先日久しぶりに某M&AブティックハウスのN君と麹町で飲んだ。お店はN君行き着けの居酒屋で大鉢に盛っている野菜の炊き合わせなどが美味しかったが、店の名前は知らない。激しい雨の中を駆け込んだので店の名前を見る余裕がなかったのだ。
さてN君は高校時代の同級生で破綻したY証券でM&Aをやっていた。M&Aをやっていたのは20年位前のことだからまさに日本におけるM&Aの草分けだ。Y証券破綻の後現在にブティックハウスに勤めているが、今やM&Aが活況なので忙しそうだ。昨夜はそのN君に最近のM&Aの話題など聞きながら一夜を過ごした。
【M&Aが成功しない会社とは】
N君によると「M&A仲介業者を社長に合わせない会社」だそうだ。社長は部下に「これからはM&Aをやる。良い買い物があればドンドン進めなさい」というようなことを言うが、実際に話を持ち込むとアレコレ細かいことは言うが意思決定をしない。それで部下は仲介業者を社長に合わせないそうだ。この様な会社はM&Aで成功しない。最近は仲介業者も忙しいので、このような会社には話を持っていかなくなるそうだ。要は社長の意思決定がしっかりしていないとだめということだ。
【日本でM&Aが進まない理由】
これは期せずしてN君と私の意見が一致したところだが「退任する社長・役員への退職金の支払いが少な過ぎる」ということ。米国では買収された側の社長や役員がとっとと出て行く。これは「十分な退職金が支払われる」ことと「経営陣の転職市場がある」ことが主因。後者についていうと企業経営が技術と考えれているということだ。「もう、ポストにしがみつかないで好きなことでもして暮らそう」と思う位退職金を払う様にすると日本でもM&Aは加速するだろう。
【ブティックハウスを目指す一流大学卒業生】
明るい話もある。最近はN君のブティックハウスに東大・京大など一流大学の学生が応募してくるということだ。寄らば大樹の陰ではない学生もいるということだ。これは明るい話。
ということで少し明るい話はあったが、全般的には日本の資本市場の夜明けはまだ遠い。
最近読んだエコノミスト誌の話から少し補足をしておこう。
【日本は規制の泥沼】
エコノミスト誌は日本はregulatory quagmireという。エコノミスト誌は良い雑誌なのだが、使う単語が難しい。Quagmireも意味が分からないので調べた。沼地、湿地、窮地ということだ。日本の金融庁は残りの全アジアを合わせたよりも多くの資料提供を求めると外人バンカーは言っている。
【国際的金融マンの不足】
日本にいる外人バンカーは金融面で日本人が島国根性になっていると不満を述べているそうだ。収益が苦しくなった邦銀は社員の海外派遣を抑制していた~撤退してしまった銀行もあるが~ので、英語が使える社員がいなくなっている。
これに関して身近な例でいうと、かって海外で働いていた社員達も高齢化して第一線を引いたり、もう少し若い層は転職したりして英語を使える社員がいなくなり、海外訴訟案件などが起きるとてんてこ舞いになっている。
【安すぎる貸出の重荷】
「安い貸出は資本市場に対する死者の圧迫である」とUBS証券のブランソン氏は言う。つまり商業銀行がリスクに比べて不当に安い貸出を行うので資本市場が発展しないということだ。又安い貸出が低採算企業の延命につながり、色々な業界で生産性が高まらないのである。
以上のことを思うと日本のキャピタルマーケットの夜明けは遠く、香港やシンガポールが追い越していく日の方が近いかもしれない。