昨日(11月23日)欧州そして米国の金融市場を揺さぶったニュースはドイツ国債の入札で応札額が募集額を35%下回る「札割れ」となったことだ。ドイツの国債入札では「札割れ」がおきることは時々あるがこれほど大きな札割れは珍しい。投資家がドイツ国債にもっとリスクプレミアムを求めていると解するべきだろう。
同じ日にIMFがG20の要請に基づいて作成していたJapan Sustainability Reportを発表した。http://www.imf.org/external/np/country/2011/mapjapanpdf.pdf
そのレポートの中でIMFが警告するのは、市場が日本の財政の持続可能性に懸念を抱いた時、金利が急上昇するリスクだ。
日本の国債の95%は国内で保有されているため、財政状況が悪化しているにもかかわらず金利は安定していることはIMFも認めている。しかし一度財政と国債に対する信任が揺らぎ、金利が上昇すると「金利負担が上昇し、財政政策の裁量範囲を狭め実体経済を収縮させる」という負のフィードバック・ループに直面する可能性があるとIMFは指摘する。
IMFが日本国債の金利上昇の懸念を指摘し、日本政府に財政健全化と経済成長政策を求めるのは、日本のことだけを懸念しているからではない。日本国債の金利上昇は国債を大量に保有する邦銀の損益とバランスシートを直撃し、邦銀が海外市場で資産圧縮に走ることを恐れているからである。
もし邦銀が資産圧縮に走るような事態が起きると、英国や韓国などにも大きな影響が出て、それこそ世界の信用市場がさらに収縮するからである。
ギリシャ、スペイン、イタリア、フランスと拡大してきた国債リスクはドイツをもうかがおうとしている。今なお金融市場で米国債についで安全資産と見られているドイツ国債をも、である。日本国債10年物がいつまでも1%以下で取引されていることは、欧米の投資家には奇異に見えるのだろう。