昨日(4月8日)シャープは経営戦略説明会で液晶パネルの生産再編計画を発表した。このことは日経新聞朝刊に出ていた。またファイナンシャル・タイムズも報じていた。二つの新聞記事を見比べて面白いと思ったことは、片山社長の発表についてフォーカスしている点が違うことである。
日経新聞の見出しは「シャープ、(液晶パネルの)大型シフト加速」であり、FTの見出しは「シャープの動きは日本の輸出状況に疑問を抱かせる」というものだ。もっとも日経もサブタイトルで「コスト減へ海外生産も」と述べている。
FTは片山社長の「最も先進的な技術分野ですら日本からの輸出は意味をなさないだろう」という言葉を引用して、シャープが円高に対応してコストカットだけでなく、海外シフトを表明した最初の大企業だと紹介している。FTによるとシャープは「現地消費のための現地生産」に多くの製品ラインで緩やかに海外シフトを行っていく。そのモデルになっているのは昨年11月に発表されたイタリアのエネルギー会社エネル(Enel)とのジョイントベンチャーだ。
FTは「もし他の輸出企業がシャープの動きに追随して、海外生産にシフトすると輸出依存型の日本経済に根本的な変化が起きる可能性がある」と述べている。
私は他の企業の動きについて十分な情報を持ち合わせていないが、そのような動きが起きる可能性があると考えている。その理由は中期的にみて、家電等デジタル製品に大きな需要が起きるのは中国・インド等発展途上国である。デジタル製品の場合、日本で売れるようなハイエンドの製品を作る生産ラインから、「引き算的」にローエンドの製品を作ることは容易でないと言われている。少なくとも大きなコスト削減効果はでない。ローエンド向けの製品は現地で生産する方がはるかに、コスト競争力があるということだ。
人口減少が進む日本で片手の指の数ほどもある総合家電メーカーが飯を食っていくことは容易でない。仮に今回の「追加経済対策」で省エネ家電への買換支援が予算化される等の思わぬ追い風が吹いたとしてもだ。
メーカーの海外シフトは金融業にも大きな影響を与える。注意を払っておきたいことの一つだ。