金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

往復ビンタのヘッジファンド

2007年08月10日 | 金融

サブプライムで巨額な損失を出したファンドが欧米の金融界を震撼させている。昨日はパリバのファンドがその仲間入りしたというニュースがあった。巨額の損失を出したファンドで有名なところはベア・スターズの二つのファンドだが、ファイナンシャルタイムズ(FT)はこれについて殆ど誰も答えられない疑問が二つあるという。

どうして彼等はそれ程多くの資金をそんなに急速に失ったのか?」「どこに同じ様な問題が埋もれているか?

これらの疑問に満足のいく答が得られないため、市場のボラティリティが高まっている。デリバティブという複雑なものが、市場参加者の疑心暗鬼を増幅しているという訳だ。それはどういうことかというと、デリバティブや複雑な金融商品の金融商品に関わる含み損が、日々評価されていないということである。例えば多くの年金基金や保険会社はサブプライムにリンクしたデリバティブを保有しているが、損失を計上していないとFTは言う。

以下は可能性の話だが・・・と断りの上でFTはベアスターンズのファンドの損失について推論を行っている。

  • 5月15日にベアスターンズの2つのファンドは年初来時価が6.5%下落したと報告した。多くのサブプライムにリンクした証券は2月に半額になっていたので、ベアスターンズの保有証券の質は高かったという推定が出来る。一方可能性としてはベアスターンズのファンドは実際には2月に含み損を抱えていたが、その損失を表面化させたのが数ヶ月後だったということもありうる。
  • 6月7日に損失は19%に拡大した。この時点でサブプライム市場は反発し、バーナンキ連銀議長も危機は回避できたと示唆していた。市場が回復しているのにどうしてベアスターンズのファンドは損失が拡大するのか?という疑問が当惑を呼んだ。
  • そして7月18日、ベアスターンズは5月と6月の月末の運用成績を測定しようと一所懸命計算したが、どれだけの損失を出したか分からないと報じた。2週間もたたないうちにファンドは破産申請を行った。

ここでFTはベアスターンズのファンドは大部分の人々が考える様なやり方で財産を失ったのではないか?と推定する。つまりファンドが5月と6月に損失したとするならば、ファンドは質の高いCDO(プール化されたローン債権。Collateralised debt obligation)以外のポジションを持っていたに違いない。ある専門家はファンドは質の低いサブプライムローンの価格が下落すると儲かるポジションを取っていたという。ところが市場で起きたことは質の低いサブプライムローンの価格は反発し、質の高いローンの価格は下落した。

この推論が正しいとするとベアスターンズの2つのファンドは、ヘッジをかけたつもりがロング・ショート双方のポジションでやられたということになる。

今日の話は少し金融に詳しい人でないと分かりにくいだろうし、興味も涌かないものだろう。しかし多少なりと相場でポジションを取ったことがある人なら、ヘッジした積もりがヘッジが効かなかったり、元々のポジションとヘッジポジション双方で損失を出したりした経験をお持ちだろうと思う。

トレーダーの間には「完全なヘッジは日本庭園の垣根(英語ではヘッジという)だけだ」という諺?があるらしい。語源的にはHedgeは元々垣根という言葉で使われていたが、16世紀末頃「保険をかける」という様な使い方をされ、今では重要な金融用語になっている。しかしヘッジというものは時々機能しないからやっかいだ。僕等はこれを「往復ビンタ」と呼んでいた。

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財布取られて知る官民サービスレベル

2007年08月10日 | うんちく・小ネタ

この前財布を盗られた。状況はこうだった。夜10時頃お酒を飲んで山手線で神田から高田馬場を目指したが、途中で座った時かばんを網棚に置いたままにしていた。途中で寝てしまい山手線を一周して御徒町辺りでかばんがないことに気が付く。そこで高田馬場で下車して交番に届けた。この時「かばんは出てくるだろうが、財布は盗られたろう」と直感していたが、結局そのとうりだった。

翌日JR大崎駅から自宅に電話があり、ワイフから「かばんが大崎駅にある」という伝言を受けて昼に取りにいくと、財布以外は携帯電話から鍵にいたるまで総て残っていた。ところで負け惜しみではないが、財布を取られても妙に腹が立たなかったのは不思議である。

一つは「網棚にかばんを置いて寝た」のは自分の不注意だし、盗られて本当に困る程重要な書類などはなかったから不幸中の幸いである。ものは考えようでこの程度の小さな災難で、用心深くなり別の大きな災いを回避できるならもっけの幸いである。

次に財布に4万円入っていたがこれは損害保険でカバーされる。(因みに私の保険がカバーする現金盗難の上限は5万円)

ところで今回免許証の再発行などを含めて警察・銀行・カード会社・免許センターにお世話になったがそのサービスレベルを評価してみよう。

【最悪なレベルは銀行と警察】

一番サービスレベルが低いのが某信託銀行だった。なお公平の観点からいうと偶々今回は某信託のキャッシュカード(正確にはクレジットカード一体型のカード)しか財布になかったので、某信託が槍玉にあがるが実は邦銀は概ね同じレベルである。

どうサービスレベルが低いか?というと「カード再発行までベラボウに手間と時間がかかる」のである。電話で盗難・紛失届けを受けてから、預金者に郵便で書類を送り、それが返送されてから漸くカードの再発行手続きにはいるので、2週間位かかるだろう。そこには全く顧客の利便性が考慮されていない。かって私がアメリカで暮らしていた時、キャッシュカードを紛失したことがあったが、窓口で運転免許証を提示して手続きをするとその場で「暫定カード」が発行され、翌日には新しいカードが郵送されてきた。実に顧客利便性を中心とした事務処理である。日米の金融機関のサービスレベルの差はこれ程違っているが、それは銀行の顔が監督官庁を向いているか顧客を向いているかの違いが如実に出ているということにほかならない。

警察のサービスレベルも低い。まず調書の作成にやたらと時間がかかる。調書を書いている警察官が「オカチマチってどう書くんですか?」と聞いたり書き間違えしたりしているのだから大変である。しかも警察官が書き間違えた箇所にまでこちらが指印で訂正させられるのだから誠に不愉快極まりない。

【サービスが良いカード会社と免許センター】

一方サービスレベルが高いのはカード会社だ。こちらは銀行と違って電話で本人確認が済むと新しいカードの発行手続きに入り追加手続きなしに新しいカードを郵送してくれるという。もっとも米国に比べるとカード郵送にかかる日数が多く改善点はあるが、銀行に比べると桁外れて迅速で感じが良い。

運転免許証は「江東免許センター」で再発行を受けたが、パスポートを身分証明に持参すると3千円強の印紙代と1時間程度の時間で再発行してくれた。気持ちが良いのは「印鑑」を求めないことだった。私は今時誰でも簡単に入手できる三文判を求める官公庁や企業のセンスを軽蔑しているが、運転免許センターにはそのような愚劣さがなく気持ちが良い。

しかし敢えて一点文句をつけると再発行申請書に何故顔写真がいるのか?という点だ。細かいことだが、写真撮影に6百円取られた。再発行する免許証の写真は、免許センターのコンピュータが保持している免許の当初発行時の写真を使うのだからいらないはずだ。本人の確認は受け付けた係官がパスポート等で行えばよい。少なくとも「写真付きIDを持参するものは顔写真不要」という位にすると免許センターのサービスレベルに満点を上げるのだが。

コメント (2)
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