金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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日本経済、悲観するほど悪くないんじゃないの?

2011年11月18日 | 社会・経済

エコノミスト誌が「日本の経済は悲観論者が考えるより良く機能している~少なくとも高齢者にとっては」Japan's economy works better than pessimists think -at least for the elderlyという記事を載せていた。

多少元気のでる話なので紹介しよう。日本経済が元気だというのは単に今月中頃発表された第3四半期経済成長率が年率換算6%に達したという局部的な理由ではない。日本の色あせたイメージは高齢化と人口減少の結果で、それを取り除いて考えるとそんなに悪くないとエコノミスト誌は述べる。

例えば2001年から10年にかけて日本のGDP成長率はアメリカの半分だった(グラフを読むとアメリカが年1.6%で日本は0.8%弱)が、一人当たりのGDP成長率で比較すると日本の方が少し高い(日本は0.7%強でアメリカは0.7%弱)。つまり両国のGDP成長率の差のある程度の部分は人口動態の違いで説明できるという訳だ。

また労働生産性の伸びは日本の方がやや低いが、全要素生産性について見ると日本の生産性の伸びの方が高い。

ところで労働生産性とは何かということを考えてみると、労働生産性は付加価値を就業者数(より正確に言うと労働時間)で割って算出される。付加価値は便宜的に「売上総利益」と考えてよいから、労働者の数を減らすと労働生産性は上昇することになる。アメリカでは不景気になるとレイオフをして労働者を減らすが、日本では企業内で吸収しようと考える。つまり一種のワークシェアリングが行なわれる。非常に大雑把にいうと労働生産性の高さと失業率の高さは日米では相関関係にあるといえるだろう。

話をエコノミスト誌の記事に戻すと、日本経済の不幸の元凶といわれている国の債務とデフレについても、人口動態を部分的に反映したものでかつ大袈裟に言われ過ぎていると同誌は述べる。

確かに日本はGDPに対する国債残高の比率ではOECD諸国の中でダントツに高いけれど、世界最大の対外債権国である。国債残高が増えたのは無駄な公共支出の結果ではなく、高齢化に伴い年金給付や健康保険の支払が増えたことが主要因だ。

税収が落ちていることは問題だが、日本の税収はGDPの17%とOECDの中で一番低い。つまり税率を引き上げる余地が大きいということだ。エコノミスト誌は伊藤隆俊東大教授の「消費税を欧州並みに20%引き上げると直ちに財政赤字を解消できる」という言葉を紹介している。

まあ、為替や債券などの市場参加者はこのような背景を頭に入れているので、財政赤字の大きさや国債発行残高の多さにびびることなく、円やJGBを買っているのだろう。

エコノミスト誌は「問題は悲観論が深く染み付いていることだ」と指摘する。例えばTPPを前向きに捉えて、経済の活性化を図るべきだというのが同誌の結論だ。

なる程多少は元気のでる話だが、長い間エコノミスト誌を初め欧米の経済誌から「失われた10年、20年」と言われ続けてきたので、日本の指導層が元気を失ったという面があることを思うと複雑な気持ちになる記事であった。

コメント (1)
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