中国の船舶が領海侵犯を犯しているというニュースはしばしば目にする。領海侵犯が起きているのは尖閣列島を中心とする日本の海域だけではない。東南アジアはもとよりアフリカや南米でも起きている。
なぜ中国は領海侵犯を繰り返すのか?
WSJはChina's Fishing Fleet, the world largest,drives Beijing's global ambitions「世界最大の中国の漁船団が中国政府の世界的野心を駆り立てる」という記事でその理由を解説していた。
記事の趣旨に解説を加えてみよう。
- トランスポンダ(航空機・船舶などの自動応答装置)や世界の登録船舶データの分析によると、中国の遠洋漁業船舶約17,000隻が世界中で魚を捕獲しまくっている。海外水域における漁獲量のシェアは中国が38%で断トツ、2位が台湾で22%、日本・韓国が各10%で3位、5番目がスペイン9.8%、6位アメリカ3.3%となっている。
- 中国外務省は法的に登録されている遠洋漁業船舶は2019年時点で2,701隻だと言っている。また中国政府はWHOの勧告に従い遠洋漁業船舶への補助金を削減し船舶数を3,000隻に抑えることに同意している。
- 記事によると台湾と韓国の遠洋漁業船舶の合計隻数は2,500である。漁獲シェアは中国38%で台湾+韓国が32%なので中国の遠洋漁業船舶が17,000隻というのはいかにも多い。シェアから推定すれば3,000隻が妥当なのだがこの違いはどこから来るのだろうか?
- 2013年に日本船舶工業会が発表している「中国における漁船建造業の現状と展望に関する基礎調査」によると中国が保有する総漁船数は107万隻で世界の漁船保有量の1/4を占めていた。ただし遠洋漁業船舶は1,587隻にすぎなかった。
- この2つのデータから私は次のように推測している。
遠洋漁業は中国の一帯一路政策の重要な部分を担っている。つまり経済発展のおかげで中国では中産階級が急増し、海産物の需要が急増した。中国政府は食の確保の観点から遠洋漁業を後押しする政策を打ち出したため、遠洋漁業向けに建造された船舶以外の漁船が大量に世界にでかけ底引き網など荒っぽい方法で魚を獲りまくり、現地の漁獲規制などに従わないため様々な問題を引き起こしている。
中国に「食は広州にあり」という諺がある。広州の食つまり広東料理は海鮮料理が多い。北京料理というと餃子で四川料理というと麻婆豆腐という肉ベースの料理なのだが少し豊かになると海鮮料理を好むようになるということなのだろう。
これはまったく確証のない勝手な推測だが中国政府は漁船団に「海洋資源の確保のために少々荒っぽく暴れてくれ。中国政府が後押しするから」という程度のことは言っているのではないだろうか?
歴史を紐解けば、エリザベス一世は海賊フランシス・ドレークを使嗾してスペイン船を略奪しまくったというからあり得ない話ではないと思う。