ビジネスのポイントは縮小する市場に見切りをつけて、拡大する市場にコミットすることである。これは釣に似ているのではないか?と思う。つまり食い気がない魚を小さな魚場で追いかけるより、大きな魚場で食い気のある魚を追いかける方が良いということだ。もっとも私は釣については多少の経験はあるものの、素人に近いのでこの喩えが正しいかどうか保証はできない。
さて金融の世界も同様であろう。涸れた市場で消耗戦を展開するよりも、ポテンシャルの高い世界に攻めて出る方が良い。資産運用の世界も同じだ。最近資産運用会社がアジア特に中国の市場で資産運用ビジネスに力を入れているという話がFTに出ていた。
一つは日興アセットマネジメントが中国の深セン市の中堅資産運用会社・Rongtong Fund Management(融通基金管理有限公司)への出資を40%に引き上げたという話だ。日興アセットは日本の中国のA株で運用する投資信託を10億ドル以上集めている。
日興アセットは今年3月にRongtongの株の20%を12.4百万米ドルで取得している。これはRongtongの評価を62百万米ドルと見たということだ。62百万ドルという評価は同社が管理する運用資産の3.3%に相当する。日興アセットのマッカーシーCEOはFTとのインタビューで「このディールは日興とRongtongの2年にわたる調査面のパートナーシップを正式なものにする」と述べていた。
アナリスト達の見解は外国勢が中国の資産運用会社のオペレーションに高いレベルで関与することで評判リスクを回避できると見ている。実際最近JPモルガン・チェースが中国の資産運用会社とのジョイントヴェンチャーで不法な取引をしたポートフォリオ・マネージャーを解雇した例がある。
もう一つの話題はモルガンスタンレーが中国、韓国、台湾で向こう2年間の間に投資信託業務を強化する計画を発表していることだ。従来同社は機関投資家向け運用業務や不動産、プライベート・エクイティ、ヘッジ・ファンドなどの分野に力を入れていたが、これからは現地のリテイルの資産運用業務に力を入れるという訳だ。
モルガンスタンレーは1兆2千億ドルのアジアの投資信託市場~これは全世界の6%のシェア~に注目している訳だ。モルガンスタンレーはHSBCでアジアの資産運用業務のヘッドをしていたPickerell氏をヘッドハントして部門長に据えている。
中国という巨大な魚場に早く竿を入れたところが獲物にありつけるということなのだろう。