナムのある会社に輸出する。ベトナムのある会社は、輸入された商品にほとんど手を加えることなく、「メイドインベトナム」のラベルを貼って米国、欧州、日本などに輸出する。これで中国製品に課せられた関税を回避することができる訳だ。
WSJはAmerican tariffs on China are being blunted by trade cheat「中国からの輸入品に対する米国の課税は貿易詐欺で鈍化させられている」という記事でこの問題を指摘している。
ベトナムの税関当局のデータによると、コンピュータや電子機器の中国からの輸入は今年に入って前年度比81%増え、米国向け輸出は72%増えた。これは全世界向けの輸出の伸び率(19%)や輸入の伸び率(13%)に較べて著しく高い。つまり中国のメーカーがベトナム経由で米国に製品を輸出している数字面の裏付けということができる。
関税引き上げ前は、製品はダイレクトに中国から米国に向かっていたが、引き上げ後は商品はベトナムで実質的には積み替えられている。輸送品の積み替えはトランシップTrasshipmnetと呼ばれている。トランシップ自体は積み荷の効率的配送に使われる手法なので本来問題はないが、関税回避に悪用されている訳だ。
米国が貿易交渉を有利に運ぶため、中国を関税強化で圧迫しようとするならば、迂回貿易に対する監視を強化する必要がある。
「下の対策」を取り締まるのは容易ではない。