WSJに「ハイテクの次の主戦場はヘルスケアだ」という記事がでていた。
Microsoft's Nuance gambit shows Healthcare is next Tech Battlegroundである。
話の始まりは先日マイクロソフトが音声認識と人工知能のソリューションを提供しているNuance社を160億ドルで買収することを決めたことだ。
Nuance社は医療機関向けにヘルスケアシステムを売り込んでいる。例えば医者が診断記録を書き込むのに苦労している作業を音声認識技術を使ってシステム的に口述筆記することでスピードアップを図ることができる。
医療分野はペーパーワークが多く、IT技術を使って効率化を図る余地が大きい。
マイクロソフトのナデラCEOは「医療組織はデジタル投資を加速して患者の転帰を改善し、大規模なコスト削減を図ることが極めて明確になった」と述べている。
コロナウイルス感染問題がヘルスケア分野におけるデジタル化の可能性を拡大したことは間違いない。
その一例が遠隔医療テレヘルスだ。
遠隔医療の世界全体の市場規模はコロナウイルス禍前で255億ドル(約2兆8千億円相当)と推計されていた。日本の遠隔医療の市場規模は300億円程度なので世界市場でのシェアは1%程度である。
また日本の医療費全体の規模に較べると0.1%にも満たないだろう。
だからやり方によってはかなり拡大する余地がある、と私は考えている。
ハイテク企業のヘルスケア市場への攻め込み方は様々だ。
アマゾンは処方薬の宅配分野に乗り出している上に先月テレヘルスサービスを全国レベルで提供する予定だと発表した。
アップルはiPhoneを利用して医師や病院から検診記録を手元にダウンロードできるようにしている。
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以下は遠隔医療に対する私個人の意見である。
- 国全体で医療費を抑える有効な手段として遠隔医療をもっと積極的に推進する必要がある。
- 個人としても適確に遠隔医療が行われると病院に行く本人と付添人の時間を削減できるので非金銭的なメリットも大きい。
実は私は遠隔医療というほどではないが、ドコモが提供しているdヘルスケアの「健康診断」(チャットベース)を時々利用している。最近では軽いめまいの後かかりつけの内科医に行った後「健康診断」にセカンドオピニオンを求めたことがあり、それなりに役に立ったと考えている。
また「チャットベースで自分の健康状態を書く」ということは、できるだけ健康状態を数値を使って具体的に説明する訓練になると私は考えている。
このような訓練を積むと実際に医者の診断を受ける場合も効率よく症状を説明できるだろうと思う。
たまに病院に行くと当たり前のことだが高齢者の方が多い。
ざっと見たところではパソコンやスマートフォンを使って一人で遠隔診療を受けることができそうな人は多くはない。だけど病院の待合室だけを見て遠隔医療の将来を予想すると判断は間違うだろう。
マートフォンやスマートウォッチを利用して日々の運動量や血圧・脈拍などを記録し、それをかかりつけの医師と共有することでより積極的に健康促進を図ろうと考える少し若い世代が遠隔医療を担うだろう。
ただし前提がある。それは「かかりつけ医」の制度を作ることと健康・医療データを医師や病院が抱え込まず、本人や他の医師・医療機関と共有するシステムを構築することが必要だろう。