4月に入って一段と通勤電車が混んでいる。特に金曜日の夜、遅い時間の西武線に乗ったりすると大変だ。ギュウギュウ詰めになっている時は「次はもっと早く帰ろう」と思うのだが、遊んでいるとつい「もう、半チャン」などといって結局超満員電車に乗ってしまう。人間とは懲りないものだと思う。
しかしインドのムンバイの事を思うとこれ位で文句を言ってはいけない。ムンバイのラッシュ状況についてウオール・ストリート・ジャーナルに特集が出ていたので、ポイントを紹介しよう。
- インドの経済成長に鉄道システムが追いつかないため超混雑が続いている。この混み具合についてインド政府は新しい言葉を作り出した。それはSuper Dense Crush Load (超濃密押し込み乗客ということだが、英語の方がリアリティがある)という言葉だ。
- ムンバイの鉄道は一日にキロ当たり2万人の乗客を運ぶ。
このキロ当たり2万人という数字についてウオール・ストリート・ジャーナルは「人々を列車に詰め込む白い手袋をはめた押し屋で有名な東京はキロ当たり1.5万人でこれを上回る」と説明している。
手袋をはめた推し屋はGloved pusher、私が使っている西武線では学生班という腕章を巻いた青年がアルバイトで推し屋をやっている。詰め込み教育を受けて大学に進んだ後は今度は通勤・通学の人を詰め込む側に回っている訳だ。そして又暫くするとサラリーマンになり、今度は押される側に回る・・・・・。
因みにニューヨーク郊外ロングアイランドとマンハッタンを結ぶロングアイランド鉄道はキロ当たり420人だ。
- ムンバイ鉄道の事故による死者の数は凄い。昨年3,404人が死亡した。これは平日一日当たり13人が死亡していることになる。事故は鉄道線路を横切って列車に登ろうとすることによるものが多い。
ではムンバイの鉄道がどれ位混んでいるかというと定員200人乗りの車両に550人が乗っている状態だ。1㎡当たり16人!にわかに信じがたいがこれは電話ボックスに16人が詰め込むのと同じ密度ということだ。
ムンバイ鉄道の乗客は過去15年に3割増え、通勤距離も3割増えた。鉄道システムの改善については州政府・政府のいがみ合いなどから先行き悲観的な様だ。引き続きムンバイ鉄道は世界で最も危険な乗り物であるらしい。
インドの高度成長はこの過酷な通勤列車の上に乗っている。
日本の現状に戻ろう。直感的な判断だが、通勤電車の混雑具合が一時より激しくなってきた。景気が回復し雇用が増え、又少し懐具合が良くなったので遅くまで遊んでいる人が多くなったのだろうか?ラッシュが経済成長のバロメータだとしてもこれ以上の混雑はご免である。
通勤列車を見る限り我々は全く後進アジアの真ん中にいる。ニューヨーク郊外の通勤者の様にベンチシートにゆっくり座りコーヒーを飲みながら新聞を広げるということは望むすべもないが、せめて推し屋が活躍しなくても良い程度の鉄道システムは作りたいものである。個人、企業、国が力を合わせて取り組むべき課題だろう。