金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

晩秋の芦ノ湖

2006年11月23日 | うんちく・小ネタ

先週末某国大使夫妻と箱根で一時を楽しむ機会があった。小田原から箱根への道は紅葉を求める観光客で大渋滞。1時間半位かかった。タクシーの運転士さんやホテルの人の話では今年は冷え込みが緩く紅葉は余り美しくないとのこと。それでも凄い人の出である。

箱根では野鳥が好きな大使夫妻のご希望に合わせて樹木園を散策した。写真は樹木園から芦ノ湖を見たところだ。写真でも紅葉は余りきれいに写らない。

Ashinoko

写真の右の茶色い樹はヒメシャラで夏椿の一種だ。樹の肌に触れるととても冷たい感じがする。箱根はこの樹の北限だそうである。多少秋らしい雰囲気があったのは下の写真の九頭龍弁天のお社付近だ。ただ赤く紅葉する樹がないので今年の箱根には照り栄えがない。

Kuzuryu さて大使ご夫妻期待の野鳥だが、夕暮れが近い故か数羽の山ガラと湖上のバン、ヒヨドリなどを見た程度だった。ちょっと面白かったのは湖畔の砂浜で奇妙な鳥の鳴き声を聞いて大使が「録音かな?」とおっしゃる。録音つまりテープで誰かが野鳥の声を流していると彼は思ったらしい。ところが案内の人によるとこれはガビチョウ(画眉鳥)という鳥で鳴き声を楽しむため中国から輸入して人に飼われていたものが籠から逃げて野生化したものということだ。双眼鏡で鳴き声のするところを見るとスズメより少し大きく目の周りに白い眉を画いたように見える鳥がいた。

日本で百種類以上の野鳥を見ている大使もガビチョウは始めてで「見ることが出来てとても良かった」とのこと。もっともガビチョウは野鳥ではないので野鳥観察の対象ではないだろうが、こういう言い方の中に大使の人格がにじみ出ている。

樹木園のところどころにアジサイの枯れた花が残っていた。案内の人がアジサイの花は中心の部分が枯れてしまうと花が総て裏返しになってしまうと教えてくれた。実際花を手にとって見るとなるほど裏返っている。何か奥ゆかしさを感じさせる話である。

Ajisai_2 というような次第で某国大使夫妻をご案内した箱根散策は余りぱっとした出し物がなかったが、ご夫妻はありふれた自然の中に色々小さな発見をして喜んでおられたようだ。文化の度合いとか教養の高さというものは地味で落ち着いたものの中に美しさを見つけ楽しむことができる能力の高さと言い換えても良いのかもしれない。大使は特段面白いジョークを飛ばす訳ではないが、巧まざるユーモアのセンスの持ち主である。私は外交官という職業について全く知見がないが、このような方達がクッションになり世界の国々の融和が図られるなら誠に好ましいことだなどと妙に高尚な感動を覚えながら、やや薄暗くなった樹木園を後にした。

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体を動かすのが一番のボケ防止

2006年11月20日 | 健康・病気

先日前の会社の友人2人と酒を飲んだ時少し酔っ払って出した結論が「頭ばっかり使って体を使わん奴が偉くなり過ぎる」というものだった。ゴマメの歯軋りかと思っていたら、先日ウオール・ストリート・ジャーナルに「脳の老化防止にはエアロビクス(有酸素運動)が良い」という記事が出ていた。ここで紹介されている研究内容が正しいとすると率先して体を動かしている人は精神的に豊かな老後を迎えることができるかもしれないし、頭ばっかり使って人に指図したり言い訳を考えている人はその逆になるかもしれない。「禍福はあざなえる縄の如し」(史記 南越伝)というと大袈裟すぎるかもしれないが。

