金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国の銀行株は割高か?

2007年04月24日 | 株式

今日(4月24日)の日経新聞にバークレイズがアムロを買収するという記事が出ていた。この話自体はかなり前から取り沙汰されており、目新しい話ではない。むしろ改めて認識したのは世界の銀行の時価総額ランキングに出ていた中国の銀行のランクの高さだ。中国工商銀行は時価総額21兆円でシティ、バンカメ、HSBについて世界4番目だ。6、7位には中国建設銀行と中国銀行が来る。三菱UFJは漸く10位に入る。中国の銀行がこれだけ大きいとなると、投資の観点からもっと検討する必要がある。

中国での銀行ビジネスは預貸金利差が大きいので魅力がありそうだ。ウオール・ストリート・ジャーナルはABMアムロ香港のアナリストの意見を紹介しているが、それによると「預金金利は1年固定で2.79%。一方貸出金利は1年で6.39%」である。これは日本などでは考えられないスプレッドだ。それ故に中国の銀行株は人気があるのだろう。ところがウオール・ストリート・ジャーナルによると、中国の銀行の株価特に上海で取引されている株価は高過ぎるだろうという。まず記事のポイントを見てみよう。

  • 中国の銀行株の強気相場は投資家に中国経済と金融システムの健全性の改革に対する楽観主義を反映している。
  • もっとも中国の銀行株に対し懸念を示す人もいる。パシフィック・サン・インベストメント・マネジメントの創業者マンテル氏は「2年という投資期間でみると中国株を空売りすることは誰にでもできるほど容易いことだ」「山ほど悪いニュースがあるが、それらは未だ株価に折りこまれていない」と言う。

つまりマンテル氏は悪いニュースがやがて銀行に収益を悪化させ株価が下落するので、空売りしておいて安くなったところで買い戻せば良いというのだ。悪いニュースの中には、中国政府が景気減速にため金利を引き上げ、貸出活動を抑制しようとしていることも入っている。

  • 先週中国建設銀行の副会長は政府の経済統制と外銀との競争が激しくなることで、貸出の伸びはある程度鈍化するかもしれないと述べている。

中国の銀行株は香港と上海で取引されている。香港市場ははるかに国際的で、国際的な比較を行なう業界アナリストの推奨に敏感である。前述のマンテル氏によると、香港で取引されている中国の国有銀行の株価は、アジアや世界の大手銀行と株価純資産倍率で比べた場合、3割から5割方割高ということだ。

ところが上海では同じ銘柄がはるかに高い値段で取引されている。上海市場は大部分外国人には閉ざされていて中国の個人投資家が売買できる少ない銀行株にファンダメンタル分析よりも希少性に基づいて資金を注ぎ込んでいるという訳だ。

たとえば中国工商銀行の株は昨年10月に香港で上場されてから41%上昇しているが、同じ時に上場された上海では74%上昇している。

さて中国の銀行株は買いかどうかという点についてHSBCのストラテジスト・エバンズ氏は「金融引締めが銀行貸出に大きな影響を与えるとは思わないが、銀行株は良い値段まで買われているので、ニュートラルが良いだろう」と言う。

今私は中国の銀行株を保有していないが、少し前まで香港ベースの東亜銀行という中堅銀行の株を持っていて株価がターゲットゾーンに入ってきたので売却したところである。

中国やインドのような発展途上国の場合、銀行は分厚い預貸利鞘を持っていることが多く、旺盛な資金需要から業容拡大が見込まれるので有望な投資セクターだ。すっかり株価の面で見劣りしている日本の大手銀行の株を処分して、中国工商銀行やインドのICICI銀行に鞍替えする方が面白いかもしれない。たしかにハイリスク・ハイリターンに見えるが、世界戦略が見えない日本の銀行がローリスクとも言えないだろう。

コメント
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