金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

前立腺がんテストの効果は少ない

2009年03月19日 | 健康・病気

今日(19日)ニューヨークタイムズの「人気記事欄」を見ていたら「前立腺がんテストの効果は少ない」という記事が上位にあった。今米国で大きな話題になっているのは、A.I.G.の従業員に対する巨額のボーナス支払「事件」だが、読者にとっては前立腺がんテスト問題の方が関心が高かったようだ。米国では50歳以上の男性の大部分が前立腺がんテスト、PSA(前立腺特異抗原)血液検査を受けて毎年18万人以上が前立腺がんと診断されている。

だが最近発表された米国と欧州の二つの研究によると、治療効果と手術等のリスク・影響を較べると前立腺がんの治療は効果が極めて乏しい。そしてPSAテストの必要性まで議論が及ぶ可能性がありそうだ。

PSAテストで前立腺がんの疑いが持たれた患者は生検テストで腫瘍があるかどうか判定される。しかし早期発見が生存率を高めるかどう判断することは困難であった。

今回のテストの結果についてMemorial Sloan-Kettering Cancer Centaer のBach氏は「前立腺がんと診断され治療受けた患者が、その治療によって10年目以降にがんで死ぬことを防ぐ確率は50に1つだ。つまり50人の内49人は命にかかわることのない前立腺がんを治療するために不必要な治療を受けているということだ」と述べている。

不必要なだけならまだしも、前立腺がんの手術はインポテンツや失禁症を引き起こす可能性がある。また放射線治療は便通障害を起こす危険性がある。

米国ではPSAテストが1987年に導入されて以来、40歳以上の男性健康診断ではこのテストはルーティンの一部になってきたが、ガンの専門家達は新しい研究の成果を踏まえて、男性達は前立腺がん治療のリスクと効果を熟考してスクリーニングを受けるかどうかを決めるべきだと述べている。

余談であるが半年程前に「ものもらい」が出来たので眼科に行ったところ「ついでに白内障のテストを受けませんか?」といわれたのでツイツイ受けたところ、問題はなかったが5千円程取られたことを思い出した。ある年齢になると体のアチコチを定期的にチェックする必要があることは理解するが、お医者さんの中には、診療報酬を稼ぐため検査を薦める人もいるのではないかしらん?と思ったことを思い出した。

各種の健康診断やテストについては、早期発見の有効性等について実証的な研究をしてその結果を迅速に国民に知らせることが必要だと思う次第である。

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AIGのボーナス・契約と常識のはざま

2009年03月18日 | 社会・経済

昨日(17日)の夜、スポーツクラブでランニングをしながら7時のNHKニュースを見ていると、オバマ大統領がA.I.G.の話をしながら咳き込んだ。彼はすかさずchoked by angerと言って苦笑いした。「怒りで喉が詰まった」という訳だ。

さてこの苦笑いをどう解釈するかだが・・・・私はオバマ大統領は「ガイトナー財務長官にあらゆる手段を使ってA.I.G.が従業員に支払ったボーナスを取り戻す様に指示した」が、内心では取り戻すことは困難なことを良く承知しているので苦笑いしたのではないかと考えている。

何故オバマがボーナスを取り戻すことが困難なことを知っているかというと彼が弁護士で私的契約の重要性を熟知しているからだ。

7時のニュースを見る前に私はニューヨーク・タイムズのThe Case for Paying Out Bonuses at A.I.G. (A.I.G.がボーナスを払う根拠)という論説を読んでいた。根拠は二つである。一つは企業と従業員の契約であり、それを政府が強権で妨げることはできないというものだ。もう一つはボーナスを支払うのは有能な社員をA.I.G.に引き止めて、クレジット・デリバティブの仕事を継続させないと混乱をきたしてマイナスだというものだ。後者の議論については既にA.I.G.を退職した連中にもボーナスを支払っているので話が複雑になるから、前者についてのみここでは考えよう。

この問題は「税金を使って救済した会社の幹部に一般の国民が不況で苦しんでいる時ボーナスを支払うことは怒りを覚える」という極めて常識的な判断と契約は契約として尊重することが社会の基盤であるという契約尊重の理念の対立ととらえることができる。