さて記事のポイントは次のとおりだ。

  • 最近の研究によると脳の長期的でゆっくりした衰退は避けられないものではないかもしれないというとだ。1998年まで「年を取った脳は新しい神経を生まない」というドグマがあったがスウェーデンでの研究でこれは覆された。又最近の研究で週に3時間の有酸素運動が脳への血流を増加させ新しい神経細胞の誕生を促進する生化学的な引き金を引くということが分かってきた。
  • 中年になると脳の経年劣化により情報処理速度が遅くなる。また古い脳は一つの仕事から他の仕事に切り替えるのに時間を要するようになり、同時に複数の仕事をこなす能力も低下する。一般的常識では精神的な鋭さを保つためにはクロスワードパズル、読書、楽器の演奏といった精神的な活動が必要と考えられてきた。
  • しかし肉体的な活動が脳に与える利益について支持者が増えている。イリノイ大学のクラマー教授は以前に有酸素運動をした高齢者が数ヵ月後に認知機能を改善したことを示す幾つかの研究があるという。今同教授と同僚はこれらの改善の理由をを発見した。週3時間の有酸素運動は脳の灰色物質(神経)と白色物質(神経を結合する物質)を増加させると11月のメディカル・サイエンスに発表している。クラマー教授によると「3ヶ月の運動で脳の大きさは3歳若返った」ということだ。
  • 実験によると灰色物質は命令や記憶をつかさどる前頭葉で最も増加し、白色物質は左右の脳を連結する脳梁部分で最も増加した。
  • 動物実験によると運動によりIGF-1というインシュリンのような成長物質の血液内のレベルが高まった。通常IGF-1は血液と脳の障壁を越えないが、IGF-1は血流を増加させ更によいことに神経の幹細胞を実際の神経細胞に変化させる誘導を行なう。新しい記憶を形成する上で極めて重要な海馬は特にこのIGF-1の利益を受け易い。

現在私は週に2回程度ジムに行き合計3時間程度は有酸素運動を行なっているが、これが脳に良いということが分かったので是非続けようと思う。

ところで又私は月に1回位は朝から晩まで沢をよじ登ったり、雪をラッセルする激しい山登りをしている。これなら10歳位若返るのだろうか?それとも若返った結果このような若者の真似をする羽目に陥ったのだろうか?もっとも現在のところボランティアを使った実験では運動をすればする程脳が若返るという答は出ていないということだ。

Moderate exercise makes man helthという様な例文が中学か高校の英語の教科書に出ていたが、何事も程々ということだろう。下手な考えを休んで体を使えという教えは良いものである。

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シティバンクのGDB出資に拍手したい

2006年11月17日 | 金融

今朝(11月17日)コンサル会社に勤めている会社のOBから電話があり「日本進出を考えているドイツの銀行から聞かれたのだけれど、外銀が邦人スタッフを雇う相場はどれ位だろう?」と聞いてきた。最近私の友人が外銀に転職したので情報を持っているのではないか?と思ったとのこと。転職した友人とは極親しい仲でもペイの話はしていないので、余りお役に立てなかったが少し雑談をして電話を切った。その後「まだこれから日本に進出する外銀があるのだろうか?これから来てまだオイシイ商売があるのだろうか?」と疑問に思った。そして今銀行を出すなら中国だろうと思いながら、シティバンクが広東発展銀行(GDB:Guangdong Development Bank) に出資するディールを勝ち取った記事を読んだ。

ウオール・ストリート・ジャーナルとエコノミスト誌の記事のポイントをまとめると次のようなことだ。

  • 16日の夜、シティバンクとIBMを含むパートナーは、広東発展銀行(GDB)の株の85.6%を31億ドルで取得する合意に至った。この中国史上最大の企業買収は1年の交渉を要した。GDBは中国27州に500の支店を持っているのでシティは中国のリテイル市場に大きな足がかりを持つことになる。
  • GDBの資産内容は悪い。会計監査を受けている2003年の会計報告書によると不良債権は22%だが、チャイナ・デイリィによると2005年には不良債権は25%になっている。これは資産の一層の悪化を示唆している。現実的にはGDBは資産価値がないか負の価値しかないだろう。GDBのビッドで初期の段階で負けた買い手の弁護士は「これは銀行の買収ディールではない。中国のディールだ」と言う。シティバンクとそのパートナーは「資産ではなく機会」を買った訳だ。
  • このディールでは「買収後GDBの帳簿から予想外の不良資産が発見された場合売り手にリコースする(損害を請求する)」という規定が入っていない(これは新興国のディールでは通常入る)

これを読んで私はこの裏にある中国政府とシティとの交渉を色々想像した。中国政府は自国の銀行に対する外資の投資を合計25%以下、一株主最大20%以下に規制している。このディールでもシティは20%、IBMは4.7%の保有比率で、残りは中国側のパートナー中国国家電力公司などが持分を保有する。しかしシティがマジョリティを握りたいと考えていることは確実でこれらの契約条項の裏には色々な駆引きがあったのだろう。また今後シティが中国側パートナーの持分を買取ることがあるかもしれない。中国政府にとっては現在価値のない株を高く売りかつシティの力で傷付いた銀行の修復を行なうことができるのでプラスの多いディールを引出たと思うがどうだろうか?

