金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

フレディマックの住宅ローン救済策

2009年03月16日 | 社会・経済

以前私のブログに「米国が住宅ローン救済の特効薬を発表した」という記事を書いた。これに関して最近ある読者の方から「 この住宅ローン救済はいつから施行されるのでしょうか? 効果はいつごろから期待できるのでしょうか?」というご質問を頂いた。

その回答の一部として3月5日にフレディマックが発表したプログラムのポイントをご紹介しておきます。

「我々(フレディマック)はオバマ大統領の住宅市場に安定性と買い易さを再構築するという力強い計画をサポートすることを誇りに思う」という書き出しで始まるメッセージは二つのプログラムを紹介している。いずれも現在フレディマックが融資しているか保証している住宅ローン債務者が対象だ。

Freddie Mac Refinance Mortgateというプログラムは、現在住宅ローンを遅延なく返済を続けている債務者が対象で、借換することで金利を低くすることができるか、返済期間を短縮することができる場合に利用される。借換は掛け目が105%と担保割れしていても可能だ。しかし借換資金を二番抵当の返済に回すことはできない。このプログラムは今年4月1日から2010年の6月10日までという期間限定で利用できる。

もう一つのHome Affordable Modification というプログラムは、毎月の返済額を減額することで、延滞に陥っている(および陥る危険性のある)住宅ローン債務者を救済するというものだ。この対象となるのは2009年1月以前にフレディマックから住宅ローンを借りた人および住宅ローンについてフレディマックの保証を受けている人だ。この申請は今年4月1日から始まる。

以上のようなことから、オバマ大統領の住宅ローン救済策は4月1日から色々な形で実施されていくと思われる。ただし提案したこと総てが実行に移されるかどうか今のところ私にはよく分からない。また効果の程の判定にはもう少し市場の反応を見る必要があると思われる。

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A.I.G.相手に儲けた人達

2009年03月16日 | 金融

米国政府から1700億ドルという巨額の資金援助を受けているA.I.G.が、二つのニュースで米紙の紙面を賑わせた。一つは1億65百万ドルという巨額のボーナスを支払うという件。これには財務長官を初め、政府首脳や民主党議員が怒っている。こちらの話は朝のテレビでも放映していたので省略しよう。

もう一つの話はA.I.G.を取引相手として利益を得たカウンターパーティの話だ。A.I.G.がおかしくなった最大の原因は、住宅ローン担保債券のデフォルト・スワップ(つまり保険)を引き受けたことによる。その保険の買い手の名前が公開された。大口先はソシエテ・ジェネラル、ドイチェ・バンク、ゴールドマン・ザックスというところだ。彼等は昨年住宅ローン担保債券の価値が大幅に下落した時、契約に基づいて追加担保差し入れをA.I.G.に迫っていた。A.I.G.は「9月までに政府から資金援助が得られないと現金不足になる」といって、政府から850億ドルの緊急援助を受けた。この金は追加担保として昨年9月から12月の間にソシエテ・ジェネラル等に224億ドルが支払われた。更にデフォルト・スワップ契約の対象となっている不良資産化した証券類を購入するため300億ドル近い政府資金が使われた。

またドイチェバンクやゴールドマンザックスは、A.I.G.から証券借入を行っていた。証券借入とはヘッジファンド等が将来の証券価格の下落を見込んで、ショートポジションを取るために証券を保険会社(この場合A.I.G.)等機関投資家から借入するものだ。証券を貸し付ける機関投資家は、担保として現金を受取る。A.I.G.はこの現金で利回りを稼ぐために住宅ローン担保債券に投資を行った。これが裏目に出て損失が拡大した。

A.I.G.は運用利回り保証付運用商品でも損を出している。A.I.G.は州債を発行したカリフォルニア州等から発行代わり金を資金需要が発生するまで、利回り保証付きで運用を受託していた。これも損失の原因になった。

