先週は世界の株価の大暴落と円の急上昇という激しい動きがあった。円は金曜日に一時1米ドル111.62円まで上昇した。その後113円台後半まで下がったが、それでも一週間で4%以上上昇した。豪ドルやNZドルの下落はもっとひどく、対円で各々10.3%、11.5%下落している。
こうなると市場のセンチメントは一変するもので、円は対米ドルで110円を切るだろうという見方が優勢になる。恐らく105円ー110円のレンジを予想するという話を聞いていも違和感がないから不思議だ。それにしても本の2,3週間前まで「円のキャリートレードは続くだろうし、急速な円高は考えにくい」と多くのアナリストやエコノミストが言っていたのだから不思議なものである。
これは市場と一緒になって酔っ払ったアナリストが翌日二日酔いの頭で反省の弁を述べているように見えないでもない。
それはさておきこの市場の混乱を正常状態に戻す鍵になるのは米連銀の動きだ。連銀は金曜日に「ディスカウント・レート」を6.25%から5.75%に切り下げるとともに、銀行に対する有担保貸付期間を一日から30日に延長した。最近連銀の「ディスカウント・ウインドウ」と呼ばれる貸付を利用する銀行はほとんどなかった。それはディスカウント・ウインドウを利用すると資金不足という印象を連銀に与えるという懸念があったからだ。
しかし今連銀は機能不全に陥っているABCP(資産担保コマーシャルペーパー)市場を再開させようとして積極的に銀行が持つ担保を活用して流動性の供給に踏み切るシグナルを出した。更には必要とあれば公定歩合の引き下げも視野に入ってきた。
連銀が緩和政策をとり、恐らくその一方で資産の査定について厳格化を始めることで世界の金融市場は正常化に向かうと私は考える。これが正しいとすると異常だった円安にはしばらく戻らないというシナリオを取るべきであろう。