金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

暫く続きそうな株安と重しの銀行株

2007年08月01日 | 株式

世界的な株安傾向が暫く続きそうな気配になってきた。最大の原因はサブプライムローンを中心とするクレジットへの懸念だ。昨日(7月31日)は米国でアメリカン・ホーム・モーゲージ・インベストメント社が資産売却をするというニュースでS&P500が1.3%下落するという下げ相場になった。同社のローンはクレジット・クオリティがサブプライムよりは高いと言われていたのでショックが大きかった様だ。

サブプライムではないが、オーストラリアの投資銀行マッコーリーが組成しているハイ・イールドファンドで投資家が25%程損失を出したというニュースで同社の株価が7%下落した。

今日日本ではメガバンクの株が軒並み大幅に下落している。昨日発表された4-6月の業績に対する失望売りということだ。ところで銀行の業績発表で気になるところは日経新聞とFTの記事がかなり異なっている点だ。銀行の業績報告については決算短信なども見るが分かりにくいところがあるので、アナリストレポートや新聞の記事を参考にすることが多い。

三菱UFJに関して日経新聞を見ると連結利益にはほとんどコメントがなく「業務純益はシステム統合や法令順守態勢の強化で人件費が膨らみ前年同期比5%の減益」とそっけない。

だがFTを見ると「三菱UFJは中小企業のビジネス環境悪化からローンの格付を引き下げたため、引当金の積み増しが増えた」とある。三菱UFJのHPによると与信関連費用は前年同期比723億円増えている。これは連結純利益が前年同期比682億円減っているので、ほぼ減益は与信関連費用の増加によるといえる。なお三菱UFJの連結には消費者金融ニコスの法定金利超過分の返済引当金の積増があるはずだから、どこまでが中小企業向けローンの資産内容悪化によるものか今直ぐ見極める材料はない。

ただしこのような記事が世界的なレベルでクレジット問題を抱える銀行セクターに対する投資家の懐疑心を高めた可能性は高い。

メガバンクの融資先の中小企業にどの程度の信用リスクが発生しているかは不明だが、少し前から与信を増やすため、相当がんばって中小企業開拓を行ってきた。ところがサラ金の上限金利引下げなどの影響で個人事業主の破産が増える等中小企業に信用リスクが高まってきた。パチンコ等で倒産が目立ち始めたのも悪材料だろう。

日本のメガバンクのサブプライムに対するエクスポージャーは大きくないのでその影響は軽微だが、信用リスクに対する投資家の見方が厳しくなったということは邦銀の株価にも重しになるだろう。

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貴人に決断なし

2007年08月01日 | 政治

今日の夕刊によると「赤城農林大臣が更迭」された。読売新聞は「首相は赤城氏に、『あなたはまだ若いんだから、事務所を立て直し、一から出直してほしい』と言った」と報じていた。だが、この言葉こそ安倍首相に与える言葉ではないだろうか?自民党の大物の誰かがそろそろ同じことを安倍首相にいうべきではないだろうか?

安倍首相は指導者が最もやってはいけないことをやってしまった。それは「兵力の逐次投入」であり、またはマキャベリが「加害行為は一気にやってしまわなければならない。そうすることで被害者の苦痛は軽く済み、恨みをかうことも少ない」と述べているものだ。つまり果断な決断で一気に膿を出すということを怠った。

安倍首相は今赤城大臣を辞任させたことで次のような恨みや批判を買うはずだ。

まず今回の参院選で苦杯をなめた自民党議員は「どうせ赤城を辞めさせるなら、選挙前に辞めさせろよ。そうすりゃ俺達落選しなかったかもしれない」と思うに違いない。次の赤城大臣にしてもここまで傷付き(実際絆創膏だらけになったこともあったが)、ぼろぼろになってしまうと安倍首相が一時かばってくれたことを感謝するだろうか?私はむしろ恨むのではないかと思うだどうだろうか?

自民党員やそのシンパでも首相のリーダーシップの弱さにはいやになっただろう。

海外メディアを見ると安倍首相のことをBlue Bloodだから国民の気持ちが理解できず、人気がないという記述が目立つようになってきた。Blue Bloodの直訳は「青い血」だが、熟語としては「高貴な血」という意味である。どうでも良いことだが、これはスペイン語のsangre azulの訳で高貴な人は肌が白く静脈が青く浮いて見えたことに由来するという。

とにかく岸信介を母方の祖父に持つ安倍首相が大変な血統の政治家であることは間違いない。そして人柄も悪くはなさそうだ。しかし国民の気持ちが分からないと言われるようになっては辛い。政治家にとって「分かっているか分かっていないか」よりも「分かっていると思われるか思われないか」の方が大切だからだ。

こうなると人々は「貴人情なし」という言葉を連想してますます人気がなくなるだろう。

私はこの言葉からふっと「貴人に決断なし」という言葉を思いついた。私が勝手に思いついた言葉であり、定着するかどうか不明である。

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円金利を読む

2007年08月01日 | 金融

昔仕事で専門的に円金利を読んで金を稼いでいたことがあった。今も金利に関係する仕事をしているので、円金利に関心はあるが刻一刻の金利の読みで銭を稼いでいる訳ではないのでノンビリしたものである。いわば素人以上プロ未満の感覚だ。

しかしサブプライムを始めリスキーなローンに対する敬遠感が高まりクレジットスプレッドが上昇したり、参院選で自民党が負けたりして金利の読みに色々な要素が絡まってくると金利の読みに興味が募る。

これはゴールドマンのエコノミスト達の分析だが、民主党が参院で多数を占めたことから次の日銀総裁には武藤日銀副総裁の内部昇格の可能性が薄くなり、かって日銀政策委員を務めた植田和男東大教授のような学者が総裁になる可能性が高いという。

もっとも学者といっても竹中平蔵氏が当面日銀総裁になる目は全くなくなったと言えるだろう。

ところで名前が上がった植田氏だが、彼はゼロ金利解除に反対投票をしたことで知られている。日本を完全にデフレから脱却させるには金利引き上げは時期尚早という主張だったと記憶する。もしゴールドマンの分析があたり、植田氏が総裁になるとすると円金利の引き上げ時期は遅れる・・・ということなのだろう。

このように自民党の敗北は金利を読む上で、変数を増やしたということになる。これを面白いと考えるかどうかは別問題であるが。

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