日本であれば常識的判断が圧倒的優位に立つところだが、そうはならないところが英米の契約社会である。英米と英を入れたのは、英国で破綻したロイヤルバンクオブスコットランドの経営者グッドウインがブラウン首相らの圧力にもかかわらず、年間70万ポンド(約1億円)の年金を受取ることになっているからだ。

A.I.G.のボーナス問題についてエコノミスト誌も政府に殆ど打つ手なしという見解を取っている。同誌はもしオバマが大統領特権を使ってボーナスを支払う契約の破棄を行うようなことがあれば、共和党はボーナスを批判するよりも激しく攻撃するだろうと述べる。国家権力の私的自治に対する介入に強い反対があるのだ。

またA.I.G.に次の支援金を出す時にボーナス資金分を差し引く案もあるが馬鹿げた話だと同誌は切り捨てる。つまりもしそれでA.I.G.の資金繰が回るなら元々多めに予算を組んでいたことになるからだ。

米政府がA.I.G.幹部からボーナスを取り戻せないとすると、国民の不満は募り、オバマ政権が考えている次の財政支出について議会の承認を得ることが難しくなりそうだ。次のオバマがむせる時は彼は何が首を絞めたというのだろうか?<script language="JavaScript" type="text/JavaScript"></script><script language="JavaScript" type="text/JavaScript"></script>

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中央銀行動くが・・・・

2009年03月18日 | 社会・経済

今日(3月17日)の日経新聞朝刊によると、日銀は昨日の政策委員会で「国際業務を展開している大手行などに総額1兆円の劣後ローンを提供する」ことを決めた。この動きはバンクオブイングランドが英国国債の購入を決定した動きやスイスの中央銀行がスイスフラン高を阻止する為替介入計画を発表するなど各国の中央銀行の活発な動きと軌を一にする。

ファイナンシャルタイムズは今週の米連銀政策委員会で「米連銀がファニーメイとフレディマックが発行した住宅ローン担保債券の購入を決めるのではないかとアナリスト達が予想している」と報じている。

同紙は日本銀行の劣後ローンの効果については限定的だというアナリストの意見を報じている。バークレーズ・キャピタルのロジャース氏は「劣後ローンは銀行のTire 2キャピタルを増強する効果はあるが、今市場がもっとも注目しているTier 1キャピタルを強化するものではないので効果は限定的だ」と述べている。

Tier 1キャピタルの中でもよりコアである普通株式自己資本比率が米国で実施中のストレス・テストの焦点であることはこのブログで既に述べたが、大手邦銀幹部がこのことをよく理解しているとするならば、劣後ローンによる貸し渋り防止効果は限定的であろう。

先週シティが今年に入って業績が好調だと社員向けにアナウンスした後、銀行セクターにプラスの材料が続いたので、同セクターを中心に株価は反発しているが持続するかどうかは疑問だ。問題は実体経済の見通しが悪くなっていることだ。

IMFのアドバイサーは昨日世界経済は0.6%収縮するという見通しを述べた。中でも最悪なのは日本で5%の収縮が見込まれる。1月の公式予想が2.6%の収縮だったから一層悪化している訳だ。

各国の中央銀行の動きと悪化する世界経済特に今後の雇用の悪化などの綱引きをどうみるか・・・・だが、今回のちょっとした株高は長続きしないような気がしてならない。ただ同時に大きく下押しするリスクも遠のいたとも思っているのだが・・・・。

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海外生保に暗雲

2009年03月17日 | 金融

今日(3月17日)の日経新聞朝刊に「生保、再編の主戦場に」という記事があった。金融危機を引き金に生損保の垣根を超えた合従連衡が進む可能性があるという内容だ。その中に「欧米の保険会社も体力が落ち、(買収案件が)どんどん(日本の保険会社に)舞い込んでくる」と記事があった。

