金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

株高でも株式敬遠の米国個人投資家

2011年04月22日 | 投資

過去3年の高値を更新した米国株式市場だが、株式を保有する人は低下を続けているという調査結果がギャラップから出ていた。

調査によると、今年の4月に株式(個別株、株式投信、401kプランや個人退職勘定で保有する株)を保有する個人の比率は54%で、1999年の調査開始以来最低となった。

株を保有する人の割合は、金融危機が始まる前の2007年に始まっている。07年の株式を保有する人の割合は65%で、08年62%、09年57%・・・と低下を続けている。

年収で見ると上位層(年収7.5万ドル以上)は87%が株を所有し、学歴で見ると大学院卒の83%、大学卒の73%が株を保有している。支持政党別では、民主党・独立系支持者は半分が株を保有するが、共和党支持者では64%が株を保有する。

一方価格下落が続いているが、長期投資の対象として一番高い支持を受けているのが、不動産で33%のアメリカ人は不動産が一番だと考えている。2番目は株式と貯蓄でともに24%。一番支持者が少ないのは債券で12%だ。

ギャラップは金融危機やそれによる損失あるいは政府の金融機関救済、証券会社のスキャンダルなどの影響で多くのアメリカ人は株式離れをおこし、相場が回復してきても大部分のアメリカ人にはその理由が分からないから、尻込みしているのだと分析している。

一方不動産については株式と同様厳しい損失を出し、明確な回復の兆しは見えないものの、多くのアメリカ人は長期的には最良の投資だと考えている。その理由は価格が大幅に下落しているので、長期保有すれば相対的に魅力的だと思われることと、株式や証券会社より理解し易いということではないだろうかというのがギャラップの分析だ。

☆   ☆   ☆

金融機関がフィナンシャルプランナーなどが、個人に資産運用を勧める場合「米国では株式を保有する個人が多い・・・」などという場合があるが、今起きていることはむしろ個人の株離れという現象だということは頭に入れておいて良いだろう。

個人という長期安定的な投資家が投資意欲を減退させていることは、ボラティリティの上昇要因になるだろう。

なおギャラップの分析には出ていなかったが、退職者の増加で株式保有者が減っているということもあるだろう。

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「つなみ警告石碑」から考える

2011年04月21日 | ニュース

津波に襲われた岩手県宮古市。その中の姉由地区に「つなみを警告する」石碑があり、その教えを守った住民は今回の津波から救われたという話がニューヨーク・タイムズに出ていた。

その石碑には「これより下に家を建てるな」という文字が刻まれている。3月11日に東日本を襲った津波はこの石碑の300フィート(91.44m)下まで押し寄せてきたが、祖先の命令を守った姉由地区の11世帯は無事だった。

日本の海岸には数百の「つなみ石碑」があり「荷物を棄てて高台をめざせ」という警告が刻まれていたり、死亡者の名前が刻まれていたりする。しかし姉由の石碑のように家を建てる場所を示しているものは少ない。そして姉由地区の住民のように先祖の教えを守り高台に住み続けた住民も少なくなっていた。

タイムズによると大部分の「つなみ石碑」は、1896年の明治三陸沖津波を含む百年前の二つの大津波の後に作られたものだ。だが第二次世界大戦後の開発ブームの中で、多くの住人は先人の警告を無視して、漁船に近い海岸地域に移住していった。

いや先人の警告を無視してというと言い過ぎかもしれない。宮古市では「万里の長城」と呼ばれる巨大な防潮堤を築いて津波に備えていた。だが今回の津波の高さは明治三陸沖津波を上回る38.8mで、易々と防潮堤を超えてしまった。

このことは自然災害の破壊力の大きさと対処の仕方を再考させるものだろう。

つまり自然の脅威に対して、力で対抗するのではなく、古人のようにそれを避けるという対処方法だ。

最近読んだ「『史記』と日本人」という対談集の中で、画家の安野光雅氏が次のように述べていた。「へたに堤防を築いているところにかえって洪水が起こったりしますね。ドイツでエルベ川のずっと上流の方に行って驚いたのは、堤防がないんです。ただ川幅がぐっと広くて、河川敷には人が家をつくっていない。」「紀元〇〇年にここまで水がきたから、と線を引っ張って、そこから先には入るまいとする。・・・・人間が不自然なことをするから天が怒るんです。だから言っちゃなんだけど、ダムなんて本当は不自然なことですね」(この対談集は震災前に出版されている)

自然との調和を前提とした安全対策を仮にパッシブ型安全対策と呼ぼう(自動車の安全対策などでは、エアバッグなどをパッシブセーフティと呼ぶがそれとは異なる概念)。

例えば雨具等の登山装備が進化したからといって、悪天候の中を強行突破しようとするのは、アクティブな対処方法で、天気が回復するまで待とうというのがパッシブな安全対策だ。技術の進歩と時間的余裕のなさがパッシブ型安全対策をまどろっこいものにしているが、自然の力は恐ろしいものだということを知らせたのが今回の津波だった。

