今日会社で「個人型の確定拠出年金に加入してはどうか?」という話題が出ていた。私の今いる会社は企業年金を実施していないので、個人型確定拠出年金(401K)に個人で加入しようと思うと加入できない訳ではない。しかし私の意見は「おやめになったら?」である。401Kのメリットは掛け金の所得控除と運用段階の非課税だが、デメリットである管理コストが高すぎる。受託機関でばらつきはあるが大体年間4,5千円だろう。一方拠出限度は月18,000円年間で21.6万円だ。これに対する手数料の割合は2%を越える。低金利・株式低迷の日本で2%を超える運用を行うことは楽ではない。ということは401Kのメリットは運用財産がつみあがらないと出ないということだ。
そんな話をしている時FTが日本の401Kを論じていた。
FTによると野村アセットの柴田社長は同紙に「日本の確定拠出年金制度は拠出限度が低いので役に立たない」と述べた。又同氏は「日本の資本市場を強化し、富の創造を刺激する上で年金制度改革がきわめて重要だ」「もし年金改革が成功すると日本の資産の上に課せられた不必要な制限が取り払われ、貯蓄は資本市場に流れ出し、消費を伸ばす富の創造が行われるだろう」と言う。
柴田氏のコメントは1,500兆円の金融資産の半分を預貯金に回している日本の保守的な貯蓄者をより利回りの高い商品に向かわせるためには、日本政府はより力強いアクションを取る必要があるという見方が広がっていることを反映している。
日本の401Kプランは拠出は会社が行うが受益者(従業員)が自己の判断で資産配分を行う。しかし拠出限度が低いため401Kプランが本来思うほどに伸びないと柴田氏は言う。(なお正確に言うと日本の確定拠出年金でも、個人型と呼ばれる受益者が拠出する制度もある。この制度には自営業者や企業年金未実施の会社の従業員が加入することが可能だ)
日本の確定拠出年金の拠出限度は他の年金制度の有無等により異なるが216,000円から816,000円の範囲である。一方米国の拠出限度は4万5千ドル(約530万円)だ。この結果日本の確定拠出年金加入者は240万人で資産規模は3兆5千億円となっている。因みに米国の確定拠出年金制度加入者は43百万人で資産総額は350兆円だ。
個人資産を貯蓄から投資にシフトすることは、将来の年金受給者をサポートする上で重要なだけではなく、日本の金融セクターの競争力を高めるためでも重要である。
柴田氏は「投資銀行の国際本部はロンドンにあり、地域本部は香港かシンガポールにある。東京はアジア地域の本部にすらなれない」という。
日本をアジアの金融センターにするため401Kを改革するのは本末転倒のような気がするが、高齢化する日本で高齢者の尊厳を守るためには、十分な年金が必要である。そのためにはせめて管理コストを十分まかなえる位に拠出限度を拡大するべきであろう。
日本人はアメリカの制度を真似する時形だけを真似して中身をまねしないことが多い。大切なものは401Kという器があるかどうかではなく、その器で高齢者が十分飯が食えるかどうかなのである。税収と掛け金を天秤にかけて、年金の充実を図らないような政策は基本的に間違っているのである。