金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日本はビルマで二度負ける?

2007年10月23日 | 社会・経済

FTによるとインドと中国は第二次大戦時に援蒋ルートとして建設されたレド・ロード別名スティルウエル・ロードをまもなく再開させるということだ。レド・ルートというのは、インドのアッサム州レドから中国の昆明を結ぶ道路で、日本軍に物資輸入を封鎖された中国に連合軍が物資を送るため建設したものである。蒋介石Chiang Kai Shekが建設を指揮した米国の将軍スティルウエルの名前を付けることを薦め、スティルウエル・ロードとなった。建設に携った米兵は15千人、現地人は35千人で11百人の米兵が工事中に死亡する(恐らくそれ以上の現地人が死亡)という難工事だった。

中国とインドは現在ミヤンマーの軍事政権が民主化運動に対して弾圧政策を取っていることについて非難することを避けている。その大きな理由の一つがビルマ経由でインドと中国の間に高速道路を建設することにある。このために両国はミヤンマーと友好関係を維持したい訳だ。道路建設はインド側が遅れているが、FTによると来年3月までに2車線の高速道路を完成させる予定だ。インド政府は長年北東部の暴動に苦しめられてきたが、経済発展が政情安定化の王道と考えてこの地域をミヤンマー経由で外部に結びつけることに力を入れている。インドのアイヤールAiyar北東地区担当大臣は「第二次大戦で連合軍がスティルウエル援蒋ルートを開通させて日本を負かした様に、現在の経済競争で我々はスティルウエル道路を再開して日本を再び打ち負かすことが可能ではないか?」という。

なおインド北東部にとってより重要な輸送ルートはカラダン河を経由してミヤンマーの港町シットウに結びつけるルートであるが、スティルウエル道路は歴史的な背景があったので話題になったということだろう。

インドのアイヤール大臣が言うように、インド北東地区が活性化するとやがて日本にとって脅威になる日が来るかもしれないが、私はこれを大いに歓迎したい。経済発展は紛争地区に争うことより生産性を高める方が幸せに近づく道であることを教えてくれる。日本は建設機械の輸出などを通じてこの地域の発展に貢献すれば良い。お互いの反映は勝ち負けの彼岸にある。

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分かり易さへの逃避

2007年10月23日 | うんちく・小ネタ

21日のFTに「分かり易さへの逃避」A flight yo simplicityという記事が出ていた。この言葉は「質への逃避」Flight to qualityをもじったものに他ならないが、現在の欧米の投資家の心理を言い当てているのでひょっとすると流行るかもしれない。要はリスクの所在とその量を把握できない投資家達はストラクチャード・ファイナンスで作られた金融商品を忌避してもっとシンプルで伝統的な商品へ回帰しているという話だ。本筋の話は別途するとして、周辺の雑談をしよう。

そもそも単純さとか率直さは本来米国人が最も愛する徳性である。GEの元会長のジャック・ウエルチがこのような言葉を述べている。Tough  minded people are always simple. Insecured manageres create complexity. Tough mindedとは「現実的な」あるいは「意志が強い」よいう意味だ。つまり現実的で意志が強い人々は常にシンプル単純である。自信のない管理者は物事を複雑にするという意味だ。

FTの記事によると、ストラクチャード・ファイナンス・セクターが拡大し始めたのは今世紀初めであり、その時はヘッジファンド、その他のプロフェッショナルな投資家、投資銀行マンが市場を占有していた。この投資銀行マンというのが数学で博士号を取る位出来る奴で実際高給を貰っている。

信用収縮が起きた後9月の始め英国のダーリング蔵相は「銀行は伝統的な融資業務へ回帰しろ」という呼び掛けを行い、市場関係者からは冷たい目で見られていた。しかし実際のところ、投資家達は投資案件の複雑さに耐える寛容さをなくしているので信用が一層収縮するという現象がおきている。

ある米国の大手銀行の固定利付債の責任者は「今起きていることは『単純さへの逃避』で、投資家達は不透明過ぎると思われるものや、『モーゲージ(不動産抵当)』という言葉が付いているものには触れたがらない」と言っている。

確かにストラクチャード・ファイナンスを中心に複雑な商品が販売され、多くの投資家が食傷気味になっていることは事実だろう。

ストラクチャー物の多少の利回りの良さを放棄して、シンプルな商品に投資することは暫くの間流行するだろう。このことは株式や債券の市場では、一般大衆に名前の浸透した企業が歓迎されるということだ。一方ストラクチャー物で資金を調達してきたInvestment grade以下の企業にとっては資金調達が苦しくなる。

サブプライムローンの影響は「分かり易さへの回帰」を通じて、大企業にフォローの風を送ることになるようだ。

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