このように見てくると、米国政府がA.I.G.を救済するために出資した資金、つまり納税者の金は米国内外の大手銀行や州政府などに流れたことになる。

だがこれをもって利益を得た~正確にいうと保険を掛けたことで損失を防ぐことができた~ドイチェバンク等を非難することは妥当ではない。何故なら彼等は保険料を支払って、A.I.G.から保険を買っていたからだ。これを非難すると自動車保険に入っていた被保険者が、交通事故で保険金を受取って非難されることになるからだ。保険を買っていた連中は「スマート」だったと賞賛されるべきかもしれない。

問題はA.I.G.が保険会社として「引受義務を果たせる」保険を販売していたか?どうかという点である。結果的に見るとA.I.G.は引受能力を超える保険を販売したことで破綻し、そのツケが米国民に回されたということだ。

A.I.G.は「ボーナスの支払については破綻前の契約に基づくものだから払わざるを得ない」と言っているが、引受能力を超えるようなハイリスクのビジネスをしていた連中にボーナスを支払うというのは、到底普通の米国民が納得する話ではないだろう。A.I.G.相手に儲けた人というのは、取引相手ではなく、内部で高給を取っていた連中である。

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舎人ライナーに乗ってみた

2009年03月15日 | まち歩き

Mejiro_2 3月14日日曜日舎人ライナーに乗って西新井大師に行った。天気が良いので行ったことがない西新井大師に行こうとワイフと決めて出かけた。西新井大師だけでは時間が余るので、舎人ライナーの終点・見沼代親水公園まで行き少し散歩することにした。舎人ライナーに乗ったり降りたりするので、都営交通乗り放題の1日パスを700円で買う。

見沼代親水公園は人口の小川に沿った遊歩道だ。駅から少し歩いたところに梅の木があり、メジロが花の蜜を吸っていた。

西新井大師西駅まで戻り、14,5分歩いて西新井大師に到着。参道には色々な出店があって面白い。味見につまみ食いした黒梅干が美味しかったので二袋買う。梅干の塩抜きをして干したもの。血液をサラサラにするという効能書きがある。

Nisiarai

西新井大師の本堂は戦後の建築だが規模は大きい。お正月の初詣の広告で名前は知っていたが参拝するのは今日が初めてだ。

Kawazu

境内には河津桜が一本咲いていた。桜といえばお花見の時期まで後2週間ほどである。大分気温も上がってきた。春は近い。

Omen

出店のお面をアートフィルターで撮った。赤々としたお面は異空間を作っている。

舎人ライナー沿線では「舎人公園」という大きな公園があるがこの時期は花も少なそうなので今回は割愛した。西新井大師からの帰路は参道前から都営バスでJR王子駅に出た。王子や池袋は早春の陽気に誘われた人で溢れていた。

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不況で死刑が減る

2009年03月14日 | うんちく・小ネタ

エコノミスト誌に「米国で不況下、自治体の経費を削減するため死刑廃止に向かう州がある」という記事が出ていた。米国50州の内死刑を廃止している州は14州だけだが、不況の影響でコロラド、カンサス州などで経費削減から死刑廃止に向けて議論が起きているそうだ。

実は「財政難に苦しむ州が死刑を再考している」という副題を見た時、一瞬「経費削減のため終身刑を減らして死刑を増やすのか?」と勘違いしたが、死刑の方が終身刑より費用がかかるということだ。

死刑判決を下すためには、集中的陪審員の選択、審理、上告という手続きに10年に及ぶ時間がかかる。冤罪を防ぐために死刑判決にはより慎重な審理を尽くす必要がある訳だ。また死刑囚は厳重な監視の下独房に収監されるというのもコストアップ要因だ。

アーバン・インスティチュートというシンクタンクの研究によると、メリーランド州で調査したところ死刑判決には1件3百万ドルかかったということだ。これは死刑を求めないケースに比べて2百万ドルも高いとエコノミスト誌は報じている。

3百万ドルというと約3億円だ。不思議な符合だが日本のホワイトカラー族の生涯賃金にほぼ等しい金額である。この辺りの金額が命の重さということだろうか?

