ニューヨーク・タイムズのコラムニスト・David Leonhardtという人が「住宅危機の終わりは恐らくまだ近くはない」For Housing Crisis, the end of Probably isn't Nearという記事を書いていた。
彼がこう判断した理由は不動産オークションにおける物件の動きの悪さだ。記事は「2006年、7年に公的な統計が住宅価格の上昇を示していたが、これは売り手が売り惜しみをした結果である。大部分が競売物件で構成されるオークションではこの時期既に住宅価格の下落は多くの地域で始まっていた」と書き出す。
このコラムニスト・レオンハードさんは1年前ワシントンに移住した時、最初の自宅を購入した。彼は「住宅価格はまだ下落するかもしれないが、自分が家を買うと決心するに足るほど既に下落しているし、賃貸住宅に入ってその後引越しするのも面倒だから自宅を購入した。しかしこれ程まで住宅価格が下落するとは予想していなかった」と認めている。
このコラムニスト、実際にワシントンで行われたオークションに行って状況を記事にしている。オークション・マネージャーは「今が底に近いよ」と力説するが、オークションが始まると売れるのは低価格物件ばかり。投資物件である集合住宅のコーナーはほとんど空っぽ。
また彼の同僚がマイアミのより大きなオークション会場で見たことはもっと悲惨な状態だ。ボカラトン(フロリダ半島随一の別荘地)のワンベッドルーム・マンションがたった3万ドルで落札された。これは売り手のファニーメイの最低落札価格以下だったが、関係者によるとどうやら落札される見込みだという。何故このようなことが起きるかというと、ファニーメイや多くの銀行はフォークロージャーした物件を山ほど抱えているからだ。
金融機関はオバマ政権が示した住宅救済プログラムにどの債務者が適格であるかを見極めるためしばらく競売を控えていたが、最近また競売を加速させ始めた。
これは「住宅価格の下落がフォークロジャーを加速させ、フォークロージャーの増加が住宅価格の下落を加速する」というマイナス循環である。ゴールドマンザックスのチーフ・エコノミストは「住宅の供給過剰から全国ベースで住宅価格は更に15%下落する可能性がある」と述べている。
全国ベースで見ると住宅価格が極めて高いという状態ではないが、ニューヨーク、ロス・アンジェルス、シカゴなど(つまり大都市圏)では、住宅価格はまだ非常に高いと記事は述べていた。
ところで「日にち薬」という言葉がある。これは関西で使われあまり東京では使われない言葉らしい。意味は「時間が経つと治る病気・怪我」と同時に「時間が経たないと治らない病気・怪我」という意味がある。私は一度肋骨を折ったことがあるが、これなど「日にち薬」でしか治らない症例だろう。骨がくっつくには時間がかかるのである。
アメリカの住宅危機、これも「日にち薬」でしか治らないのかもしれない。つまり価格が落ちるところまで落ちないと治癒しないということだろう。