金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日本株、バリュー投資の季節

2007年06月19日 | 株式

今日のファイナンシャルタイムズ(FT)は外人投資家の日本株買いが継続的に増えていることを記事にしている。このことは東京証券取引所等が既にリリースしていることで特段目新しい話ではない。念のためデータを書いておくと1990年には僅か4.7%だった外人投資家のシェアは2006年26%にそして今年3月には28%に増加している。この1年で個人投資家のシェアは1%下がり18.1%になっているので「個人の日本株売り・外人の日本株買い」という構図だ。

投資の観点から注目しておくべきことは外人投資家の日本株買いの短期的影響と長期的影響だろう。FTは外人投資家が日本株を買っている理由を3つあげている。

  • 日本の景気回復期待
  • アンダーパフォーム株の反騰
  • 経営陣に圧力をかけて増配させ、自己資本利益率(ROE)を改善させる

余談だが増配を求めるの原文はsqueezing out higher dividentsである。squeezeは野球のスクイズで有名だろうが、圧搾するという意味だ。果物を果汁を搾り出す時にも使う。外人投資家が日本企業に圧力をかけて配当を絞りだしている様子が浮かんで面白い。

FTによるとUBSの日本株ヘッドのハンター氏は「ヴァリュー投資家が日本株の購入を進めているのが注目点だ」といっている。このことから敷衍して短期的な予想を立てると「株価が企業の本源的価値を下回っている株」つまり割安株、英語でいうとヴァリュー株に妙味があると見ているプロの投資家が多いということだ。注目しておいて良いところだろう。

長期的に見ると西洋スタイルの資本主義が日本に定着していくと考えるべきである。つまりROAと株主価値を重視した経営である。このことを敷衍すれば次のことが見えてくる。

  • 利益率の低い会社が合併・倒産等で淘汰され、過当競争が緩和される。その結果材料費等コストの製品価格転嫁が進み、物価上昇につながる。
  • しかしこのことは弱小企業の倒産が増えることを意味する。弱小企業への融資に固執している金融機関は思わぬ痛手を被る可能性がある。
  • ROAの低い企業が淘汰されることで株式の配当利回りが欧米水準に近づいて行く。つまり配当目的で株式を長期保有する投資家が有利になってくる。

企業価値を高めることより、目先の買収防衛策に注力する様な経営者が淘汰される日は意外に近いかもしれない。しかしそのことでマイナスの影響を受ける人よりもプラスの影響を受ける人が多いと私は考えているが如何なものだろうか?

コメント (1)
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