昨日(8月20日)中華航空機が那覇空港に着陸し駐機後、炎上するという事故があった。不幸中の幸いは人身事故がなかったことだ。事故原因はこれから解明されることになるが、気になることは中華航空というエアラインは過去から事故が多いということだ。事故の多さの原因として私はベテランのパイロットや整備員の不足やトレーニングの不足があるのではないか?と推測している。最近読んだエコノミスト誌によるとアジアではパイロット等のプロフェッショナルが恒常的に不足しているということだ。プロフェッショナルの不足は成長の大きな障害となるとともに、大きな事故の要因にもなりうる。エコノミスト誌のポイントは以下のとおりだ。
- アジアでは規制緩和とともに多くの新しい航空会社が設立され、需要を満たすべく航空会社は新しいサービスを提供している。しかし同時にひどくパイロットが不足している。ボーイング社の民間パイロット・トレーニング学校もAlteonトレーニングによると、インドでは現在3千人以下のパイロットしかいないが2025年までには1万2千人以上のパイロットが必要になる。中国では航空旅行の増加に追いつくだけでも年間2千2百人のパイロットが必要であり、これは2025年までに4万人のパイロットを必要とすることを意味する。
- しかし大手エアラインでも、年間数百人のパイロットを教育するので手一杯で、お互いにパイロットを取り合っている状態だ。フィリッピン航空は過去3年で75人のパイロットを外国のエアラインに奪われた。
- パイロットだけでなく「法律家」「会計士」「医師」などの不足も目立っている。中国には12万2千人の弁護士がいるが、これは米国のカリフォルニア州の弁護士の数より7万人少ない。多くのビジネスピープルはカリフォルニアは弁護士が多すぎるというが中国では全く弁護士のいない地方がある。
優秀な幹部社員の不足も大きな問題だ。エコノミスト誌はマッキンゼーの研究を紹介しているが、それによると向こう10年で中国では7万5千人の幹部社員が必要だが、現在のストックは3千人から5千人に過ぎない。
技術のある専門職の不足は「職員の頻繁な退職」と「賃金の上昇」という形で現れる。エコノミスト誌によるとTurnover rateつまり従業員に対する辞める人の割合はアジアのある地域では3割を超えるという。
アジアの急速な経済成長に人材供給が追いついていかない。そこで優秀な人材を企業が高い給料を払って取り合いをする。その結果専門職の給料と離職率が上昇しているというのがアジアの問題で、これが持続的な成長のボトルネックになるとともに、製品やサービスの質の低下につながっている。
多少高くてもJALかANAに乗りますか?とまでいうと偏見が過ぎるとお叱りを受けるかもしれないので、それは読者諸氏のご判断にお任せしましょう。