混迷を続けるギリシャの債務問題。今朝(11月4日東京時間)の時点の最新ニュースは、国民投票を主張していたギリシャのパパンドレウ首相が軟化して、国際的に評判の悪い国民投票が回避される可能性が高まったことだ。国民投票については与党内からも実力者のベニゼロス金融相が反対するなど批判があった。だがまだ余談を許さないだろう。
国民投票というとギリシャは民主主義の発祥の国だ。そして同時に神話とイソップ寓話の故郷(小アジアのどこかと言われる)でもある。そこで現代の債務劇を寓話風に考えてみた。
・・・・昔山に貧しいギリシャ家が住んでいた。里では豊な畑や工場を持つドイツ家やフランス家などが豊かな暮らしを楽しんでいた。ギリシャ家は自分たちも豊かになりたいと思い、背伸びをして里の仲間に入れてもらった。ドイツ家やフランス家は気前よく、掛売で高価な衣服や農機具を売ってくれた。またお金が足りない時は気前よく貸してくれた。
・・・・時が流れギリシャ家の借金が誰の目にも返せないほど積み上がった時、ドイツ家やフランス家はギリシャ家の父親(パパ、パパンドレウ)を呼び、「これからは倹約生活を送りなさい。妻や娘達ももう贅沢をすることはできない。我々も借金を半分棒引きにするから一生懸命お金を返しなさい」と言い渡し、パパはその場では合意した。
・・・だがパパは突然「家族の同意がないと合意することはできない」と言い出し、ドイツ家やフランス家は大慌て。パパを呼びつけ叱ったところまた家族会議の同意がなくても約束は守ると言い出した。
ギリシャ家には「金持ちや企業に課税することは良いけれど、私達に課税するのは嫌」というわがままな娘と「私のお小遣いカットは嫌とすぐストライキをする公務員妻」がいる。
ギリシャ家の家族たちは、自分たちが慎ましやかな生活を送ることを強いられるのは嫌だが、仲間はずれにされるのも嫌だとわがままを言っている。
ギリシャ家には二つの選択肢しかない。すなわち「ドイツ家やフランス家が求める倹約を行い、借りたものを返す」か「わがままを言って仲間はずれになる道を選ぶ~ユーロを離脱してドラクマに戻る~」である。仲間はずれになっても、必要なものは里から買わないといけないので、その時は物々交換だ。そしてドイツ家やフランス家は借金を見逃してはくれないから、いつまでもいつまでも追い回されることになる。
さて寓話の作家はギリシャ家がどちらの道を選択したと結論するのだろうか?
それは来週のお楽しみである。
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古代ギリシャの民主主義は貴族と一部市民の民主主義であった。貴族とは無担保でお金を借りることができる人であった。古代の奴隷は我々が想像する以上に経済力があり、後には自分自身を買い取って自由になる人も出てきた位だ。
奴隷もお金を借りることができた。ただし質草を提供してだが。
今ギリシャに問われているのは民主主義とわがままの境界だ。義務は果たしたくないが権利は主張するという人は本当は民主主義の担い手になれないのである。そして無担保取引の対象にはならないのである。