金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

シャープ、海外シフトを加速か?

2009年04月09日 | 社会・経済

昨日(4月8日)シャープは経営戦略説明会で液晶パネルの生産再編計画を発表した。このことは日経新聞朝刊に出ていた。またファイナンシャル・タイムズも報じていた。二つの新聞記事を見比べて面白いと思ったことは、片山社長の発表についてフォーカスしている点が違うことである。

日経新聞の見出しは「シャープ、(液晶パネルの)大型シフト加速」であり、FTの見出しは「シャープの動きは日本の輸出状況に疑問を抱かせる」というものだ。もっとも日経もサブタイトルで「コスト減へ海外生産も」と述べている。

FTは片山社長の「最も先進的な技術分野ですら日本からの輸出は意味をなさないだろう」という言葉を引用して、シャープが円高に対応してコストカットだけでなく、海外シフトを表明した最初の大企業だと紹介している。FTによるとシャープは「現地消費のための現地生産」に多くの製品ラインで緩やかに海外シフトを行っていく。そのモデルになっているのは昨年11月に発表されたイタリアのエネルギー会社エネル(Enel)とのジョイントベンチャーだ。

FTは「もし他の輸出企業がシャープの動きに追随して、海外生産にシフトすると輸出依存型の日本経済に根本的な変化が起きる可能性がある」と述べている。

私は他の企業の動きについて十分な情報を持ち合わせていないが、そのような動きが起きる可能性があると考えている。その理由は中期的にみて、家電等デジタル製品に大きな需要が起きるのは中国・インド等発展途上国である。デジタル製品の場合、日本で売れるようなハイエンドの製品を作る生産ラインから、「引き算的」にローエンドの製品を作ることは容易でないと言われている。少なくとも大きなコスト削減効果はでない。ローエンド向けの製品は現地で生産する方がはるかに、コスト競争力があるということだ。

人口減少が進む日本で片手の指の数ほどもある総合家電メーカーが飯を食っていくことは容易でない。仮に今回の「追加経済対策」で省エネ家電への買換支援が予算化される等の思わぬ追い風が吹いたとしてもだ。

メーカーの海外シフトは金融業にも大きな影響を与える。注意を払っておきたいことの一つだ。

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ストレステスト、中間報告

2009年04月09日 | 金融

今日(4月9日)の午後(日本時間)、大手米銀19行に対するストレステストの中間報告が市場に伝えられ、「全行パス」というニュースに邦銀株に買いが入った。推測するにニュースの詳しい内容を分析する前に、ショート筋が買い戻しに入ったのだろう。

しばらくしてニューヨーク・タイムズに記事が出ていた。表題はBanks holding up in tests, but may still need aidというものだ。Hold upには色々な意味があるが、ここでは文脈から見て「手を上げる」ではなく「持ちこたえる」という意味だろう。「銀行は(ストレス)テストに耐えたが、恐らく更なる救済が必要だ」という見出しだ。

規制当局は19行総てストレス・テストをパスするだろうと述べている(テストは今月末終了の予定)。しかしこれはテストが「銀行が破綻しない」ということを示しただけで、試験官がある銀行は特別の支援が必要と判断した場合は、資本増強を求められる。

ストレス・テストはWhat-if予想という方法で行われた。What ifとはWhat would happen if~の省略形で「もし~が起きたらどうなるか?」という意味だ。新聞によると「来年までに失業率が10.3%に上昇する」「住宅価格が今年更に22%下落する」などというコンピュータが作成した仮定のシナリオの下で、資本に対する負荷がテストされた。また銀行は損失のバッファーとして向こう2年間の予想収益も求められた。

ニューヨーク・タイムズは投資家達がストレステストの中間予想に楽観的なことに対して、「ファンダメンタルに何の変化もない」というあるアナリストの言葉を引いて警鐘を鳴らしている。曰く、景気後退期には銀行はクレジット・カード債権、企業向けローン、不動産等で更なる損失を被る可能性が高い。

明日以降市場は少し落ち着いてストレス・テストの意味を分析するようになるだろう。

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脳卒中リハビリには太極拳

2009年04月09日 | 健康・病気

最近北朝鮮に関する英文記事を読んだ人は、strokeという単語を目にする機会があったかもしれない。Strokeには「一撃」とか「打法」という意味の他「脳卒中」という意味がある。つまり金正日の脳卒中に関するコメントを目にされたのではないか?ということだ。

さてその脳卒中についてだが、ニューヨーク・タイムズが香港理工大学の研究を紹介していた。それによると脳卒中後のバランス回復のリハビリに太極拳が有効だということだ。

研究によると半年または半年以上前に脳卒中を患った人136人を二つのグループに分け、一つのグループには通常のリハビリ、もう一つのグループには太極拳を改良した運動を行わせた。リハビリ期間は12週で通常のリハビリを行ったグループはほとんどバランス機能の改善が見られなかったが、太極拳を行ったグループには顕著な改善が見られた。

まったく別の記事だが、心臓麻痺を経験した患者について専門家の指導を受けた軽いエアロビクス運動を行った方が生活の質が改善し生存率が高まる可能性が高いという研究成果が報じられていた。

二つの記事に直接の関係はないが、脳卒中と心臓麻痺という中高年にとって非常に重大な病気のアフターケアについて「適切な運動」がクオリティ・オブ・ライフ(人間の尊厳を保った生き方)と生存率の向上に重要だということを示唆していたので取り上げた次第である。先進国の中で一番早く高齢化が進む日本こそこのクオリティ・オブ・ライフと適切な運動という問題をもっともっと取り上げるべきだろう。

ところで脳卒中を患ったとされる金正日だが、最近北朝鮮が発表した映像を見るとかなり回復しているように見える。どのようなリハビリを行ったのだろうか?太極拳を行ってリハビリが進んだのであればこの話がうまくまとまるのだが、残念ながらそこまでの情報を私は持ち合わせていない。

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