金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国、住宅バブルの危ない兆候

2007年03月28日 | 金融

バブルというものは事後的にしか分からない。グリーンスパン前米連邦銀行議長は「資産価格が急速に3割程度下落すればバブルだろう」という。従って今米国の住宅価格がスランプに陥っていてもこれをバブルの崩壊の予兆というべきかどうかは難しいところだ。

しかし別の切り口から見ると危ない兆候が見える。それは「詐欺」などの犯罪の可能性だ。一般に資産価格の上昇は「実需」が持続し価格の恒常的上昇が起きると人々の間に「神話」が生まれる。そしてその神話を悪用して金儲けを試みる悪い奴等が跳梁しバブルを拡大させる。だがバブル崩壊の兆候とともに悪事は摘発され、バブルは急速にしぼんでいく。

無論米国の住宅がこの轍を踏むのかどうか不明だが、米国の大手住宅会社に当局の査察が入ったというニュースがあった。

ウオール・ストリート・ジャーナルによると:

  • ノースキャロライナ州シャーロットのFBIスポークスマンは「大手住宅ビーザー社を査察したところ、企業・住宅ローン、投資を含んで潜在的に色々な詐欺の疑念があった」と述べている。FBIの査察は住宅都市開発局と内国歳入庁とともに行なわれたもので、住宅都市開発局は今後同社の住宅貸付が連邦当局の規制に準拠しているかどうか詳細に調査を行なうということだ。

現時点でビーザー社が法律違反を起こしたという確証は出ていない様だが、ビーザー社が開発して住宅ローンをアレンジしたプロジェクトで異常に高い競売率が起きている。FBIは複数の筋から情報を得て、査察に踏み切ったらしい。

米国では大手住宅業者が社内に住宅ローンアレンジ部門を持っていてここでローンを実行し、それを証券化のため投資銀行等に売却する。大手住宅会社が「販売促進のために甘いローンを出していた」となると結構根の深い問題になりそうだ。

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東京ミッドタウンにみる世界の二極化

2007年03月28日 | 社会・経済

今日のウオール・ストリート・ジャーナルにオフィスビルに関する二つの記事が出ていた。一つは東京ミッドタウンに関するもので、もう一つはインドのムンバイに関するものだ。この二つの記事を読むと今世界のオフィスビル需要が急増していることを実感するとともに世界経済の二極化を痛感する。

投資の観点から見ると、今日本だとかインドだとかの区別は余り意味がない。意味があるのは「世界経済につながっているかどうか?」ということである。

まず記事のポイントを見てみる

  • 今東京では92の高層ビルが建築中、これはニューヨークの119件について世界で2番目、因みにロンドンでは68件、北京では52件の高層ビルが建築中である。
  • 東京ではプレミアムクラスのオフィスビルの供給は成長企業の需要に追いつかない。東京のビジネス中心街の空室率は2005年12月の4.2%から昨年末の2.9%に低下している。
  • ベテランの不動産投資家達は2つのトレンドがあるという。つまり都市部での不動産価格の上昇と地方での下落である。日本は工業主導経済からサービス主導経済にシフトしつつある。幾つかの企業は工場を海外に移転し、中国やインドの低賃金メリットを享受している。しかしそれらの企業でもマーケッティング部門と財務部門は日本に置いている。従って工場用地のニーズはないが、オフィスの需要はある。
  • 不動産投資会社ダビンチ・アドバイザーズの金子社長は「東京に関する限り私は強気だが、日本のそれ以外の土地については極めて楽観的という訳ではない」という。

ウオール・ストリート・ジャーナルは東京ミッドタウン程、日本の経済転換の見本はまずないだろうと結ぶ。それはステート・ストリート銀行や日興アセットマネジメントを含むほとんど総てのテナントがサービス業だからである。

なお私のコメントを付け加えるならステート・ストリート銀行はカストディ専門銀行であり、投資信託や年金基金による証券投資のバックオフィスである。つまりサービスセクターの中で証券投資に係るところはかなり大きいということだ。

