金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

市場の光と影のはざまで

2007年03月05日 | 株式

日本株の下落が続いている。ザラ場で今年の最安値を更新している様だ。この世界同時株安の中で今3つの見方がある。

  • これは一時的な調整で数週間で反発する
  • 人々がリスクの高い投資対象を避け、より安全性の高い資産への投資に向かい始めた
  • 世界的なリセッションの予兆である

ところでアクティブな投資というものは、投資対象の「本来価値」と「市場価値」の差を取りに行く行為と考えて良い。完全に効率的な市場があり、総ての市場参加者が合理的に行動するとすれば、本来価値と市場価値はイコールになる。しかし現実には完全に効率的な市場は存在せず、市場参加者は往々にして非合理な行動を取るので、本来価値と市場価値の間にはズレが生じる。

本来価値と市場価値の関係はしばしば実像と影の関係に喩えられる。投資家の熱狂は影を実像以上に大きく見せてしまい、市場価値がその投資対象の本来価値を大きく越えてしまうことはよく起きることだ。例えばヒストリカルなPERの水準を大きく越えて株が買われるなど・・・である。

しかし一方で市場参加者は絶えず影の大きさが実像を上回っているのではないか?という恐れを抱いている。その恐れが臨界点を越えると先週のようなパニック的なセルオフが発生する。

おのが身の闇より吠えて夜半の秋 蕪村

秋の夜、黒犬がおのれの影におびえて吠えている・・・という俳句だが、明るい色彩の俳句が多い蕪村にしては、暗く不気味な俳句だと私は思っている。それにしても現在の投資家心理を表す様な俳句ではないか!

自分達の投資で実像を上回る影を作り、その影におびえて株価の下落を加速しているというのが、現状ではないだろうか?

ここで大切なことは「何が影で何が実像なのか?」を見極めることだろう。たとえば私は米国の景気の減速、これは実像だと思っている。連銀が連続して金利を引き上げてきたことの効果が効いてきたのである。円キャリートレード、これは影の部分だろう。高金利通貨の弱さを実像以下にしか見せていない。あるいは円の影が実像よりかなり小さ過ぎた。

以上のように見てくると私は先程上げたシナリオでは真ん中のシナリオが一番妥当だと考えている。株式投資について言えば、発展途上国銘柄や新興市場、小型株が敬遠され流動性の高い大型株へシフトが起きるということだ。

しかし影におびえる人が多い時は、本来の価値を割り込んでも金融資産が売られることは多い。これはOvershootという現象だが、今回も起きるだろう。またこの市場の混乱を利用して一儲けしようとするヘッジファンドなどが跋扈するから市場の振幅はより大きくなるだろう。

コメント
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