金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

事務ミス、出会う時は重なるものです

2007年06月20日 | うんちく・小ネタ

今日は小さな事務ミスに二回出会った。一つはファイナンシャルタイムズの購読料。昨日送られてきたクレジットカードの利用明細を見ると二回引かれていた。明らかに間違いだから、朝FTにメールを書いた。簡単に済むと良いのだが・・・・

暫くすると携帯電話が鳴り、毎月投信の定額購入を始めたはずのセゾン投信から「引き落とし口座の入力を間違えて引き落としが出来ていませんので送金してくれますか?」とのこと。「そりゃ、良いけれど引き落とし日が違うと買付ける投信の時価が違うのじゃないの?」と私。「いえ、引き落とし日は違っても買付日はもともと今日になっているので大丈夫です」「そうですか」・・・・・

いずれも入力担当者が起こしうるミスである。この様なミスの内ちゃんと注意していても「人間である限り」起こすエラーをヒューマンエラーという。ヒューマンエラーについてメクジラを立てて騒ぐ様なことは紳士がするべきことではない。

ところで今問題の年金掛け金の記録不備問題もスタートは小さなミスや担当者のちょっとした勝手な判断による処理(たとえば名前の読み方を自分の判断で入力したなど)だったかもしれない。ところがミスをミスとして修正する様な規律やルールが社会保険庁に欠如していたのだ。

その結果ミスを放置している内にミスがミスにつながり今日の状態になってしまった。

業務を監督する立場からいうと、許しても良い事務ミスと許すことができない事務ミスがあるということだ。

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UBSのトップ、安易な融資に警告

2007年06月20日 | 金融

19日付のFTはスイスの大手銀行UBSのトップ・Wuffli氏が「投資銀行が行っている危険なローンが増加していて将来訴訟に発展し、評判を悪化させる可能性がある」と警告していると報じている。Wuffli氏はFTのインタビューに答えたものだが、彼の警告は投資家・銀行家・規制当局からの一連の警告の中で一番新しいものだ。

危険なローンの一つの典型は今年特に流行している"Cov-lite"というローンだ。CovはCovenantでLiteはライトビール(軽いビール)のライトで「軽い」ということ。つまり財務制限条項が緩いローンのことだ。

財務制限条項とは一定の財務的制限、例えばデッド・サービス・カバレッジ・レシオ(元利金返済前キャッシュフロー÷元利金返済額)を維持するというものだ。金銭消費貸借契約に財務制限条項が付くことが、かっては欧米のローンと日本のローンの最大の違いであり、欧米のローンの安全性を高めていた。ところが財務制限条項を緩めるということは、借り手により多くの債務を取り入れる自由を認めることになるので、ローンの安全性は低下する訳だ。

Cov-liteローンの明確な定義があるのかどうか知らないが(恐らくないが)、S&Pは「財務条項のトリガーについて入り口の制限のみで、ローン実行後の制限はない」財務制限条項がついているものをCov-liteローンと定義してはどうだと提案している。

またS&PによるとCov-liteローンの回収率は伝統的なローンより1割低いということだ。

世界的大手銀行が貸出基準を緩和し、安全性の低いローンを実行している背景は資金供給サイドではプライベート・エクイティとの競争があるからだ。また買収ファイナンス等で資金を取り入れる方も貸出基準の緩和を求めている。

ところで今となっては追憶話になるが、80年代の後半頃邦銀が米国でまだプレゼンスがあった頃、日本国内と同様不動産担保融資に力を入れた銀行があった。そしてその反面その銀行は「無担保融資であるコベナンツによる貸出」を危険なものと判断して企業与信に余り組まなかった。

結果は数年後に出た。不況がアメリカを襲い、ホテルなど担保に取った不動産からの収益は下がり元利金の遅延が多発した。しかしノンリコース・ローンであったため銀行は借り手の一般財産に請求することは出来ず、担保不動産を安い価格で処分せざるを得なかった。一方不況になってもコベナンツの縛りで一般企業融資は不動産融資ほどダメージは受けなかった。

どうしてこの様な間違いを犯したのだろうか?それについて私は「日本の銀行員はローマ史を勉強していないからだ」と考えている。ローマの歴史を勉強すると「担保付貸出」と「無担保貸出」に対する西洋人の考え方が分かる。担保付貸出は奴隷への貸出と言われた。つまり担保があれば奴隷でも金を借りることが出来、債務不履行になっても担保処分をされるだけでそれ以上の罰則はなかった。一方無担保貸出は貴族への貸出と言われた。債務の不履行は貴族社会での信用失墜につながったので、債務者は必死に履行を行ったのである。

このことを知っていたならば、財務制限条項付の無担保融資が不動産担保融資より安全であることが分かっただろうがどういうものだろうか?

尽きるところ金融力のベースは高度な教養Liberal Artsなのだが、現在の日本では余り重視されないものの一つである。日本の金融機関が世界に伍していけない理由の一つはここにあるのかもしれない。

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