Norah Jones Come Away with Me{Full Album 2002}
今日(7月10日)自筆の遺言書を法務局に預かってもらうことができる制度が発足したました。
これにより自筆遺言証書の弱点である紛失・亡失や相続人による破棄・隠ぺい・改ざんのスクはなくなるのでそれなりにメリットがあることは間違いないでしょう。
しかし私はこの制度をなお欠陥だらけと考えています。
何が欠陥か?というと「遺言書のPC作成を認めない(本当に自筆だけ)」点と「本人の死後に遺言書の存在を相続人に知らせる仕組みが構築されていない」点です。
なお今回の民法改正で「財産目録については自書することを要しない」となっているのでPCで作成することが可能です。
相続法改正にパブリックコメントを出す時私はある弁護士さんと少し遺言書のPC作成について意見を交わしたことがあります。弁護士さんの意見では「遺言書本文のPC作成を認めると本人の意思と異なる遺言書が作成される」リスクがあるので「面倒でも自筆で書いてもらう必要がある」ということでした。
あまりにバカバカしい意見なので私はそれ以上議論をすることを止めましたが、この弁護士さんは「今時世界中で遺言書は自筆でないといけないと言っている国は日本だけ(おそらく)」という事実をどう考えているのでしょうか?
日本人以外の人は善人ばかりなのでPCを使って本人の意思と異なる遺言書を作成する人はいないが、日本人の中には悪人がいるので自筆で遺言書を書かないと本人の意思と異なる遺言書が作成されるリスクがあると考えているのでしょうか?
あるいは「自筆証書」という文言の前に思考停止に陥っているのでしょうか?
私がPC利用による遺言書作成を認めるべきだ、と主張している大きな理由は、「対話型穴埋め方式で遺言書を作成するとかなりの問題は片付く」という点です。
無論相続人や相続財産が多岐にわたる場合はテンプレートで遺言書を作成することには無理があります。そのような場合は「自筆」で書いても、本人の本当の目的を正確に遺言できない可能性があります。
そのような場合は専門家のアドバイスを受けながら、将来起こりうる色々な事態を想定して遺言書を作成する必要がありますし、そこまでするなら公正証書遺言にする方が良いでしょう。
私が想定しているのは、「自宅+そこそこの金融資産程度」が相続財産で、相続人が配偶者や子どもというシンプルなケースです。そんなシンプルなケースで遺産争いがない場合でも遺言書がある方が手続きは簡単です。
だから私は「本文を含めて自筆証書遺言はPC作成を認めるべきだ」と主張しているのです。
今回のコロナウイルス問題であぶりだされた日本の行政のIT化の遅れ。
だがもっと遅れているのが遺言書のPC作成問題です。寡聞にして欧米のマスコミなどでこの問題が取り上げられたことを目にしたことはありませんが、おそらく誰も今時自筆で遺言書を書いているなんて想像できないからでしょうね。もし欧米の識者がこのことを知ったら「日本人は習字の練習にために遺言書を自筆で書く習慣が残っている」「コロナ問題で自宅籠り増える中の絶好の暇つぶし」と解釈するかもしれませんね。
なお遺言書の存在を相続人に知らせる仕組みがない点については別の機会に説明したいと思います。