次にムンバイに眼を転じよう。

  • ムンバイのビジネス中心街というサブマーケットは世界の176の主要都市の中で7番目に高いところである(リチャード・エリス社調べ)。因みに一番高いのはロンドン西部で212ドル/sfでムンバイは106.09ドル/sf。
  • ムンバイのオフィス中心街には、高い経済成長を続けるインドの消費者の需要を狙った米国等の外資系金融機関の需要が高い。
  • 人口12百万人のムンバイは貧困、人口過密、下水道等のインフラ不備に悩みながら他方インドの金融センターでありまた映画産業の拠点である。つまり「インドの上海かニューヨーク」なのだ。
  • ムンバイでは開発が続いている。インドの他の古い都市では開発用地を見つけることは極めて困難だが、ムンバイではまだ開発用地はある。

もう一度東京とムンバイの話を整理して考えてみよう。

  • グローバル化と情報産業の発達で中国やインドが先進国の工場やバックオフィスあるいはコンピュータ・プログラム等の開発拠点となった。
  • 先進国の製造業が工場を発展途上国に移した結果、先進国の地方では土地に対する需要の減少が続いている。
  • 一方金融業やその他サービス業あるいは製造業の本部・マーケッティング部門は、世界中の大都市でオフィススペースを求めているので、開発が追いつかない程需給がタイトになっている。

つまり今世界は二極化しつつある。それは「先進国・発展途上国」という区分ではなく、「グローバル経済圏と国内経済圏」である。そして東京ミッドタウンの様に世界の経済圏に結びつくファンクションを担うところは繁栄を享受できるということなのだろう。

グローバル化が止められない流れであるとするならば、その下流に起きる一国内の大都市圏・地方との経済成長の格差という問題もまた不可避なのである。

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アクティビスト銘柄が直ぐ分かると勝てるのだが・・・

2007年03月28日 | 株式

ウオール・ストリート・ジャーナルによると日本株のリターンを高めるためアクティビストの活動がかってなく活発になっている。アクティビストは多額の現預金を保有している会社に増配と自社株買入を要求している。

  • 日本企業に対する警醒は2003年12月にスチールパートナーズが、キャッシュリッチな小さな二つの会社の会社に敵対的買収をかけた時に起こった。この時ターゲットとなった会社は配当を15倍に引き上げたので株価が急上昇して買収は成立しなかった。
  • 現在スチールパートナーズは日本3位のボールメーカー・サッポロホールディングスをターゲットにしている。
  • ニューヨークをベースにするAtkantic Investment Management(AIM)は2004年11月に大日本印刷の株を買い、現在3.2%のシェアを持っている。昨年12月にAIMのローパー社長は大日本印刷の北島社長に提案書を送った。それは5千万株の自社株を早急に買入すること。北海道コカ・コーラ・ボトリングのような非中核事業を売却して自社株購入を促進すること。25%増配すること。アナリスト・ミーティングにおいて社長が「見える」様にすること。企業統治の改善等である。
  • ローパー社長は「我々は目立たない様にしているが、株主の利益になると感じる議題についてはプッシュしていきたい」と言う。今週火曜日に大日本印刷は2千5百万株(発行総額の3.42%)の株式購入を発表した。

株価をチェックすると大日本印刷の株価は自社株買いや増配を好感され4日連続で値上りしていた。もっともその前に同社の株は顧客情報流出で下げていたが。

もっともウオール・ストリート・ジャーナルも書いているとおり、総てがアクティビスト・ファンドが思うようになっている訳ではない。

しかし、アクティビスト・ファンドの投資銘柄を把握して、提灯を付けることができるとかなりのリターンを得ることができるかもしれない。株価は企業の将来価値というファンダメンタルズで動くだけでなく、目先の配当・株価政策にも左右される。

外国ファンドの動向には資金の流れと同様注意を払えということなのだろう。

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