金融そして時々山

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TPPとTPA~TPPの不透明部分

2011年11月16日 | 国際・政治

1年程前TPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋経済連携協定)が話題になりだした頃、国会議員の中でもTPPを間違えてPTAと言っていた・・・という笑い話があったが、このTPAはTPPの間違いではないし、その親戚でもない。ただしある意味では密接な関係がある。TPAはTrade Promotion Authority(米国大統領の貿易促進権限)の略である。

「大統領貿易促進権限」とは、議会が行政府に事前通告や交渉内容の限定等の条件を付けるかわりに、行政府が外国と結んだ通商合意について内容の修正を求めることなく、承認するか不承認とするかをのみ決することを決めた法律である。

詳しくは外務省の解説をご参照 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/eco_tusho/tpa.html

このTPAについて先月末頃自民党の小野寺議員が気になるつぶやきをしていた。主旨は「日本政府はTPA法が失効しているにもかかわらず、米議会の意向を確かめないで米国政府とTPAの交渉を行なおうとしている。これは委任状のない代理人と交渉するようなもの・・」ということだ。

どういうことかというと、TPA法の効力は2007年6月30日で失効していているので、大統領がファストトラックFast track(追越車線)権限とも呼ばれる強力な交渉権限を持つには再立法のような処置が必要と考えられる(クリントン政権の時、TPA権限は失効したが、ブッシュJrの時(2002年)に期限付きで復活した)。

TPA法の効力は07年6月30日に失効しているものの、それ以前に署名された通商合意については効力が及ぶ。米韓間のFTAは07年6月30日に署名されていたので、TPA法でカバーされ米議会では短期間(90日以内)の審議で可決された。

ところが今話題になっているTPPについてはオバマ大統領は簡単に議会から交渉権限を得られないだろうというのが専門家の見方だ。例えばエコノミスト誌は「TPPの夢と現実」という記事の中でThe TPP would need the Obama, administration to ask Congress to pass the bill under "fast-track" trade-negotiating authority, something very unlikely in an election year.と述べている。

またオバマ大統領の重要な支持団体である全米自動車労働組合はTPPに反対を表明している。国内に問題を抱えているのは米国も同じなのだ。

TPPについて米国のマスコミはほとんど取り上げていないが、その一つの理由は大統領選挙を控えてTPPがそう簡単に進むとは考えていないということがあるのかもしれない。

コメント
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