金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国でクレジットカード・デフォルト増加

2007年08月28日 | 金融

今「サブプライム問題が近未来に与える影響」(仮題)で雑誌に記事を書こうと構想を練っているところだ。一つの論点はサブプライム問題は「金融問題」と「実態経済上の問題」を含んでいて分けて考える必要があるということになるだろう。後者についていうと借金をして消費を謳歌し、その借金を住宅の値上がり益で帳消しにしてきた米国スタイルの歪みがサブプライム問題という形で噴火したのではないかというストーリーになる。

その傍証を探していたところ、ファイナンシャルタイムズ(FT)の中に米国でクレジットカードのデフォルトが増加しているという記事があった。この事実が語る真実は何か?ということはゆっくり解釈するとして記事のポイントをピックアップしてみた。

  • 昨年に比べて米国の消費者のクレジット・カード支払いにおけるデフォルトが顕著に増えている。このことは問題がサブプライムローンから他の消費者信用に広がっていることを示唆する。2007年前半クレジットカード会社は回収不能で4.58%の償却を強いられた。これは前年同期比約3割増だ。また支払い遅延も増加している。
  • ムーディーズのアナリストは、この傾向は米国の住宅市場の低下と不動産担保借入を安い新しいホームローンで借り替える人の数の減少と相関関係がある可能性が高いと言っている。
  • 「金利が上昇したことと不動産市場が軟化したことで、クレジットカードでの借入を不動産担保融資で借り替える魅力が減少した」とムーディーズは言う。しかしクレジットカードでデフォルトを起こした人がサブプライムローンでデフォルトを起こした人と同一かどうかははっきりしないとムーディーズは加える。というのはほとんど追加借入をする担保余力のないサブプライムローンの借手は「クレジットカードでデフォルトを起こす前にサブプライムローンのデフォルトを選択する」可能性があるからだ。
  • ムーディーズのエコノミストは「消費者信用の質は引き続き悪化するだろう。債務負担が増え、住宅価格は引き続き下落し、信用供与基準は引き締められる。労働需給はそこそこ緩く、ガソリンや他のエネルギー価格はするからだ」と言う。

以上が記事のポイントだ。サブプライムローンの問題が米国の個人のファイナンスプランを狂わせ、金利の高いクレジットカード債務が金利の安い不動産担保借入に振り変わらなくなるなると、カード債務のデフォルト率が増えるばかりでなく、個人消費支出が圧迫されることになる。これは米国のGDPを大きく減少させ、中国や日本の輸出にブレーキをかけることになる。

アメリカの消費者信用の動向は要注意だ。

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「源流」の話

2007年08月28日 | うんちく・小ネタ

先週末千曲川源流を歩いたときから、「川の源流」について興味が湧いてきた。日本には多くの河川があるがその源流はどこなのだろう。そもそも信濃川や利根川など大河の本流は誰が決めているのだろうといったことを少し調べてみた。

Chikumasuigen

写真は千曲川水源地の標識

一級河川の源流がどこか?ということについては国土交通省河川局がホームページhttp://www.mlit.go.jp/river/jiten/nihon_kawa/right.htmlで分かる。千曲川については次のような説明がある。

千曲川は、長野県川上村、埼玉県秩父市、山梨県山梨市の3県の境にある甲武信ヶ岳にその源を発し、佐久、上田の2つの盆地を経て長野市のある飯山盆地にて最大の支川犀川を合流します。(一部省略)新潟県境にいたり信濃川と名を変えます。

この千曲川・犀川の合流地点に有名な「川中島」がある。少し気になることは「どうして信濃川の本流は犀川ではなく、千曲川なのか?」ということだ。北アルプスの槍ヶ岳を水源とする梓川を上流に持つ犀川は流域面積や延長で千曲川を上回っている。

ウイキペディアは次の様に述べている。

本流と支流の判定は、微妙な場合があり、歴史的・社会的事情で小さく短い川が本流とされる場合もある。小さな川が多くなる上流部ではどれが本流か特に決まっていないことも多い。近代以降の日本では本流を一つに決めようとする動きが強いが、南アメリカではアマゾン川を代表例として本流・支流の区別に関心が薄い。

千曲川・犀川問題についてもこの観点から見ると千曲川流域の方が古来から発達していたので千曲川が信濃川の本流となったと考えてよいだろう。

ところで千曲川の源流は甲武信ヶ岳だが、この山は荒川(一級河川)の源流でもある。ざっと見たところ、二つの一級河川の源になっている山は甲武信ヶ岳のみである。また甲武信ヶ岳から南に流れる東沢は笛吹川の源流であり、笛吹川は駿河湾に注ぐ富士川(一級河川)の源流である。しかし河川局は富士川の本流は南アルプス鋸岳を源とする釜無川と定めている。もし笛吹川が富士川の本流と認定されていたなら、甲武信ヶ岳は三つの一級河川の源という大変な名誉を得るところだった。

しかしそんな名誉はなくとも、甲武信ヶ岳の東沢はまことに美しい渓谷である。下の写真は私が数年前この谷を遡行した時のものだ。

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写真は「両門の滝」で二つの沢が一つの釜を共有する珍しい滝だ。

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東沢の美しさは滝だけではなく、平滑な一枚岩が形作る「ナメ」の美しさにもある。写真は代表的なナメ「千丈のナメ」だ。サワサワと流れる清流を辿る時、登山者の心が洗われていく。

山登りには人それぞれの色々なスタイルな楽しみ方があって良い。百名山に挑戦するというのも一つの方法だろう。そんな中で「日本の名河川の源流を歩く」といった登山スタイルがあっても良いだろうと私は考えている。

もっとも簡単に登れない水源も多い。例えば利根川の源は上越の大水上山の頂上下の笹薮の中にあるが、ここに到達するには4,5日のキャンプを張りながら激流を泳ぎ、岩壁を攀じ登ることが必要であり、熟達の沢屋さんにのみ可能なことである。

一方千曲川源流にように誰でも簡単に到達できる大河川の源流も多いのだ。名河川の源流を歩くというのも、日本ならではの登山目標の設定方法だと私は考え始めている。

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