昨夜(14日)夜テレビを見ていたらニュースで安倍首相が参院厚生労働委員会で年金や保険・介護などを一元的に管理する社会保障番号制度の導入に向けた検討を入すぐ考えを表明したことを報じていた。統一的な社会保障番号制度の欠如が今回の年金記録スキャンダルの大きな発生要因になっていることは私のブログで指摘してきたところで、漸く安倍政権もまともな解決策を打ち出し始めたと感じる。
ところで海外メディアがこの年金問題をどう見ているかと思い、ファイナンシャルタイムズやエコノミスト誌を見ていたがあまり論評がなかった。目立ったところでは昨日エコノミスト誌が年金記録スキャンダルと参院選挙について論じていたが、論評に余り切れがない。
これは全くの直感なのだが、欧米のマスコミには日本の年金記録スキャンダルが次の理由から理解できないのではないか?と私は考えてる。そのため切れ味の良い論評が出来ないのだろう。では理解できない理由というのは何かというと主に次の3点である。
その1【社会保障番号がない】
社会保障番号あるいはもっとストレートに国民識別番号あるいは背番号、世界的にはNational Identification Numberというものは多くの先進国で導入されている。例えば米国ではNational Security Numberが大恐慌の後に導入され、納税・年金・健康保険や個人信用管理などに幅広く使われている。
この国民識別番号は欧米の主要国はもとよりアジアでも中国、香港、韓国、タイなどで導入されている。
ところが日本では「個人情報保護の観点から慎重論も根強く実現性は不透明だ」(日経新聞)などとマスコミが言っている。しかしマスコミは世界の趨勢を全く報じていないのである。日本人だけが個人情報保護にセンシティブな訳ではあるまい。国民全体をカバーする単一のユニークナンバーがないとコンピューターシステムを使って国のサービスを合理化できないことは自明の理である。
ということなのだが、欧米の一流マスコミでもどうして日本に今まで統一的な社会保障番号がないのか?どうしてそれを導入できないのか?ということが理解できないのではないか?と私は考えている。
その2【社会保険庁の実務の出鱈目さ】
勤勉で事務的な正確性にこだわる日本人が数千万件の未処理データを放置していたことが理解できない。官僚というものは恐らくどこの国でも非効率で時に無責任だが、その酷さの程度が欧米のマスコミの理解度を越えていたのではないだろうか?少なくともビジネスパートナーと理解してきた日本の実務官僚レベルの無責任さは呆れるというレベルを超えているかもしれない。日本のGDP統計等は不正確で評判が悪いのだが、下手をすると政府統計などの信頼を損ねかねない問題につながるかもしれない。
その3【漢字の複雑さが理解できない】
多少社会保険庁を擁護するならば、日本人の氏名には「複数の読み方ができもの」が多くそれが記録ミスにつながっている。また名前は男子・女子双方に使われるものがあるので、名前から男女の判断が出来ない場合がある。以上のようなことが今回の年金記録ミスの一要因になっていることを日本語を知らない欧米のマスコミは理解できない。
さてエコノミスト誌は今回の参院選挙で「与党が苦戦するけれども結局はなんとか過半数を占め安倍首相が続投する可能性が高そうだ」「とはいうものの年金記録スキャンダルの余波から自民党が総崩れする可能性も排除できない」という。エコノミスト誌らしかなぬ歯切れの悪さだ。こんなことなら誰でもいえる。
しかし現時点では年金問題にからんで今後何が出てくるか分からないからこのような判断になるのだろう。恐らく外人投資家も年金記録スキャンダルと参院選挙の行く末にまだ確たるビューを持っていないのだろう。日本株市場は足元こじっかりしていることがそれを示していると私は判断している。