金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ハゲタカは華麗も見る

2007年03月07日 | テレビ番組

このところ土曜日と日曜日の午後9時からはテレビにハマッテいる。山登りなどで留守にする時は、ハードディスクに録画をセットする程だ。土曜日は大森 南朋(なお)主演の「ハゲタカ」、日曜日はキムタク、北大路欣也、山本 耕史の「華麗なる一族」だ。私は「ハゲタカ」を観る人は「華麗なる一族」も観る確率が高いと思うがどうだろうか?

さて「ハゲタカ」と「華麗なる一族」には若干の共通点がある。それは日本の都市銀行が大きく係る経済ドラマで企業倒産や合併が舞台装置になっている点。そして相も変らぬ銀行の身勝手さ~これは私が言っているのではなく、作者がそう描いているのである~。一方違いはまず書かれた年代。「華麗」は1970年から72年にかけて山崎豊子が週刊新潮に連載した。「ハゲタカ」は真山仁が2006年に書いた小説。そこには35年の歳月の開きがある。

この歳月は都市銀行が再編されていく歳月だった。またこの歳月は銀行が企業に対する支配力を失っていく時間の流れでもある。そして間接金融と大蔵省配下の護送船団から直接金融と競争入札の時代への流れである。

次に私にとってのリアリティという意味では「ハゲタカ」にはリアリティがあるが、「華麗」には余りリアリティを感じない。万俵家というのは神戸の岡崎財閥をモデルにしているそうだが私が実際に知っている銀行の社長・頭取の暮らしなどこれに比べると執事程度に地味なものである。

大物政治家の関与もやや大袈裟に感じるが昔はこんなものだったのだろうか?また万俵頭取の次男(俳優:山本耕史)が、一介の営業課長の分際で銀行経営上の最高機密に関与するというのも余りに非現実的だ。少なくとも上場している都市銀行とすればだ。

とはいうものの「ハゲタカ」と「華麗」どちらが面白い?などといわずこの際両方楽しむのが良いだろう。ただもし私が一本選ぶとするとリアリティの点から私はハゲタカを選ぶことになる。

コメント (2)
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外銀の風林火山

2007年03月07日 | 金融

私の最近のブログの中でアクセスが最も多かったのは「日興の上場廃止」である。私は日興の不祥事が公表された時、ウオール・ストリート・ジャーナルの記事を読んで「これは上場廃止になる。恐らくかなり高い確率でシティがビッドする」と判断して、風説の流布にならない程度にブログを書いた。

その時から思っていたが、ウオール・ストリート・ジャーナル・シティ・日興コーディアルの株を大量に買った外資ファンドの間には何か暗黙の了解があった様な気がしていた。いや彼等がつるんだり、情報を交換したりしていると考えるのは誤りだろう。彼等は大きな流れの中で個々の情報を解釈した結果「日興の上場廃止・シティのTOB」というシナリオに進む可能性が一番高いと判断したはずである。

では彼等はどのような情報からそのような判断を下していったのだろうか?これは私の推測に過ぎないけれど、シティは金融庁の意向を的確に読取っていた様だ。例えば日経新聞は「シティのピーターソン在日最高責任者は金融庁と太いパイプを持つ。・・・ある関係者は『焼酎を酌み交わすこともあった』と解説する」。焼酎を酌み交わすことが良いことなのかどうか知らないが、ピーターソン氏が金融庁の意向を汲み取っていたことは間違いない。

では金融庁やその背後の政治家の意向とは何なのだろうか?それは東京をニューヨークやロンドンに並ぶ金融センターにしようということだ。勘ぐれば「東京をそのような金融センターにしましょう」と誰が金融庁に将来像を示したのかもしれない。

7日のウオール・ストリート・ジャーナルは次の様に書く。

  • 東京市場はその規模にも係らず、グローバル・ビジネスへの開放性で他の主要な金融センターに後れを取る。米国では経済の8.1%、英国では8.3%を金融セクターが占めるが日本は6.5%に過ぎない。
  • 東京証券取引所に上場する外国企業は全体の1%だが、ニューヨークでは上場企業の14.2%、ロンドンでは19.6%が外国企業である。
  • 昨年のM&Aアドバイザリー業務は、ディールのボリュームベースでゴールドマン、UBS、日興シティの3社が上位を占め、野村證券は4位だった。

シティのピーターソン代表は「これは思いがけず生じた稀なチャンスだ」「(個人が)預金者から投資家に変わろうとしているのでリティル市場は拡大が見込める」と述べる。

シティは日本の消費者金融部門の8割を閉め415百万ドルの損失を計上した。このためシティが2006年に日本で得た利益は5年前の64%の391百万ドルにしかならなかった。しかし消費者金融部門からの速やかな縮小は評価されるべきだろう。特にオリエントコーポレーションを抱えるみずほが2千億円の資本支援に踏み切ることとの対比で見ると外銀の逃げ足の速さと攻めの鋭さが浮かび上がる。

これは歴史に例を求めれば、織田信長の金ヶ崎での形振り(なりふり)かまわぬ撤退とその後の姉川での浅井・朝倉に対するリベンジに似ている。

その疾(はや)きこと風の如く、その徐(しずか)なることは林の如く、侵掠することは火の如く、動かざることは山の如く、知り難きことは陰の如く、動くことは雷ていのごとし。

風林火山の旗を掲げたのは武田信玄だが、実践においては信長の方が上だったかもしれない。そして今見えざる風林火山の旗を靡かせながら、東京金融市場を駆け回っているのはシティなどの外銀である。

なお孫子はNHK大河ドラマ等で一般にも有名だが、その教えの真髄は情報の重要性である。孫子は用間編で「明君賢将の人に勝ち、成功すること衆に出ずる所以(ゆえん)のものは先に知ればなり」と諜報活動の重要性を説く。

情報(諜報)活動と機敏な動き・・・・2千5百年程前に中国で書かれた孫子の兵法は戦国時代に日本で活用され、そして今外銀に活用されている。今度ピーターソン氏に会ったら「あなたは孫子を読んでいるの?」と聞いてみようか?

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