金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

IMF、日本国債の突然の金利上昇リスクを警告

2011年11月24日 | 金融

昨日(11月23日)欧州そして米国の金融市場を揺さぶったニュースはドイツ国債の入札で応札額が募集額を35%下回る「札割れ」となったことだ。ドイツの国債入札では「札割れ」がおきることは時々あるがこれほど大きな札割れは珍しい。投資家がドイツ国債にもっとリスクプレミアムを求めていると解するべきだろう。

同じ日にIMFがG20の要請に基づいて作成していたJapan Sustainability Reportを発表した。http://www.imf.org/external/np/country/2011/mapjapanpdf.pdf

そのレポートの中でIMFが警告するのは、市場が日本の財政の持続可能性に懸念を抱いた時、金利が急上昇するリスクだ。

日本の国債の95%は国内で保有されているため、財政状況が悪化しているにもかかわらず金利は安定していることはIMFも認めている。しかし一度財政と国債に対する信任が揺らぎ、金利が上昇すると「金利負担が上昇し、財政政策の裁量範囲を狭め実体経済を収縮させる」という負のフィードバック・ループに直面する可能性があるとIMFは指摘する。

IMFが日本国債の金利上昇の懸念を指摘し、日本政府に財政健全化と経済成長政策を求めるのは、日本のことだけを懸念しているからではない。日本国債の金利上昇は国債を大量に保有する邦銀の損益とバランスシートを直撃し、邦銀が海外市場で資産圧縮に走ることを恐れているからである。

もし邦銀が資産圧縮に走るような事態が起きると、英国や韓国などにも大きな影響が出て、それこそ世界の信用市場がさらに収縮するからである。

ギリシャ、スペイン、イタリア、フランスと拡大してきた国債リスクはドイツをもうかがおうとしている。今なお金融市場で米国債についで安全資産と見られているドイツ国債をも、である。日本国債10年物がいつまでも1%以下で取引されていることは、欧米の投資家には奇異に見えるのだろう。

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秋、居酒屋で漢詩談義

2011年11月24日 | うんちく・小ネタ

勤労感謝の日の前日(火曜日)の夜、神田の「六文銭」という居酒屋で会社の山仲間二人と一献傾けた。通常飲んだ相手の実名は出さないのだが、今回は話の展開の上から、真田君と佐藤君という実名でご登場を頂くことにした。というのは「六文銭」で飲んだ理由が、飲み仲間の一人・真田君が信州真田家の末裔につながるということだったからだ。

さて酒が進むにつれてどういう訳か漢詩の話になり、真田君がおもむろに披露したのが、杜牧の「山行」である(因みに彼の携帯電話の中にはこの詩が入っていた)

遠上寒山石経斜 白雲生処有人家 停車座愛楓林晩 霜葉紅於二月花

秋、人気のない山に登ると石の道がづっと登っている。山の上の白雲が生じているところに人家が見える。車をとめてゆっくり紅葉したもみじ林の夕景色を楽しむ。霜で紅葉した葉は春の花よりなお赤い・・・・

雲の白と紅葉の赤の対比、石の道に散る紅葉の葉まで目に浮かぶフォトジェニックな風景である。

続いて僕がさわりを披露したのが、上杉謙信の「九月十三夜 陣中作」という詩だ。

霜満軍営秋気清 数行過雁月三更 越山併得能州景 遮莫家郷憶遠征

天正5年(1577年)能登の七尾城を攻め落とした時、将兵に酒を振舞いながら謙信が詠んだといわれる漢詩だ。

軍営に霜が満ちて秋の気配がすがすがしい。真夜中の月の上を数列の雁が飛んでいく。越後、越中の山に併せて能登の景色も得ることができた。故郷では家族達が遠征を案じていようがそれはどうでもよい・・・・という意味だ。

「遮莫」は「さもあらばあれ」と読み、意味は「それはどうでもよい」ということのようだ(僕は長い間「それはそれとして」と解釈したが間違いのようである)

戦国武将の中には漢詩を読む教養人が何人かいたが、有名な詩となると謙信の「陣中作」にとどめを指すだろう(もっともこの詩は頼山陽が作ったという説もある。謙信作の漢詩はこの詩しか残っていないので)

謙信の終生の好敵手だった武田信玄も漢詩を残している(覚えていないので省略)。しかし局地戦の上手さでは謙信や信玄を上回るのではないか?と思う真田幸村は詩を残していない。幸村の詩があると「六文銭」で飲んだ一夜が完結するのだが・・・・

詩は残していないが幸村は「関東軍 百万も候え 男は一人もなく候」という言葉を残している。大阪夏の陣で家康の本陣にあわやというところまで肉薄した幸村の生き方もまた一編の詩はあった。

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世界不況で中国の労働争議活発化

2011年11月24日 | ニュース

FTによると中国の主要な輸出拠点である深圳市や東莞市でストライキが活発化している。これは昨年夏ホンダの工場で起きた一連の山猫ストライキ(労働組合の指示ではなく一部の労働者が行なうストライキ)騒動以来の規模。

先週広東省は10月の輸出は前月に較べて9%下落したと発表した。欧州の債務危機や米国の景気回復の遅れが中国の輸出企業を直撃している。

企業側は残業削減でコストダウンを図っているが、これは残業代への依存度が高い工場労働者の家計を直撃している。香港に拠点を置く労働運動支援団体CLBによると「電子工業労働者の平均基本給は1,500人民元=236ドル(=1.8万円程度)で、1,000人民元(=1.2万円)の残業代を稼ぐことで家計が成り立っている」と説明している。

残業削減反対、工場の賃金が安い内陸部や外国への移転反対がストライキのスローガンだ。

これらの労働争議が中国の屋台骨を揺り動かすとは思わないが、中国政府の懸念材料であることは間違いない。

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