金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ハゲタカ、田中泯の迫力

2007年03月26日 | テレビ番組

楽しみにしていたNHKのハゲタカが終わった。最後は大空電気のレンズ部門が「従業員を中心としたバイアウト」Employee Buyoutを実施するということで終わった。俳優としては主演の大森南朋も良かったが、レンズ部門のベテラン社員加藤を演じる田中泯の眼に力があった。舞踏家田中泯氏について私は知るところはほとんどない。知っていることは藤沢周平原作の「隠し剣鬼の爪」で剣術師範戸田寛斎を演じた田中泯氏の凄まじく気合の入った殺陣と身の軽さである。その迫力には驚嘆したものだ。ハゲタカの田中泯氏は地味な役だが、この人なら世界が欲しがるレンズ研磨のプロだろうという静かな迫力が出ていた。

さて景気の好転や少子高齢化の影響で日本の雇用状況が大分変わってきて従業員の重視に見直されてきた今、ハゲタカがEmployee Buyoutで終わったことは意味深いかもしれない。

日本の会社にはかって人を大切にするという美風があったが、バブル崩壊後の苛烈なリストラ時代にこの美風は薄れた。しかし企業の力というものは尽きるところ人なのである。コストカットのため人減らしを推進する管理者・経営者が「腕力あり」「能力あり」と思われた時代は異常な時代であった。彼等が切り捨てたものはコストとともに信頼と人材という長期的資産だったのである。

ハゲタカ、中々良いドラマだった。今度原作を読もう。

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北朝鮮が中国の鉄路をささえる

2007年03月26日 | 国際・政治

昨日(25日)NHKで北朝鮮・中国の国境貿易のドキュメンタリー番組を観た。印象に残ったことの一つが中国が北朝鮮から鉄道の枕木用の木材を大量に輸入していることだった。中国が鉄道路線の拡大を急いでいることは、ウオール・ストリート・ジャーナルの記事等で読んでいたが、テレビで舞台裏を見ると裏が取れる様で面白かった。鉄道建設の話を少し紹介しよう。ウオール・ストリート・ジャーナルのポイントは次のとおりだ。

  • 中国政府は調和の取れた社会主義国家を建設するため鉄道路線の拡大を急ぐ必要があると述べている。計画によると中国政府は2010年まに鉄道に対する投資を4倍に引き上げ2千億ドルにする。
  • 目的は内陸部や西部を沿岸部とつなぐことで、10,500マイルの新線建設を計画している。

CIAが公表しているデータによると、現在の中国の鉄道路線は74,408km、追加する路線は10,500マイルは約65百kmだから既存路線の9%近くなる。ところでこのCIAのデータというのはウエッブで誰でも見ることが出来き、各国の基礎データや概況を概観する上で非常に便利だ。https://www.cia.gov/cia/publications/factbook/

  • 多くの国では20%の貨物は鉄道がコンテナ便として運んでいるが中国ではコンテナの割合は2%に過ぎない。
  • 中国ではほとんど総ての輸出貨物はトラック便で港に到着する。しかしトラック便がコスト面で効率的なのは輸送距離が300マイル程度つまり一日圏だけである。
  • したがって輸出品工場を建設しようとする投資家は港湾への信頼できる輸送施設が不足している地方に工場建設することに尻込みする。
  • 香港大学の専門家は中国の輸出品の94%は海岸から150マイル以内で生産されていると計算している。この投資パターンが中国内部の経済的断層を深めている。
  • 中国が内陸部と沿岸部をつなぐ鉄道路線を拡大・整備することで二つの経済圏は接近する。この計画の最も目立つ部分はコンテナ配送の要となる18の拠点を建設することである。

ウオール・ストリート・ジャーナルは中国内陸部に輸出工場が出来ると安価な労働力を活用できるので中国の輸出競争力は一層向上すると結論付けいている。

ところで昨日のNHKドキュメンタリーを観て感じたことは、中国・北朝鮮の物品搬送にはトラックを使っているが、荷物の積み込みなどは殆ど人力作業だった。日本ならフォークリフトなどを使うところなのだが。中国の物流改革は大きな課題のはずだ。

もし中国の鉄道建設が進み、ウオール・ストリート・ジャーナルが述べる様な効果がでると中国内陸部から無尽蔵ともいえる安価な労働力が供給され、それは持続的に先進国、特に日本の賃金に下方圧力を加えるだろう。又いつか北朝鮮の一層安価な労働力も中国経由でグローバル経済にリンクされる日があるだろう。

この様な大きな流れの中、我々は持続する賃金と物価の低下圧力の中にいるということを理解するべきだろう。

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