5年前にWTOに加入した義務として中国政府はこの12月に外銀に対して市場開放する。12月11日には「外国銀行管理条例」が発表される予定だ。中国の銀行には2兆ドルの預金があるがこれを狙う外銀が外貨預金や色々な運用商品を売り込もうと今必死になっている。中国への進出方法は色々でバンクオブアメリカは30億ドル出して中国建設銀行に9%の出資を行なっている。

余談になるが、中国の外銀への門戸開放がプラスに働いたのか私が小金を投資している香港の東亜銀行の株価が好調だ。数ヶ月前に一株32,3ドルで購入していたが最近40ドルを越えてきた。これはABMアムロが東亜のターゲット株価を45ドルに引き上げたこともプラスに働いている様だ。これはうれしい話なのだが、この間にはるかに大きな投資を行なっている日本の銀行セクターは三菱UFJを筆頭に滅茶苦茶に下落しているのでポートフォリオ全体としては大変なマイナスになり意気消沈気味だ。私がもしもう少し大胆であれば邦銀株を叩き売り香港や中国の銀行に賭けて一儲けしたかもしれないのだが。

いや、すっかり余談になった。しかし邦銀大手の株価が下落している理由の一つには中国という世界最大のポテンシャルを持つ市場へ参入できる時期が来ているのに有効な戦略が立てられない邦銀の不甲斐なさに対する苛立ちがあると思われる。10年後20年後の世界の金融機関の収益を左右するのは中国とインドであることは間違いないが、邦銀はその入り口で決定的な遅れを取ってしまったのではないだろうか?

さてシティが問題の多いGDBを建て直し中国進出のプラットフォームとすることができるかお荷物を背負い込むことに終わるか?エコノミスト誌は「ロングマーチ(長征)の始り」と書き、ウオール・ストリート・ジャーナルは「米銀が中国で最も弱い銀行を立て直すという気概をテストするものだ」と書いた。シティと組んだIBMは最新の情報技術を持ってGDBの建て直しに手を貸す(無論儲けも得る)だろう。

私はシティのチャレンジに声援を送りたい。金融とは市場で株や債券を売買したりM&Aで会社を売ったり買ったりするだけのものではない。町々に支店を作り、ローンや運用商品を効率的に販売してきちんとリスクを管理していく実態のある仕事なのだ。シティバンクが中国の中にこのような金融の秩序と規律を作る仕事を担うとするとそれは極めて意義のある仕事だ。シティのチャレンジを応援したい。

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イベント続発の夜

2006年11月16日 | うんちく・小ネタ

昨日(11月15日)の夜はイベントが続発した。まず会社を出て神田駅で山手線に乗ろうとすると人身事故で電車は運休。田無のフィットネスクラブでスポーツマッサージを予約しているので、一杯飲んで様子をみるという手も使えず銀座線→東西線と乗り継いで帰った。これ自体は大したことではないが、このところ電車の人身事故が増えているのは気になることだ。

田無駅で電車を降りると雹を伴う激しい雨。雹のつぶつぶが靴底をとおして伝わる位の大きさだ。駅横の100円ショップでビニール傘を買おうと思うと長蛇の列である。仕方が無いので定期で駅中に戻り、駅の売店で500円の傘を買う。我が家には二人の娘が買ったものを含めてこの手の傘がごろごろしているが、何か良い有効利用方法はないだろうか?同じような状況の人が傘を持ち寄り、駅に置き傘をしてはどうだろうか?インターネットを使って田無近郊の人に呼びかける方法はないだろうか?

