先週IMFはJapan Sustainability Reportを発表した。これは「大きな財政赤字と民間部門の貯蓄の不均衡を解決するにはどうすればよいか?」ということを論じたものである。これまでのところ、国内の民間貯蓄により国債は安定的に昇華されてきた。しかし公的債務は持続不可能なレベルに近づいているから「経済成長促進策と財政再建にとりかかるべきだ」というのがIMFの結論だ。この結論は目新しいものではない。そして総論としてこれに反対する人は少ないだろう。恐らくまともな政治家なら反対することはないだろう。しかし具体的な政策実施となると必ず反対がでる。
たとえばIMFは「サービス業における生産性向上が必要で、中小企業融資に対する政府保証を削減するべきだ」と提案する。この提案に対しては必ず反対が起きる。何故なら経済成長はともかく財政再建は票にならないからである。財政が悪化していても、国債金利が上昇していないので、一般には「目に見えない」。一方「政府保証の削減」等は該当者には重大な問題だし、その影響は周りの人にも「目に見える」。だから正しくても総論はしばしば誤った各論に負ける。
これは人間の健康問題に例えることができる。運動不足と食べ過ぎで、薬に依存しながらかろうじて健康を保っている人を想像してみよう。運動不足は成長力不足、食べ過ぎは膨らむ社会保障、薬依存は国債依存である。
この状態が続けばこの人は健康に長生きすることはできないことは誰でも分かる。だから運動とダイエットが必要なことは分かる。だがさて運動を始めようというと反対が起きる。例えば散歩が体に良いといっても「今は寒い時期だから暖かくなってからにしよう」という。近い将来確実に暖かくなるのであればそれでも良いかもしれない。だが気候が変わってしまってもう暖かい日が来なくなったとすればどうするのか?
消費税の引き上げに反対する人は「今は景気が悪い。景気が回復したら消費税を上げよう」という。確かに今の景気は余り良くない。だが欧米の経済状況を見ると、かなり先まで外需主導で景気が回復するとは考えにくい。つまり暖かい日は来ないと考えるべきなのである。
今は寒くても身繕いをして、運動を始める時なのである。それ以外に長期的な健康を回復する方法はない。
私は以上のような観点から早期に~すでにかなり遅いが~財政再建に取り組むべきだと考えている。
別のブログでIMFの提案の幾つかのポイントを見ていきたい。