ところでパッシブというと、地熱や太陽熱を最大限に利用した省エネルギー型の住宅をパッシブハウス(住宅)という。電力不足が予想される中注目を浴びるコンセプトだろう。

またパッシブハウスを建てる程の金がなくても、暑い時は自然の風を取り入れゴロゴロして過ごす・・・・シエスタ(午睡)などというのもパッシブな対応だろう。

我々はアクティブ過ぎる生き方から少しパッシブな生き方へ軸足を移すことを考えるべきなのかもしれない。

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働き過ぎの日本人・ゆったり暮らすトルコ人

2011年04月20日 | うんちく・小ネタ

エコノミスト誌のディリーチャートに、日本・フランス・ドイツ・英国・米国・トルコの6カ国について人々が一日の時間をどのように使うか示すグラフが出ていた。(1998-2009年。15歳-64歳)

「お金が貰える仕事及び学業」で一番働くのは日本人で6.3時間働く(および学ぶ)。一番少ないのはドイツ人で3.9時間だ。ただし日本人は家事雑用や子供の世話など「お金が貰えない仕事」では一番働く時間が短く2.5時間だ。お金が貰えない仕事に一番時間を費やすのはトルコ人で3.4時間。

お金が貰える・貰えないに関わらず仕事に費やす時間が一番長いのは、日本人で8.8時間。その次に長いのは米国人で7.8時間だ。一番短いのはドイツ人で7.1時間だ。

食事と睡眠に費やす時間が一番多いのはフランス人で11.1時間。日本人は英国人と並んで一番短く9.8時間だ。

レジャーに費やす時間が一番長いのは米国・英国・トルコが同率1位で3.3時間。日本はフランスと並んで一番短く2.2時間だ。もっともフランスの場合、食事もレジャーだろうから「睡眠・食事・レジャー」を合計で考える必要があるだろう。「睡眠・食事・レジャー」の合計で見た場合、一番長いのはトルコで13.8時間だ。一番短いのは日本で12時間。フランスなど日本以外の国は皆13時間を超えほぼ拮抗している。

「働き過ぎ」が統計に出る日本人。働き過ぎだから睡眠・食事・レジャーの時間が少ないのか?レジャーや食事でゆったりと時間を使うことができないから、仕事に精を出すのか?一枚のチャートはそこまでは語らない。

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英国王子の披露宴も倹約型?

2011年04月20日 | ニュース

4月29日に予定されている英国のウイリアム王子とケイトの結婚披露宴には、650名のゲストが招待される予定だ。ニューヨーク・タイムズによると、この披露宴で供される食事はコース料理ではなく、立食形式のカナッペだ。これは王室の披露宴としては、例外的に簡素なものらしい。

英国王室の前コック長の話によると、一人15個程度のスモークサーモンやコーニッシュ・パイ(英国のミートパイ)が供される予定だ。

記事によると、立食形式が取られるには幾つかの理由が考えられる。大きな理由はバッキンガム宮殿に650名の着席型の食事を提供する十分な設備がない(150席位なら問題ない)ということだが、経済的苦境が続く英国で豪華な披露宴について国民がどのように感じるかという配慮も働いているということだ。

ロイヤルウエディングの経済効果を期待している英国だが、王室の節約ムードが前にでると期待薄かもしれない・・・と私は考えている。

ウイリアム王子の披露宴はテレビで世界中に放映されるが、立食は格好良いということになって新しい英国スタイルが流行るかもしれない。これは無責任な推測に過ぎないが。

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消費税3%引き上げ、現実味を帯びる

2011年04月19日 | 政治

今日(19日)読売新聞朝刊は「政府は昨日(18日)早ければ来年度にも消費税を3%引き上げ、復興財源に充てる検討に入った」と一面で報じた。消費税1%は2.5兆円の税収なので、3%で7.5兆円。3%引き上げは3年間の時限措置で、これで復興財源の大半を賄おうという計画だ。このニュースはロイターを通じて世界に流れた。

昨日はたまたまS&PがAAAの米国国債の見通しを「安定的」から「弱含み」に変更した。巨額の財政赤字と政府債務の増加がその理由だ。

世界的に財政赤字の拡大から、国債への信頼が低下している中、日本が震災復興に向けて税収確保策を示さないと、市場の信頼を得られないというタイミングだったのかもしれない。

枝野官房長官は今日の午前中「政府内で消費税の引き上げが検討されていることを明らかにした上で、具体的財源についてなんらかの特定の方法を検討している段階ではない」とコメントしたが、ポイントは前半にありそうだ。

昨日日経新聞が行なった世論調査によると、70%の人は震災復興のための増税に賛成している。消費税の引き上げを実施するタイミングだろう。ところで70%というと菅首相の不支持率も同じ70%だ。

今誰が首相をしても増税は避けられない状態だが、国民として増税を担う以上は、もう少し信頼できるリーダーが欲しいというのが本音だ。

昨日の国会で菅首相は野党議員から、緊急炉心冷却装置が使用不能になってから、緊急事態宣言まで2時間半かかったことを指摘された。首相が原発危機管理の重要性を認識していなかったことの責任問題が広がる可能性がある。

だが、「この人なら菅首相より格段に頼りになる」という政治家が見つからないのが今の日本の大きな問題。半数の人は民主党も自民党も不信任である。効率的で納得のいく復興資金の使い道が見えない中、3%の消費税引き上げだけが一人歩きをしはじめそうだ。

コメント (2)
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