金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

LEAPまでは読めませんが・・・

2009年04月01日 | 社会・経済

先日失業率に関するブログを書いたところ、ある読者の方から「LEAP/E2020の予測はどうなんでしょうか?」というコメントを頂いた。LEAP/E2020とはフランスのシンクタンクで、リーマンブラザースの破綻に始まる金融危機を予想したことで有名になった。LEAPは年200ユーロで購読できるが、私は購読していないし当面購読する予定はない。

LEAPの当面の予想は「4月のG20で主要国はドルに替わる多通貨システムの創設を行うという選択と現在のドルシステムを維持するという選択があり、恐らく後者を選択する。これは危険な道でドルは今年の夏に崩壊する」という不気味なものだ。この予想は極端過ぎると私は思うが、LEAPの判断根拠まで詳しく読んではいないのでこれ以上のコメントは避ける。

現時点でLEAPを積極的に読もうと思わない(でもニュースレター位には目を通そうと思うが)理由は幾つかある。第一はじっくり読んでいる時間がないということ。次の問題は私は会社の損益予想等に携わっているので、経済予想は必要だが、少数異見(少なくとも当社程度の会社にとって)ではシナリオを作成できないという実用性の欠如である。例えば会議などでも「エコノミスト誌はこう述べている」というと一定の説得力はあるが、「LEAPがこう述べている」と言っても今のところ「それは何ですか?」で終わりそうだ。

ところでドルは崩壊するのだろうか?もしドルの価値が2,3割下落することをもって「崩壊」と呼ぶなら崩壊する可能性はある。時期は分からないが。何故ならこれから米国は金融機関や自動車会社の救済、景気対策で多額の借金をせざるを得ないからだ。多額の国債発行は通貨価値の下落につながる。

ではドルの価値は何に対して下落するのだろうか?他の通貨例えば「円」に較べて?あるいは金や石油のような実物資産に較べてだろうか?実物資産の価値が上がるとはインフレが起きるということだ。欧州の投資家が資産の一部を金投資にシフトしていることは、ドルのみならず通貨の価値の下落を予想しているからだ。

ドルに懸念を示すのは投資家だけではない。世界最大の外貨準備を抱える中国の人民銀行総裁・周小川氏もSDR(国際通貨基金の特別引き出し権)の拡大を主張し、ドル一極集中からのシフトを主張している。国債の安定消化に頭を痛める米国は中国の意見をある程度尊重する必要がある・・・・。

などなど考えてくると勉強のためその内200ユーロ払ってLEAPを読む・・・なんてことがあるかもしれませんね。

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それでも日本は輸出に頼る

2009年04月01日 | 社会・経済

今朝(4月1日)日銀短観が発表された。大企業製造業の景況感が▲58と過去最悪だった。因みにこれまで一番景況感が悪かったのは1975年の▲57。この1975年という年は私が会社に入った年である。この年まで企業は大量採用を行っていたが、この年から企業は数年間採用を大幅に絞った。就職環境は激変したのである。余談だが私の時代の就職が如何に簡単であったかを述べると私は正式の就職試験も受けずにある銀行に採用された。別にコネを使って裏口入社をした訳ではない。当時の就職試験は7月1日だったがその時私はヒマラヤ遠征に出かける予定があったので、会社に「このような理由で試験は受けられないが、入社したいので内定をして欲しい」と言ったところ、会社の人事部は太っ腹にもOKして呉れたのである。私が会社から貰った最大の恩典は恐らくこの内定であろう。不況の1年前はそれ程「売り手市場」だったのだ。

さて本題に入るとニューヨーク・タイムズは「日本企業は輸出に活路を見出す」という記事を載せていた。それによるとみずほ総研の山本康雄シニア・エコノミストは「日本の会社は国内市場に将来を見出せないので、国内投資を押さえ海外にビジネスチャンスを求める」と述べている。

2月の貿易統計によると日本の輸出は前年比半減した。麻生首相達政治家は内需拡大を呼びかけているが、内需主導による景気回復は困難だというのがエコノミスト達や企業経営者の見方だ。いや大方の国民の見方も同じだろう。

何故内需に期待できないかというと、人口減少と相対的に日本人が貧しくなっているからだ。貧しくなっているというと寒々とした感じがするが、事実だから仕方がない。かって日本は一人当たりGDPで世界の五指に入る国だったが、2007年度には世界で19番目になってしまった。

「失われた10年」という不況期に倹約癖が身に染み付いた上、一向に改善されない規制が消費を押さえ込んでいる。

トヨタは1998年以降海外での自動車販売を倍増させたが、この間に国内の販売は約1割減少している。車が国内で売れない理由は色々ある。例えば新車購入時の手間と無駄な手数料や高い車検代も大きな障害だ。米国で車を買われたことのある人なら特にその思いを強くするだろう。米国では車は基本的に店頭販売商品である。ディーラーに行って、その場で気に入った車を購入すると、そのまま運転して帰る。ナンバープレートは後日近くの陸運局の出張所(あちこちにある)のようなところに行って、自分で貰ってねじ回しで取り付けておしまい。誠に簡単である。

日本ではマスコミは官僚や政治家に遠慮してこの問題を取り上げないが、世界で一番高い自動車免許取得費用や車検代などは総て警察官などの「第二の職場」のために使われていると考えて良い。

さてニューヨーク・タイムズはキリンなど幾つかの日本企業の海外戦略に言及していたが、面白かったのはユニチャームの話だ。ユニチャームは日本で新生児が減っているので、オムツの技術をペット用の汚物処理シートに活用して販路を広げている。日本の飼い犬の数は1300万、飼い猫は1200万で合わせて2500万。これは15歳以下の子供の数(約1800万人)よりはるかに多い。

しかしユニチャームは日本だけを見ていたら長期的な低下は避けられないので、中国など東南アジアでのセールスネットワークを拡大している。中国では毎年18百万人の新生児が生まれるから、潜在的には巨大な市場だ。

それにしても日本のペット熱は少し異常ではないだろうか?ペットは消費をしても生産をすることはない。ペットを幾ら飼ったところで、国は豊かにならないが、子供を育てると国は豊かになる。将来的には。

ペットではなく子供を大事にする国を作ることが、回り道にようで、一番確実に内需を拡大する方法である。さもないと日本の輸出頼みは止まりそうもない。

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