少し前にNHKのドラマ「ハゲタカ」が終わった。しかし現実の金融の世界では今ハゲタカつまりVulture fundsが、不良債権の匂いをかぎつけ舞い始めた。
エコノミスト誌は次の様に報じている。原題はThe Vultures take wing. Take wingはbegin to flyつまり飛び始めるということだ。
- 過去3年間は企業収益は良好で、リファイナンスは容易だった。このため不良債権の発生が少なく、伝統的な不良債権ファンドはしぶしぶリスクは高いがまだ生きている債権つまりジャンクボンドに投資を行なっていた。
- 今やサブプライム住宅ローンの崩壊で、不良債権ファンドに活路が開けてきた。投資銀行自体不良債券(あえて券を使った)グループを強化している。実際サブプライム住宅ローン問題で破綻し、銀行が救済を見送った企業に融資をつけたのは、不良債権ファンドである。
- かっては専門家向けの禁猟区であった不良債権はメインストリートの投資家を惹き付けている。アルトマン教授によると170の機関がもっぱら不良債権に投資を行なっている。「疲弊した債券」に賭ける戦略はヘッジファンドの好む戦略リストに入っている。
確かに好況期に不良債権は減っていた。しかし緩過ぎた信用供与のために、一度リセッションが始まるとデフォルトが予想できないレベルまで跳ね上がる懸念が出ているのだ。
- 次の不良債権の波は前2回と様相が異なるだろう。一つは商業銀行が処理プロセスを攻めるということはない。S&Pによるとヘッジファンドの様なノンバンクが金利の高いレバレッジローンの約半分を実行している。
- ヘッジファンドはクレジットカード並の高い金利を取るだけでなく、Loan-to-own戦略を取る。つまり融資先が破綻した場合、自ら所有者になってリストラクチャリングを推進するという戦略である。
- 2番抵当権の爆発的増加により、債権者の権利関係が複雑になっている。
今日本では米国のサブプライム住宅ローンの問題は他のセクションに波及しないという論調が取上げられているが、少し注意深く見ておく方が良いだろう。ユルユルの信用供与で息を継いできた企業は、一旦企業業績が悪化し、貸し手が信用リスクに敏感になり始めるとリファイナンスを受けることが困難になりデフォルトリスクが高まる。
今米国の企業与信の世界にもハゲタカが舞う時代が来る可能性はあるだろう。歴史は繰り返すのである。