金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ユーロは大丈夫なのか?

2011年11月29日 | 金融

市場は時として調査機関等の警告を軽視する。昨日(11月28日)ムーディーズはユーロ圏の複数国家がデフォルトし、ユーロ圏を離脱する可能性は無視できないと警告を発した。その数時間後にOECDは、ユーロ危機に対する欧州の政治家の動きは余りに遅い、ユーロは世界経済に対するキーポイントとなるリスクだと警告した。

また先週エコノミスト誌はIs this really the end?という記事で「ドイツと欧州中銀がもっと迅速に動かないと単一通貨の崩壊が迫っている」と警告した。

しかし昨日IMFがイタリアに金融支援を行なうのではないか?という観測記事がながれたこともあり、株式市場は米国の好調なクリスマス商戦の開幕を好感して大きく上昇した。

欧州では今日財務相の会合があり、救済ファンドの増額方法について合意点が模索され、ギリシャのデフォルトを防ぐため80億ユーロのローン契約がサインされることも期待されている。そうなると一息つくことができそうだが、来年1月の最終週にはイタリア国債300億ユーロのリファイナンスが待っている。債券市場がイタリアリスクに尻込みし、欧州中銀がイタリア国債の購入に動かない場合は世界第3位の国債発行国がデフォルトに陥る危険性が高まる。

エコノミスト誌は記事の中で「大部分の人は最終的には欧州の指導者達は単一通貨を守るために何でも行なうだろうと推測しているが、金融パニックと急速に悪化する経済見通しと馬鹿げているほど頑固な瀬戸際政策のため、ユーロが軟着陸する見込みが減少している」と警告する。

エコノミスト誌の主張~そして英米の政治家の主張だが~は、即座の解決策を提供できるのは欧州中銀だけなのだから、中銀は最後の貸し手として、無制限の流動性を供給し、国債を買うという量的緩和を実施するべきだと主張する。

いわば米連銀と同じように「バズーカ砲」を打て、というのだ。一方応戦するドイツは「欧州中銀は危機対応策を提供するバズーカ砲ではない」と主張する。ドイツが恐れるのはユーロという通貨同盟がドイツなど税制面で余力がある国が南欧諸国を救済する「財務移転同盟」に衣替えするリスクだ。

エコノミスト誌は「南欧諸国は(政権を交替させ)財政緊縮と改革をはっきり表明しているから、モラールハザードの懸念は後退している。もしドイツが態度を変えないとユーロは崩壊する」と警告する。

FTはポーランドのシコルスキー外相の「欧州でドイツだけがユーロ圏を救済できる国だからドイツはユーロを破滅から救うべきだ」という呼びかけを記事にしていた。

英米系のメディアを見ていることもあり、ドイツに対する警告は高まっている(ドイツのメディアも見たいがドイツ語は簡単に読めない)。ドイツが瀬戸際外交の落しどころを理解していると期待するのみである。

コメント (2)
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