世界的な株安傾向が暫く続きそうな気配になってきた。最大の原因はサブプライムローンを中心とするクレジットへの懸念だ。昨日(7月31日)は米国でアメリカン・ホーム・モーゲージ・インベストメント社が資産売却をするというニュースでS&P500が1.3%下落するという下げ相場になった。同社のローンはクレジット・クオリティがサブプライムよりは高いと言われていたのでショックが大きかった様だ。
サブプライムではないが、オーストラリアの投資銀行マッコーリーが組成しているハイ・イールドファンドで投資家が25%程損失を出したというニュースで同社の株価が7%下落した。
今日日本ではメガバンクの株が軒並み大幅に下落している。昨日発表された4-6月の業績に対する失望売りということだ。ところで銀行の業績発表で気になるところは日経新聞とFTの記事がかなり異なっている点だ。銀行の業績報告については決算短信なども見るが分かりにくいところがあるので、アナリストレポートや新聞の記事を参考にすることが多い。
三菱UFJに関して日経新聞を見ると連結利益にはほとんどコメントがなく「業務純益はシステム統合や法令順守態勢の強化で人件費が膨らみ前年同期比5%の減益」とそっけない。
だがFTを見ると「三菱UFJは中小企業のビジネス環境悪化からローンの格付を引き下げたため、引当金の積み増しが増えた」とある。三菱UFJのHPによると与信関連費用は前年同期比723億円増えている。これは連結純利益が前年同期比682億円減っているので、ほぼ減益は与信関連費用の増加によるといえる。なお三菱UFJの連結には消費者金融ニコスの法定金利超過分の返済引当金の積増があるはずだから、どこまでが中小企業向けローンの資産内容悪化によるものか今直ぐ見極める材料はない。
ただしこのような記事が世界的なレベルでクレジット問題を抱える銀行セクターに対する投資家の懐疑心を高めた可能性は高い。
メガバンクの融資先の中小企業にどの程度の信用リスクが発生しているかは不明だが、少し前から与信を増やすため、相当がんばって中小企業開拓を行ってきた。ところがサラ金の上限金利引下げなどの影響で個人事業主の破産が増える等中小企業に信用リスクが高まってきた。パチンコ等で倒産が目立ち始めたのも悪材料だろう。
日本のメガバンクのサブプライムに対するエクスポージャーは大きくないのでその影響は軽微だが、信用リスクに対する投資家の見方が厳しくなったということは邦銀の株価にも重しになるだろう。