惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

2015-06-08 21:28:12 | 草花

 関東甲信も入梅。去年より3日遅いが平年並みだとか。

 夕方、いつ降られてもいいように傘を持って散歩に出ると、近所の空き地に大きなアザミの花が咲いていました。

 この季節に咲くのはノアザミでしょうか。
 でも、苞が開いているところが、ノアザミとは違っているように見えます。よくわかりません。

 このアザミを眺めていると、あたりを縄張りにしている野良猫のトラチャン(茶トラなので勝手にこう呼んでます)が足元に寄ってきて、体を擦り付けます。しかたないのでしばらく相手をしてやりました。人恋しかったみたい。

 今夜の文楽師匠の落語は「富久」。これまた十八番です。
 先日、談志の「富久」を聴いて唸ったばかりですが、文楽師匠のも素晴らしい。談志さんとはずいぶん印象が違います。

 いちばん違うのは幇間の久蔵の人柄。談志の久蔵は切羽詰っていて、自棄気味のところがありました。文楽だと、人が好く、かなり小心。あと、師走の江戸の町の空気が違って感じられます。談志は空っ風が吹きまくる寒空の下を水洟たれながら走りまわる感じ。文楽さんはややぬくもりのある町のよう。それぞれでしょうね。

 CDの解説で永井啓夫さん(正岡容の弟子)が、文楽が「富久」を高座にかけると聞いて楽しみに出かけたが、「まだ出来上がってないから」とか「病気で休み」だとかで、三、四回、聴き損ねた。なので批評で「文楽は今月も〝富休〟であるなどと書いた」と記してあります。
 あとでその頃のことを尋ねると、文楽は「いやーな顔をして」どうしても噺が出来上がらず「あれほど辛かったことは、自分の生涯にほかにはないと語った」そうです。
 特に気になったのは、自分がやろうとすると、火事見舞いに旦那の屋敷に久蔵が駆けつけ、二人の会話になるところ。「うしろに火事の騒ぎ、それも火の盛んな時から次第に火勢が衰えていくという火事の騒ぎが、どうしてもその二人の会話のうしろに出てこない」――それが不満だったのだという。
 芸の道の厳しさがわかる話であります。