今「サブプライム問題が近未来に与える影響」(仮題)で雑誌に記事を書こうと構想を練っているところだ。一つの論点はサブプライム問題は「金融問題」と「実態経済上の問題」を含んでいて分けて考える必要があるということになるだろう。後者についていうと借金をして消費を謳歌し、その借金を住宅の値上がり益で帳消しにしてきた米国スタイルの歪みがサブプライム問題という形で噴火したのではないかというストーリーになる。
その傍証を探していたところ、ファイナンシャルタイムズ(FT)の中に米国でクレジットカードのデフォルトが増加しているという記事があった。この事実が語る真実は何か?ということはゆっくり解釈するとして記事のポイントをピックアップしてみた。
- 昨年に比べて米国の消費者のクレジット・カード支払いにおけるデフォルトが顕著に増えている。このことは問題がサブプライムローンから他の消費者信用に広がっていることを示唆する。2007年前半クレジットカード会社は回収不能で4.58%の償却を強いられた。これは前年同期比約3割増だ。また支払い遅延も増加している。
- ムーディーズのアナリストは、この傾向は米国の住宅市場の低下と不動産担保借入を安い新しいホームローンで借り替える人の数の減少と相関関係がある可能性が高いと言っている。
- 「金利が上昇したことと不動産市場が軟化したことで、クレジットカードでの借入を不動産担保融資で借り替える魅力が減少した」とムーディーズは言う。しかしクレジットカードでデフォルトを起こした人がサブプライムローンでデフォルトを起こした人と同一かどうかははっきりしないとムーディーズは加える。というのはほとんど追加借入をする担保余力のないサブプライムローンの借手は「クレジットカードでデフォルトを起こす前にサブプライムローンのデフォルトを選択する」可能性があるからだ。
- ムーディーズのエコノミストは「消費者信用の質は引き続き悪化するだろう。債務負担が増え、住宅価格は引き続き下落し、信用供与基準は引き締められる。労働需給はそこそこ緩く、ガソリンや他のエネルギー価格はするからだ」と言う。
以上が記事のポイントだ。サブプライムローンの問題が米国の個人のファイナンスプランを狂わせ、金利の高いクレジットカード債務が金利の安い不動産担保借入に振り変わらなくなるなると、カード債務のデフォルト率が増えるばかりでなく、個人消費支出が圧迫されることになる。これは米国のGDPを大きく減少させ、中国や日本の輸出にブレーキをかけることになる。
アメリカの消費者信用の動向は要注意だ。