長い間雛人形を飾ることがなくなったので、意識することも少なくなったがふと気が付くと間もなく雛祭りである。我が家には娘が二人いるが、ワイフが持ってきた雛人形を飾る程のスペースがないのでお雛様を出さない年が続いている。(子供が小さい時は狭い社宅でもお雛様を飾っていたのだが・・・・)昔「雛人形を節句が終わって長く出しておくと婚期が遅れる」という話を聞いたが、初めから出さないとどうなるのだろうか?やはり婚期が遅れるのだろうか・・・・・などと少し縁起を担ぎたくなるこのごろだ。
さて雛の句というと艶やかな句もあるのだろうが、年を経てくると去来の次の句が身にしみる様になる。
振舞(ふるまひ)や 下座(しもざ)に なをる去年(こぞ)の雛(ひな)
振舞は宴会である。宴会でロートルは若いものに席を譲る。で盛りを過ぎたものが控えにまわる哀感がある。
この句は向井 去来と野沢 凡兆が編集した芭蕉一門の句集・猿蓑(さるみの)に収録されている。猿蓑が編纂されたのが元禄4年(1691年)で、去来40歳の時だ。去来抄によると「感じるところがあってこの句を作った」ということだが、40歳で油が乗っている時の去来にも老いの哀惜を感じるようなことがあったのであろうか?