今日(4月5日)の日経新聞朝刊大機小機は「銀行の証券会社化」というタイトルで「回転売買重視の営業姿勢に危険な兆候が出ている」と警告を発している。これは至極もっともな警告だが、私は少し違う観点からも銀行の手数料重視の姿勢に危険な兆候を見ている。
一つは「個人顧客が洗練Sophisticateされてくると、販売手数料や信託報酬を出来るだけ削減する」動きにでるだろうということだ。つまりノーロードの投信を購入したり、手数料の安いネット取引を利用したり、信託報酬が低い上場型投信を購入するという具合にだ。銀行はこのような近未来を想定して「付加価値のあるサービス」を提供しないと個人顧客から手数料を上げられなくなる可能性がある。
しかし顧客が洗練され金融知識が豊富になった場合、なお銀行に高い手数料を払って金融商品を買うだろうか?というパラドックスを感じない訳ではない。こうなると銀行の営業担当者は洗練された顧客を満足させるだけの「知識」や「もてなし」を身に付けないとならないのだが、それは可能だろうか?
もう一つは忠実義務の問題だ。つまり営業員が「顧客の利益を第一に考えるか」「会社の利益を第一に考えるか」ということだ。具体的にはパッシブ商品を求めに来た顧客に、販売収益が高いインデックスファンドを勧めるか、販売収益は低いが顧客に有利な上場型投信を勧めるかという問題である。
ところで「大機小機」は「営業担当者のローテーションを長期間に変更するべきだろう」という提案をしている。これは正しい提案なのだが、ネックは金融庁のガイドラインである。金融庁は銀行に不正防止の観点から5年程度を目処にあらゆる分野でローテーションを要求している。このようなことを監督官庁が求めている先進国は日本だけだろうと思う。もっともこれは担当者と顧客の間で多額の現金の受渡が行なわれるという日本固有の金融慣行から見て止むを得ない面があったのかもしれない。
しかし今金融業務は非常に専門性の高い分野に拡大しているので、ローテーションに関するガイドラインも見直すべき時期であろう。さもないと洗練された顧客を満足させる資産営業とまりプライベート・バンキングのような業務は不可能であろう。
正しいことについては君子は豹変して良いのである。