金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国を目指す資産運用会社

2007年06月11日 | 金融

ビジネスのポイントは縮小する市場に見切りをつけて、拡大する市場にコミットすることである。これは釣に似ているのではないか?と思う。つまり食い気がない魚を小さな魚場で追いかけるより、大きな魚場で食い気のある魚を追いかける方が良いということだ。もっとも私は釣については多少の経験はあるものの、素人に近いのでこの喩えが正しいかどうか保証はできない。

さて金融の世界も同様であろう。涸れた市場で消耗戦を展開するよりも、ポテンシャルの高い世界に攻めて出る方が良い。資産運用の世界も同じだ。最近資産運用会社がアジア特に中国の市場で資産運用ビジネスに力を入れているという話がFTに出ていた。

一つは日興アセットマネジメントが中国の深セン市の中堅資産運用会社・Rongtong Fund Management(融通基金管理有限公司)への出資を40%に引き上げたという話だ。日興アセットは日本の中国のA株で運用する投資信託を10億ドル以上集めている。

日興アセットは今年3月にRongtongの株の20%を12.4百万米ドルで取得している。これはRongtongの評価を62百万米ドルと見たということだ。62百万ドルという評価は同社が管理する運用資産の3.3%に相当する。日興アセットのマッカーシーCEOはFTとのインタビューで「このディールは日興とRongtongの2年にわたる調査面のパートナーシップを正式なものにする」と述べていた。

アナリスト達の見解は外国勢が中国の資産運用会社のオペレーションに高いレベルで関与することで評判リスクを回避できると見ている。実際最近JPモルガン・チェースが中国の資産運用会社とのジョイントヴェンチャーで不法な取引をしたポートフォリオ・マネージャーを解雇した例がある。

もう一つの話題はモルガンスタンレーが中国、韓国、台湾で向こう2年間の間に投資信託業務を強化する計画を発表していることだ。従来同社は機関投資家向け運用業務や不動産、プライベート・エクイティ、ヘッジ・ファンドなどの分野に力を入れていたが、これからは現地のリテイルの資産運用業務に力を入れるという訳だ。

モルガンスタンレーは1兆2千億ドルのアジアの投資信託市場~これは全世界の6%のシェア~に注目している訳だ。モルガンスタンレーはHSBCでアジアの資産運用業務のヘッドをしていたPickerell氏をヘッドハントして部門長に据えている。

中国という巨大な魚場に早く竿を入れたところが獲物にありつけるということなのだろう。

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政府の年金修復費用のウソ

2007年06月11日 | うんちく・小ネタ

先程インターネット上で産経新聞の「政府が年金照合費用を70億円と試算した」という記事が流れた。記事の中で政府は記録を修正するために手書き台帳と突き合せる費用は含んでいないというので全体で幾ら位かかるか見当がつかないとも言っている。

政府がいう70億円の内訳はプログラム開発10億円、年金受給者に照合結果と加入記録を通知する費用が50億円、年金を受給していない若者世代への通知費用が10億円だ。

ところが肝心の保険料を支払った人の記録を修正する費用が全く計上されていない。この費用は一体幾ら位かかるのだろうか?

以下のような前提で試算してみよう。社会保険庁の人(または委託を受けた人)が一人1時間に2件不一致の記録を修正することが出来ると仮定しよう。そうすると8時間働いて一人が16件の修正を行うことができる。

5千万件を16件で割ると3,125千件となる。政府は1年間で問題を片付けるといっているので3,125千件を1年間の実稼働日数250日で割ると1万2千5百人という数字が出てくる。これは1万2千人の人が不正な記録の修正に朝から晩まで専念して取り掛かるということを意味する。もし社会保険庁にそれだけの人員がいるとすると日頃それらの人は一体何をしているのか?という別の大問題がおきるだろう。

それはそれとしてこの人達のコストをどう見積もるか?仮に1日2万円1ケ月50万円として合計625億円である。

私はこの見積もりを大変甘いものだと考えている。というのはそもそも簡単に突き合せが出来ないから放置されていたデータを修正するのに1時間に2件という前提の置き方が甘いだろう。いくら社会保険庁だって簡単に修復できることならもっと前にやっているはずである。

次に1万人以上の人をこの案件に専属で張り付けるという仮定が甘いだろう。一日2万円のコストというのも甘そうだ。

以上考えると政府が発表した70億円の10倍以上のコストがかかりそうだということは簡単に推測が付く。余りにもお粗末なウソといわざるを得ない。

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