海外の保険会社が体力を落としているという記事は先週のエコノミスト誌に出ていた。その記事はIf banks go bang, life insuarance firms sputter.という書き出しで始まる。bangは「激しくぶつかってバンと音を立てる」という意味、sputterというのは「ブツブツ音を立てる」という意味だ。bankとbangの音をかけているので、きざっぽい表現になっているが、要は銀行も生保も同じような金融資産を持っているから、銀行がおかしくなっているなら、生保も資産は痛んでいるというのが理屈だということだ。

しかし生保と銀行では二つの大きな違いがある。一つは資金調達面で銀行は直ぐに解約できる預金や市場調達への依存度が高いが、生保の負債は生命保険という長期資金に依存しているので安定的だ。だから規制当局や格付機関も短期的な資産の劣化にそれ程敏感ではない。

もう一つの違いは金融システムにおける重要性の違いである。銀行の破綻はシステミックリスク(市場の一部における破綻が決済不能を引き起こし、金融システム全体が破綻するリスク)を引き起こすが、生保の破綻はシステミックリスクを引き起こす可能性が低い。

以上のようなことを踏まえてエコノミスト誌は個別銘柄の名前は挙げていないものの、米国の生保はかなり危険な状態にあると警告を発している。クレジットサイトという調査機関によると、米国の6大生保の2008年のレギュラトリー・キャピタル(規制上の資本)は、430億ドルだったがこれは保有する資産8主に社債)の含み損800億ドルを含んでいないということだ。つまり評価損が資本勘定をヒットすると明らかに資本不足という状態だ。

生保は外部借入は少ないが、それでも向こう4年間に米国の6大生保は130億ドルの借入が期限到来するので借換をしなければならない。また欧州の13の保険会社は290億ドルの借入をリファイナンスする必要がある。これについてエコノミスト誌は「生保は増資をして資本強化を行わないとリファイナンスは難しいが、生保会計に信頼が置けないので民間投資家は増資に応じないのではないか?」と厳しい見方を示す。

生保にとってラストリゾートは政府資金だが、生保は金融システムにおける重要性が低いので生保をリストラする場合は、株主のみならず生保の社債投資家も被害を被る可能性が高いと同紙は予想している。

今日の日経新聞には日本の生保の財務内容については言及していなかった。しかし金融機関やノンバンクが企業倒産で相当な痛手を被り、株式の含み損を抱える中、日本の生保の財務状況に変化がないとする根拠はない。

Banks go bang, life insuarance firms sputter.は日本にも当てはまる普遍的な法則だ。

なおまったく個人的な話で恐縮だが、私は数年前に生命保険をかなり解約した。理由は子供達が独立したので死亡保険金をそれ程残す必要がなくなったからだ。エクスポージャーが少ないと生保の健全性に余り懸念することがなくなった。ものがないということは悩みの少ない生活を送る第一歩ということなのだろうか?もっとも子供達に残す程のものもない・・・というのは少し寂しいことだが。

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またしても公明党のバラマキにうんざり

2009年03月17日 | 国際・政治

今日(3月17日)の日経新聞に「公明党が地上デジタル放送移行のため、アナログテレビを1台2万円で国が買い取る」案を決めたと出ていた。国民の反対が多かった定額給付金を強く主張したのも公明党だ。巷間公明党は党員が受取った定額給付金を政治献金として回収し、総選挙や都議選の選挙費用に回すといわれている。

私はこのような政策には反対である。自分が観るテレビ位自分で手当をするべきだというのが私の基本的な考え方だ。

私がアナログテレビを国が買い取る案に反対なのはたまたま私が既に地上デジタル放送対応のテレビを購入したからだけではない。このような政策が頻発すると「国民の中に待っていれば政府が何か補助金を出すのではないか?」という風潮を醸成することを懸念するからである。補助金の財源は税金である。国の政策を理解して早目に対応した人間に何の補助もなく、ぎりぎりまで待っていると補助がでるというのは不公平である。

税金は国民一人一人の力では解決できないようなもっと大きなこと、例えば医療分野の生産性向上などに優先して使うべきで、一人一人がちょっと努力をすれば捻出できる程度の金を薄くばら撒くべきではない。ただでさえ日本の財政赤字は先進諸国の中で突出しているのである。

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