金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

サルのがまんと人間の公平

2007年10月09日 | うんちく・小ネタ

エコノミスト誌に「チンパンジーの方が人間より我慢強い」という話が出ていた。最近の研究で人間の特性と思われる「我慢」とか「公平」という性質がかならずしも人間固有のものでないことが分かってきた。我慢Patienceとは「より大きな報償を得るために欲望を満たすことを遅らせる能力」であるが、実験では好物の食料~これは人間とチンパンジーでは違うらしいが~をすぐ取るか少し我慢できるかを調べた。もし被験者がすぐ食料に手を出すと1単位しかもらえないが2分間待つと3単位の食料が貰える。この実験の結果チンパンジーの方が人間より4倍位我慢強いことが分かったそうだ。その内辛抱の足りない人間をチンパンジーにも劣るというような言い回しが出てくるかもしれない。

ところで「朝三暮四」という諺がある。これは列氏に出てくる話で「昔宋の国に猿を沢山飼っている狙公という人物がいた。だんだん猿の餌代に困ってきたので猿に『これからは朝三つ暮れに四つにする』と言ったところ猿達が怒り出した。そこで狙公は「では朝四つにして暮れに三つにする』というと猿は喜んで納得した」というのが粗筋だ。

ここでは目先の利益につられて全体像が見えない猿が馬鹿にされているが、もし狙公が飼っていたのが普通の猿ではなくチンパンジーならこうは単純に行かなかったかもしれない。チンパンジーを甘く見てはいけないのだ。

ところで公平Fairnessについても実験が行われた。これは「最後通牒ゲーム」と言われるもので、提案者と回答者に別れてゲームをする。提案者はある品物(金でも良い)を自分と相手の分に好きな割合で分割して、回答者に提示する。この時回答者が応諾すると提案者と回答者はその品物を受け取ることが出来る。しかしもし回答者が提案者の配分割合が気に入らず拒否した場合は両者は何も受け取ることができない。

経済合理性を考えると回答者は配分がゼロでない限り、応諾した方がメリットがあるが、実験結果は違った。文化・年齢を超えて回答者への配分が2割以下の場合、回答者は拒絶したのである。これは提案者の貪欲を罰したものと解される。この公平の感覚というのは人間に特徴的でチンパンジーの方がより経済合理的に行動するらしい。

2割が公平さの臨界点というのは頭の中に入れておいて良いかもしれない。例えば日本のサラリーマン会社では平社員の年収は社長の年収の2割程度というところが多いのではないか?

もっとも公平の感覚の強さは文化的・後天的なものより遺伝的な要素が強いとエコノミスト誌が掲載した研究は行っている。そういえば身の回りにもやたらと「配分にこだわる」人がいて、中々妥協しなくて困ることがある。遺伝だと割り切るよりしょうがないのかもしれない。

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