金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米銀、自由と国有化のスペクトラム

2009年04月20日 | 金融

米銀のストレス・テスト結果発表が近づくにつれて、色々な観測が市場に流れている。昨日のファイナンシャルタイムズとニューヨーク・タイムズを見ると、米政府の大手行に対する対応について違った切り口から記事が出ていた。

FTの記事は「TARP(不良債権救済プログラム)資金の返済に条件をつける」という政府見解を紹介したもので、経済的な国益を判断した上で国は返済の可否を決めるというものだ。具体的には「金融システムが安定している」「リセッションを悪化させる可能性のあるような公的資金返済インセンティブを作らない」「景気回復をサポートする信用供与を行う資本を金融システムが十分に持っている」ことが条件となるとある政府官僚が話をしていた。

ニューヨーク・タイムズは「オバマ政権のアドバイザリー達は政府資金を追加投入することなく、銀行の資本不足を解決するため、劣後ローンを普通株に転換することもありうると決定した」と報じていた。劣後ローンを普通株に転換すると「損失をダイレクトに吸収」できるので、これ以上公的資金を投入する必要がなくなる。しかし納税者資金を毀損する可能性は高まる。また国が銀行の(場合によっては最大の)株主となることで、マクロ的な金融・経済政策と個別銀行の株主価値を最大化するという事業戦略の利益相反を抱えてしまうことになる。だからオバマ政権は国有化策を否定してきた。しかしTARP資金が枯渇してきているので、普通株転換策やむなしというのがNTの見解のようだ。

FTの記事とNTの記事を重ね合わせると、近い将来の米銀のスペクトラムが透けて見える。つまり条件付ではあるものの、TARP資金を返済した「強い銀行」と「政府劣後ローンを普通株に転換した弱い国有銀行」とその間の「劣後ローンを受けている銀行」が誕生する可能性だ。このような階層で構成される金融市場がうまく機能するのかどうか私には分からない。

ところで今日某銀行の営業担当役員と話をする機会があった。彼によると「5月頃一回株式相場が下げる局面があると、底入れ感が出て回復の兆しが見えるのですが」ということだ。また彼は面白い比喩を使っていた。「今の経済環境でV字型の回復を期待するのであれば、足下を掘り下げ、立ち居地を低くするしかありませんね」。つまり赤字を出し切って落ちるところまで落ちない限り、V字的な回復はないという話。

米銀ももう一度足下を掘る必要があるということだろうか?

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中国経済のリカバリー見通し

2009年04月20日 | 社会・経済

終末に山梨の御坂山塊・釈迦が岳を歩いた。木々の葉が茂る前の山稜には乾いた風が吹き渡り誠に気持ちが良かった。目を凝らすと裸木に若葉が出ている。若葉のことを英語でGreen shootと言う。Shootではまず「撃つ」という意味が浮かぶが、新芽という意味もある。Green shootは「芽吹き」という意味で転じて「景気回復の兆し」という意味で使われる。

さてエコノミスト誌にBamboo shoots of recoveryという記事があり、竹をかじるパンダの写真が出ていた。「竹(中国)の景気回復の兆し」という意味の少し洒落た見出しだ。

記事のポイントは次のとおりだ。「16日に発表された第一四半期GDP成長率6.1%は失望させるものだった。しかし詳細に見ていくと景気回復の兆しがある。例えば3月の工業生産は前年比8.3%とその前の2ヶ月平均(3.8%)を大幅に上回った」「小売売上高は前年比16%アップ、固定資本投資は30%アップと政府のインフラ投資刺激策が機能し始めた兆候が見える」

「伝統的な知見とは反対に中国の急激な景気悪化は米国への輸出崩壊で引き金を引かれたのではなく、その前の2007年に景気鈍化は始まっていた。景気鈍化は不動産市場と建設業の崩壊で引き起こされていた。これは経済のオーバーヒートを抑えようとする信用引き締めの結果である」

「UBSのアナリストは中国の運命にとって不動産市場は景気刺激策と同様に重要だと主張している。昨年急激な下落を見た住宅販売は今年に入って36%伸びている。」「もし建設業が回復し、インフラ投資が増え続けるなら輸出が低迷していても、中国経済は今年8%近い成長を遂げる可能性がある」

中国の銀行が先進国の銀行よりも健全なのも強みだ。1998年には4割もあった不良債権は現在では5%以下だとエコノミスト誌は報じている。それにしてもあの不良債権はどこに行ったのだろう。強い経済成長と銀行のIPOが不良債権の償却を可能にしたということだ。

中国にとって最大の課題は新しい成長エンジンを見つけることだ。輸出に依存することはできないし、景気刺激策に長期的に依存することもできない。強い消費需要が起きない限り、中国の経済成長は以前よりも相当低下するとエコノミスト誌は述べている。そのためには健康保険と社会的なセーフティ・ネットの整備が必要だがまだまだ時間がかかるというのが同誌の見解だ。

新聞によると個人投資家も中国株に戻り始めている。株式投資が新芽の中に青々と茂る夏の森を見るものとすれば、投資の良いタイミングかもしれない。それが財政発動の一時的効果なのかどうかを絶えず検証する必要はあるが。

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石和のとんがり、釈迦が岳

2009年04月20日 | 

4月19日(日曜日)某財閥系VIPの人達のお供で、石和温泉に近い釈迦が岳(1641m)に登りにいった。スーパーあずさ1号で8時20分過ぎに石和温泉に到着。予約していたジャンボタクシーで上芦川経由で「どんべえ(日向坂峠)」に向かう。峠には9時10分到着。タクシー代は9千円だ。9時18分登山開始。最初は緩やかな登りだ。

Shakagatake1

釈迦が岳は目の前だが、最後の登りは少しきつそうだ。

ロープを張ったところが2,3ヶ所あった。10時半頃頂上到着。富士山が大きい(写真の富士山は少し降った所で撮ったもの)。西を見ると北岳を盟主とする白根三山が美しい。

Fuji

釈迦が岳から檜峯(ひみね)神社に下る道は最初が急斜面だ。

Shakakudari

かなり降った林の中から釈迦が岳を振り返る。

Shakakudari2

今回初めて山に登った人達は「あんな急なところを越えてきたんだ」と感激。12時50分檜峯神社到着。

Jinjya

神社の横手には杉の巨木があり祭られている。

Sinnboku 

神社の前には薬王水という美味しい流水があり、地元の人がペットボトルで水汲みに来られていた。我々ものどを潤す。

Yakuousui

神社から予約していたタクシーで石和温泉へ。時間は30分程度、料金は5千円強だった。石和では今話題の「かんぽの宿」で汗を流してから、駅近くの小料理屋さんでお酒を頂く。神社のお水も美味しかったが、やはりお酒(七賢という地元のお酒を飲んだ)が美味しい下山のひと時だった。

駅手前から南を見ると今日登ってきた釈迦が岳の小さなピラミッドが薄暮の中に見えた。今後中央線で山梨を通る時、富士山の手前に小さな三角形を見つけて、この日のことを思い出すだろう。

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