金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

多様化する米国の葬儀

2009年04月21日 | 社会・経済

会社に勤めていると社員やOB・OGの訃報が回ってくる。何時の頃からか記憶はないが、この「訃報」の葬儀形式に「仏式」「神式」「キリスト教式」に加えて「無宗教」という項目が追加されていた。日本の葬儀形式が多様化・簡素化している証しだと私は感じている。

10数年前アメリカで暮らしていた頃、郊外をドライブして時、野辺送りや墓地を見ることがあった。アメリカ人が同じような野辺送りをして、同じようなお墓に入る(もっともアーリントン墓地のケネディのように立派なお墓もあるが)ことを見て、私は「アメリカ人は個性的な生き方をするが、死ねば同じような墓に入る。一方日本人は同質的な生き方をするが死ねばもう少し個性的なお墓に眠る」という妙な感慨を持ったことを覚えている。

しかし今日のニューヨーク・タイムズに出ていた葬儀に関する記事を見て、このような考え方を改める必要があると思った。記事は葬儀の多様化の一例としてバイク好きの人は「ハーレーダビッドソンに牽引された特別仕立ての霊柩車」に乗ると書き出す。

葬儀の簡素化の一つの傾向は「火葬」が増えていることだ。2000年には「火葬」の割合は26%だったが、今年は38%に増えると予想されている(1963年にバチカンは「火葬禁止令」を廃止している)。「火葬」が増えている理由は「埋葬」に較べてコストが半分という経済的メリットだ。米国の典型的な「埋葬」は遺体に防腐処理を行って丈夫な棺に入れて埋葬するというもの。これに対して防腐処理を施さない「自然埋葬」(昔に日本の土葬と同じか?)も復活しているという。

因みに「防腐処理埋葬」のコストは葬儀代込で8千ドルと記事に書いてあった。これは日本の葬儀費用が150万円から200万円と言われているので半分以下だ。コストを下げるために木製や金属製の効果な棺をレンタルするサービスもある。つまり「お別れ」用のいわば化粧棺(このような言葉があるかどうか知らないが)の短期的貸出。レンタル料は1千ドル程度ということ。

「棺のレンタルなんて嫌だ!」という人にはコストコ(大型小売店)で、924.99ドルから2,999.99ドルで棺が売られている。こちらの値段は映画「おくりびと」で山崎努が言っていたのと似通った価格帯だ。599ドルの「棺組立キッド」を作っている人もいると記事は紹介していた。

このような葬儀の簡素化や多様化が起きる原因について、ニューヨーク・タイムズは人口移動が拡大し、人々が故郷を離れる傾向が強くなり、死んだ時に見送る人が少なくなっているからだと分析している。日本の葬儀の多様化や簡素化の要因と同じと考えてよいだろう。

このニューヨーク・タイムズのタイトルは「葬儀:あなたが大きなお金を使う最後のチャンス」というものだった。これは日本の葬儀会社の広告でも見かける宣伝文句。高齢化が葬儀の多様化のドライバーとすれば、日本はこの分野でもトップランナーである。

アメリカの葬儀業界は不景気下でも今年1.2%程度の成長が見込まれる。日本の業界統計は持ち合わせないが、「平安レイサービス」などという上場会社もあるので投資対象として研究価値はあるかもしれない。

コメント
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