「数字はウソをつかない」Numbers don't lieの著者は「自分は電気自動車推進派でも批判派でもない」と最初に断りを述べてから、電気自動車が決して単純に環境フレンドリーなものではないことを説明していく。
また電気自動車の普及見通しについても立場によって随分開きがあることにも言及している。
電気自動車関連銘柄を投資対象として考える場合に留意しておくべきことだろう。
まず普及見通しについて。2010年にドイツ銀行は電気自動車は2020年までに世界の自動車市場で11%のシェアを占めると予想したが、実際には4%に満たないシェアを得ているに過ぎない。
次に環境問題について。
電気自動車が二酸化炭素排出量を減らそうとするのであれば、バッテリーは化石燃料で発電された電気で充電してはいけない。しかし現実的には世界の電力の6割は化石燃料で発電されていて風力・太陽光発電の割合は12%に過ぎない。残りは水力発電と原子力発電である。
発電方法は国により大きくことなるが、インド、中国、ポーランドでは石炭依存度が高いので、電気自動車は圧倒的に石炭自動車なのだ。
また仮に総ての電気自動車が再生可能エネルギー発電により走らせることができたとしても、ダム、風力発電タービン、太陽光パネルの制作そして自動車本体制作のために鉄やセメントが使われるためそれらの製造工程で温暖化ガスが排出される。また電気自動車は重金属を多く使うので、伝統的な自動車に較べて3倍有害物質を排出する。
筆者によると電気自動車が環境に本当に優しい乗り物であるかどうかは腰を据えて評価する必要があるということだ。
欧米や中国などで電気自動車熱が高まる中、ハイブリッドなどで先行した日本が「電気自動車は環境に優しくない」という主張を声高にすると海外勢から批判を浴びる可能性が高い。
だが海外のしっかりした研究機関等とタイアップして電気自動車が内包する環境リスクには物申すべきなのだろう。
一つはっきりしていることは「電気自動車であれ伝統的なガソリン・ディーゼル車であれ車に乗らないことが一番エコだ」ということだ。
移動手段を車から自転車に変えると地球温暖化ガスが減るとともに健康促進につながるから一石二鳥である。余談になってしまったが。