ジムでマッサージ。50分で5千円つまり10分千円。後でワイフに話をすると「高いわねー」と言う。確かに消費者の観点からは高いが、サービスの提供者の方からするとそれ程高いものではないかもしれない。因みにこのマッサージの予約状況を見ると平日にもかなり9割近く埋まっている。ということはマッサージャーは一日7時間位マッサージをして3.5万円位稼ぐ。しかしその内場所を提供するジムに幾らか払うだろうから手取りは3万円弱。平均すると2万円程度かもしれない。すると一ヶ月25日働いて50万円。平均の稼働率はもっと低いかもしれないので50万円稼ぐことは楽ではないだろう。そうすると10分千円のマッサージ代はそれ程高くないのかもしれない。

さて自宅に帰りNHKの「その時歴史が動いた」で「真田太平記」の話を見ようとすると、千島列島の地震に伴う津波予報の話が続いていてキャンセルになっていた。仕方が無いのでドラクロアの絵を解説している番組を見ながら少しラフロイグを飲んで寝ることにした。

私の身の上にはこの頃平穏な日々が続いているので、この程度のことがイベントに思われた一夜だった。

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いじめ問題は「什の掟」で解決すべし

2006年11月14日 | うんちく・小ネタ

子供のいじめ問題がマスコミを賑わしている。その対策についても識者と称する様な人が色々述べているがピンと来るものは少ない。私は少年の教育にとって一番必要なことは「社会生活で必要なルールを無条件に教え込む」ことだと考えてきた。

それは「論語」でも良いし「モーゼの十戒」でもかまわないが、「人がすべきこと」「してはいけないこと」を無条件に叩き込むことである。これはビーバの親が子供に泳ぎ方を教え、ふくろうの親が子供にえさの獲り方を教えるようなもので理屈はいらないのである。

このような基本的な教えの中でシンプルで小学校低学年の子供に適していると考えられるのが会津藩で6歳から9歳位までの子供が暗誦し誓い合ったのが「什の掟」である。

1.年長者の言うことに背いてはなりませぬ

2.年長者にはお辞儀をせねばなりませぬ

3.うそを言うてはなりませぬ

4.卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ

5.弱いものいじめをしてはなりませぬ

6.戸外でものを食べてはなりませぬ

7.戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ

ならぬことはならぬものです

以上

「什の掟」の中に「弱いものいじめをしてはいけない」という教えがあることは、このような教えがないと昔の子供社会でも「いじめ」があったことが分かる。生物としての人間は生まれた時から限られた食料や寝場所を求めて兄弟の間ですら、競争する様に遺伝子が仕組まれているはずだ。弱いものを蹴落とすのが「個体と種」を繁栄させるための遺伝子のプログラムである。しかし人間の様に複雑な社会を構成し、精神面のウエイトが高くなった生物では遺伝子の支配のままに生きることは危険である。

話の本筋から外れるが肥満の問題は遺伝子の仕業である。長い飢えの歴史の中で人間の遺伝子は余分なエネルギーを脂肪として蓄積するようにプログラムされているが、これが肥満の原因である。従って人間は「食べ過ぎが体に良くない」ことを学び自制することが必要になる。

このように遺伝子の働きを修正するには「教育」が必要である。「何故卑怯な振る舞いはいけないのか?」「何故いじめはいけないのか」ということをゲームの理論などを使って論理的に説明することはできる。しかしそれは小学校低学年クラスの子供には難しいだろう。この年代の子供達には理屈抜きに社会生活の基本原理を叩き込むということが必要である。

この様に極めて有効な教えであるが教育者が「『什の掟』を教えよう」と主張しない理由は簡単である。つまり「教育者」とか「指導者」と称する人大人で胸を張ってこの掟を守っているといえる人間が余りに少ないのである。無論「戸外でものを食べる」と「戸外で婦人と言葉を交わす」は今日的に修正した上でもだ。

マスコミを賑わすのは知事や政治家、マスコミを賑わした若手経営者、高等学校の校長や教育委員達のウソと卑怯な振る舞いである。街に出れば若者が路上にへたり込んでアイスクリームを食べている。行楽地に行けばヘベレケに酔っ払っている中高年の旅行客が溢れ、電車の中では朝からべたべたしているカップルがいる。会社では些細なことで部下をいじめるパワーハラスメントが問題になるかと思うと、上司にまともな挨拶も出来ない閉じこもり型の部下が増えているという状態だ。

つまり現在の日本の社会~いや日本だけかどうかは知らないが~は、江戸時代の子供の規範から見ても極めてでたらめな社会になっている。子供のいじめの問題は畢竟でたらめな大人に対する「生物」としての警告なのかもしれない。

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