死刑が廃止され終身刑が一番重い刑となると、犯罪抑止力が減少するのではないか?と懸念されるかたもいるかもしれない。しかしエコノミスト誌は「最も熱心に死刑執行を行っているテキサスやオクラホマのような州の方が、死刑を廃止している州より犯罪率は高い」と死刑廃止論者に有利なデータを紹介している。

最近日本で「こんな残虐な犯罪は死刑に値するのではないか?」と思う事件の判決が懲役刑だたケースがあった。まさか国の財政難を配慮して裁判所が死刑判決を減らしているとは思わないが・・・・。

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グーグル・ボイス また一つの通信革命

2009年03月13日 | うんちく・小ネタ

少し前から「日本の携帯電話の特殊性」に関心を持ち、地域金融機関向けの雑誌・ニューファイナンスに「携帯電話からみる日本の情報技術投資の問題」という小文を書いた。詳しい内容は省略するが「日本の携帯電話は通信本来の機能で勝負せず、付属品(カメラ)や端末の見た目などで勝負している」「若年層を中心に娯楽的な利用を助長しているが、ビジネスの生産性向上のためのサポートが乏しい」という主旨だ。

携帯電話について特別の知見もないので汗顔ものだが、岡目八目という言葉もあるので記事を書いた次第だ。ただそれ以来携帯電話に関心が高くなり、関連記事は目を通すことにしている。

さて本題であるが、昨日(3月12日)米国でグーグルが「グーグル・ボイス」という新しいサービスを明らかにした。ニューヨーク・タイムズによると、この機能は「携帯電話・会社の電話・自宅の電話などを一つの電話番号uni-numberで結びつけ、この番号に電話がかかると総ての電話が鳴り、どこからでも通話できる」というのが基本機能だ。

この機能自体は2005年にグーグルが買収したグランドセントラルという会社が提供していた。買収後グーグルはこのサービスを新規に提供してこなかったが、今回サービスを見直し大々的に提供していこうという試みのようだ。

グーグル・ボイスには単一電話番号以外に幾つかの機能がある。「伝言メッセージのテキスト化」というのがその一つだ。ソフトウエアが音声をメッセージ化する。音声メッセージ化ソフトは完璧ではない(たとえば句読点を感知できない)。だが一般的に数字(電話番号・到着時間など)は正確に記録できるという。

まったくの余談だが英語の発音の苦手な日本人(私を含めて!)の声をメッセージ化するとどうなるのか興味のあるところだ。例えば「お前を解雇する」つもりでfireといったつもりがhire(採用する)になったり、「愛している」loveが「こする」rubになったりするのだろうか?

話を本題に戻すとメッセージ化された音声は、生の音声と違い順番に聞く必要はないので、重要なものをピックアップすることが容易だ。

他にも幾つかの機能がある。例えば「電話会議機能」「激安の海外電話機能~アメリカからフランスに1分2円!~」など。

グーグルはこれらの機能を無料(海外電話は有料)で提供する。音声のテキストメッセージ化を有料で行っている会社(Phonetagなど)は青くなっているだろう。

グーグル・ボイスのようなサービスは、ビジネスにおける生産性を大きく高めるだろう(どこにいても電話でつかまえられると休む閑もないという弊害はあるが)。このようなブレーク・スルーが起きるところが米国の活力のあるところだ。

これに較べると日本の携帯電話は繰り返しになるが、携帯端末を美しくするようなことに力を裂き過ぎている気がする。これは江戸時代という平和な時代に火縄銃に象嵌を施し美術品の域にまで高める努力をしながら、武器としての技術革新はまったくなおざりにしたことと相似形である。

なおグーグル・ボイスの日本語版ができるのかどうか私は知らない。英語が堪能な日本人同士なら英語のグーグル・ボイスを活用する手はあるが、我々英語の発音が苦手な日本人同士では「バベルの塔」になるだけだろう。

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