金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

デトロイトの新しいライバル・中国

2009年04月02日 | うんちく・小ネタ

いきなり個人的な話になるが、今週末私のX-trailの3回目の車検を受ける。株価下落で車を買い替える意欲を失っている上、ハイブリッド車の値下げが続きそうなのでもうしばらく今の車にお世話になることにした。もっとも走行距離は5万キロにも満たないので何の問題もない。

ところで将来更にハイブリッド車や電気自動車の値下げが起きそうな記事がニューヨーク・タイムズに出ていた。それは中国が国家レベルでハイブリッド・電気自動車のリーダーになると宣言したことだ。同紙は「既にヨレヨレのビッグ3はまた新たな外敵の脅威を向かえるだろう」と報じている。

記事によると、昨年中国は2,100台のハイブリッド車(含む完全電気自動車)を生産したが、2011年末までに年産50万台体制を作ろうと望んでいる。自動車業界コンサルタントCSM Worldwideは、日本と韓国合わせて2011年末までに1.1百万台のハイブリッド車(含む完全電気自動車)を作ると予想している。因みに米国は267千台の生産予定だ。

中国政府はタクシーと地方政府の公用車をハイブリッド車にする場合、8,800ドルの補助金を出すといっているから相当大きなインセンティブだ。既にハイブリッド車を米国に輸出しているTianjin-Qingyuan Electric Vehicle Company 天津清遠電気自動車(英語の日本語訳だが)によると、今年発売する完全電気自動車は3万ドルの予定だから、この補助金はかなり大きい。

天津が電気自動車の生産拠点となった理由は、同地出身の温家宝首相とのコネクションがありそうだ。温氏は2年前から電気自動車の重要性を強調しているが、その時業界とコネクションができた。

またまた余談になるが、天津に行ったことがない私は天津というと天津丼を思い出す。しかしこれはかの地にはないそうだ。天津産の良質米・小站米(シャオチャンミー)に蟹玉をのせた丼を「天津芙蓉蟹肉飯」と呼んでいたが、その内間が抜けて「天津飯(または丼)」となったということ。ただし中国では蟹玉をご飯にのせるて食べることはないということだ。これはウイキペディアからの受け売り。

話を戻すと都市の交通渋滞が激しくあまりスピードを出せない中国では電気自動車は優位性があるとニューヨーク・タイムズは報じていた。もっとも電気自動車を導入しても大気汚染や温暖化ガスの改善は限られている。中国の火力(石炭)発電依存度は75%だから、電気自動車が増えると石炭の消費が増えるからだ。

将来私が中国製の電気自動車を買うことはまずないだろうが、東アジアで電気自動車が量産されるようになると、コストダウンは期待できそうだ。まあ、しばらく様子を見ておきましょう。

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米英連合VS仏独連合

2009年04月02日 | 国際・政治

G20のために世界のリーダーがロンドンに集まった。正式会議は今日からだが、前夜から色々な動きが始まっている。今日(4月2日)の東京株式市場(前場)を見ている限り、G20にある程度の成果を期待しているように見える。

だがここは株式市場を見ているよりも、生の国際交渉を見ている方が面白い。G20には幾つかテーマがあるが、もっとも対立点が明確なのは「財政出動による景気刺激策を主張する」米英連合(日本もこちらに入る)と「財政出動は不要で広義の金融機関に対する国際的な規制が必要だ主張する」仏独連合の主張だ。そして第三勢力として中国・ロシアなどがいる。

米英連合と仏独連合はこの第三勢力を自陣営に引き込もうと色々と工作を行っている。例えばオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領は初の首脳会談を開いて、新たな核軍縮交渉を開始することで合意した。オバマ政権になって外交路線が転換したいえばそれまでだが、国際世界で多数派工作をしなければならなくなった米国がロシアへの歩み寄りを急いでいるとも解釈できる。

財政出動に関する対立は大きいが、それぞれの国の社会保障政策の違いを考慮すると、妥協点が見出せない話ではないと私は考えている。フランスやドイツでは失業保険が充実しているので、不況期に米国のように社会保障支出を増加しなくてもよいという事情があるからだ。もっとも大きな問題は財政出動をする国の「景気対策予算」が海外に流出するという問題だ。これに固執すると保護主義が台頭し、世界の貿易は収縮し景気回復はますます遅くなる。

IMF専務理事のストラス・カーンは昨日ファイナンシャル・タイムズに「過去の122件の銀行危機の経験から、銀行の不良資産を処理しないと回復はありえない」と述べ、景気刺激や金融機関の規制強化よりもこれが喫緊の課題だという見解を示した。両陣営に牽制球を投げた形だが、フランス人でサルコジ大統領と親しいカーンの話は仏独陣営により有利に響く。

このように興味深いG20だが、一定の具体的成果をあげないと市場は失望してしまう。市場の信任を確保しながら、自国のメリットを最大限に主張するという難しいゲームが始まった。

それにしても日本は少し前まで「ライン型資本主義」と呼ばれ、ドイツの仲間と考えられていた(ミシェル・アルベールの「資本主義対資本主義」)が、いつの間にか米英陣営に入っていた。英米にしろ仏独にしろ、ある哲学のもとで国や社会のあり方について合意を形成してきたが、日本は哲学なしになし崩し的に陣営を変えたような気がする。毎度のことといえばそれまでだが。

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