金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

佐川宣寿元国税庁長官の詭弁を許してはいけない

2020年07月16日 | うんちく・小ネタ

昨日、「森友学園」問題関連で自殺した森本氏の妻が国と佐川宣寿元国税庁長官(以下佐川氏)を「自殺原因は決裁文書の改竄強制が原因」として損害賠償を求める訴訟の第一回口頭弁論があった、というニュースが流れた。

損害賠償請求に対し、佐川氏は「公務員が違法に損害を与えた場合、賠償責任があるのは国で、公務員個人は責任を負わないことが判例として確立している」と主張する答弁書を既に提出しているという。

私はこの佐川氏の主張について大きな疑問を持っている。

確かに、国家賠償法1条1項は「国または公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

と規定している。また過去の最高裁の判例も公務員個人の賠償責任を認めていない様だ。

だがここで見落としてはいけない重要な条件がある。それは「公務員がその職務を行うについて」という職務が問題だ、と私は思う。

身を挺して危険に臨む公務員の方が誤って人を傷つけることはありうる。例えば消火活動に向かう消防車が乗用車と衝突するなど。あるいは「善かれ」と思って実行した経済政策が裏目に出て税金を無駄図解してしまうこともありうる。これらのことで公務員が個人賠償責任を負うとすれば、公務員になりたいと思う人はなくなってしまう。

いや公務員だけではない。会社員だって「会社のために善かれ」と思い「正しい手順に従って」行った行為については会社や株主から損害賠償を求められることはないはずだ。(いや正確にいうと請求されるリスクは常にあるが、最終的に敗訴するリスクは極めて少ないというべきだろう。)

だがもし会社員が不正を行ったり、上司が部下をパワハラした場合はどうなるだろうか?

これらはいずれもそれらの不正を行った社員が損害賠償で訴えられ、敗訴する可能性がある。

従って論点は「決裁文書の改竄」が公務員の職務に該当するかどうか?という点と「改竄という不正の強要」がパワハラに該当するかどうか?だと私は思う。そして「改竄が公務員の職務だ」と考える人はいないと思うし、「不正の強要がパワハラに該当しない」と考える人もいないのではないか?と考える。

司法に正義があるのなら、自殺者の無念を晴らしてあげたい。

すくなくとも裁判の入口で「公務員は何をしても個人賠償責任を問われない」といった身勝手な主張には断固とした反論を行うべきだろう。

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「国を治める前に水を治める」と古(いにしえ)の中国人は言ったが・・

2020年07月16日 | うんちく・小ネタ

中国古代の春秋時代、斉の桓公は「善く国を治める者は必ずまず水を治める」と述べ、治水を国家の重要政治課題に掲げた。

またそれよりも千年以上前、夏王朝を開いた禹(う)は、治水の功績により帝位を譲られたという。

禹(う)が行ったのは黄河の治水だったが、今中国で洪水問題が起きているのは長江だ。

今日(7月16日)発表された中国の第2四半期GDP成長率は、事前予想を上回る3.2%だった。中国の第1四半期経済成長率はマイナス6.8%だったので、中国は1四半期でマイナス成長を脱したことになる。

中国はコロナウイルス騒動以降最初にマイナス成長を脱したメジャーな経済圏なのだが、中国株を含む今日のアジア株は水面下に沈んでいる。

株価下落の理由がこれまでアリババの牽引などで上昇していた相場に対する警戒感なのか、それとも他の理由があるのかは私には分からないが、長江の洪水問題も重しになっているのではないだろうか?

長江の洪水問題に関して、うわさが流れているのは三峡ダムの崩壊リスクだ。あるいは三峡ダムに水を貯めすぎると水圧でダムが崩壊する危険性が高まるので、ダムの管理者が早めに行ったため、下流域で想定外の洪水に襲われたといううわさだ。

このあたりはうわさであり、これ以上コメントするつもりはない。

ただし禹(う)の話に蛇足を加えれば、禹(う)の父親は9年間治水事業に取り組んだが、成果を上げることができず、皇帝の怒りをかって誅殺されたという。

うがった見方をすると洪水が猛威を振るう時は誰がやってもうまく治水できないので、禹(う)の父親はスケープゴートにされたということができるかもしれない。

あるいは禹(う)の父は水没地域を埋める工法を取った(禹(う)水はけを良くする工法を取ったという)というから工法が不適切だったのかもしれない。

もし万一三峡ダムが決壊するような事態になれば誰かが政治的なスケープゴートになるかはどうかは分からないが、下流の人民に大きな被害と中国経済に新たな難問が起きることは間違いない。

 

 

 

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Zoom株下落はコロナ需要の減退の現れ?

2020年07月16日 | 投資

このところコロナウイルス関連で値を飛ばしてきたハイテク銘柄が売られている。

純粋ハイテクという訳ではないが、コロナウイルス関連で値を飛ばしてきたアマゾン株も昨日75ドル(約2.4%)値を下げた。

米国株全体の動きを見ると、コロナウイルスのワクチン開発期待から旅行関連の株が買われ、リモートワークや自宅籠り銘柄が売られている。

これは自然な流れなので、それ程気にすることはない。コロナ問題が落ち着いてくるにしても、デジタルトランスフォーメーションの流れの一環として、リモートワークは拡大を続けるだろう(米国の話)。

だからマイクロソフトなどフルラインのIT企業の株価は中期的にまだ伸びしろは大きいと私は見ている。

だがZoomのようにビデオ会議に特化している企業の場合は話は違う。

Barron'sのニュースによると昨日CFRAのアナリストがZoom株を売り推奨にした。同アナリストの株価見通しは215ドルで昨日の引け値256ドルより16%ほど安い。

もっともZoom株は1年前に較べると4倍近く上昇しているので、以前から持っている人はそれ程慌てることもないだろう。

このアナリストが売り推奨する理由はDemand surge could be over「需要急増は終わった可能性がある」というもの。31人のアナリストの内売り推奨にしているアナリストは3名なので少数意見なのだが、同社株の見通しについてはアナリスト平均は219ドルと現在の株価を大きく下回っている。

Zoom株の動向はコロナ特需株とその背後にあるコロナ特需の動向を見る上で興味深い。

ちなみにZoomの株価は昨日1.46%値段を下げ、その後の時間外取引でも1.71%値段を下げている。

 

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