FTを読んでいたら「中国人は火酒から雪(snow)に切り替えるか?」という記事が出ていた。Snowというのは英国の大手ビール会社SABMillerが中国の合弁会社で作っているビールのブランド名だ。合弁会社はSABMillerが49%、China Resource Groupが51%を出資する。Snowビールがアンホイザー・ブッシュについて世界第二のビールブランドになるという記事は9月20日にロンドンで出ていた。三位のブラジルのSkolと四位のメキシコのコロナビールを抜き去ることになる。因みにアンホイザー・ブッシュはバドワイザーを作っている。その記事によるとSnowビールの出荷量は今年の前半半年で230万キロリッターだ。2006年度の日本のビールの全出荷量(除く発泡酒)が349万キロリッターだからSnowビール一社で日本のビール会社全体を上回る出荷量になるということだ。しかしそこで成功することはたやすくない。」とあった。中国に飲酒制限年齢がないとは驚いた。ちょっと脇道にそれるけれど、世界各国の飲酒制限年齢が気になり、インターネット(Wikipedia)で調べたところ 意外に飲酒制限年齢がない国が多いのである。例えばギリシア、ハンガリー、アイルランドも飲酒制限年齢がない。ドイツ、イタリア、スペインあたりはビール・ワインで16歳、蒸留酒が18歳だ。FTを書いているイギリスの飲酒制限年齢は5歳だから驚く。中国をからかっている場合ではないだろうと思う。もっとも各国とも酒の購入年齢には制限がある。大体18歳が多い様だ。
なお日本のビールメーカーではサントリーが先発して中国に進出し「三得利」のブランド名で上海地区中心にシェアを伸ばしている。しかし中国全体のシェアは欧米系の三分の一程度のようだ。機会があれば日本のビール会社の中国戦略も調べてみたいが、どうも欧米の大手に資本力とディールの速度で負けているのではないかという懸念が強い。
酒はその国の風土や食事、文化スタイルに追随する。日本でも戦後しばらくは濃厚で甘い酒が好まれた。これは人々が甘いものに欠乏していたからである。しかしその後飽食の時代が来ると端麗な吟醸酒が好まれるようになった。食の嗜好が酒を決めるのだ。中国でプレミアなビールが売れるためには食事と文化スタイルの変化が必要かもしれない。日本人が日本食と組み合わせたビールの飲み方などの「文化」を輸出できると面白いのだが。
ところで中国のビール産業だが、規模は世界最大でかつ年率10%の成長率を示しているものの、利益率は低い。というのは地場のビール会社が質が悪く安いビールを出していてそれとの競争が大変だからだ。例えばSnowビールは売り上げ量ではSABMillerに18%の貢献を行っているが、利益面での貢献ははるかに低い。中国には巨大な成長性があり、生活水準の向上により、ビールの消費はこれから期待できるだろう。