金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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国内外株式、一体で運用~りそな銀の提案は正しい

2010年01月04日 | 株式

今日(1月4日)の日経新聞朝刊に「りそな銀行が年金基金に対して、国内外の株式運用を一体で管理する提案を始めた」という記事があった。りそなを含む信託銀行は、伝統的に年金資金の運用を、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4資産に分けて運用してきた。なお一部の基金では5番目の資産としてオルタナティブ(ヘッジファンド、不動産等)を入れているところもある。りそな銀の提案はこの内外株式の垣根を取り払い、運用の参考指標(ベンチマーク)も、日本を含む世界の先進国株の指標を採用するということだ。

私はこの提案は正しいと考えている。その理由の大きなものは二つだ。一つは実物経済の世界では、世界の有力企業は国境を超えて競争し、利益を上げている。このような環境下私は国別に投資先を選ぶより、業界別に投資先を選ぶ方が良い場合もあると考えている。

次の理由は過去のパフォーマンスを見ると日本株より、海外株のパフォーマンスが良いということだ。過去のパフォーマンスは将来の成果を約束するものではないが、少子高齢化とデフレが進行する日本株のパフォーマンスは近未来も高くないと想像せざるを得ない。

世界的な株のパフォーマンスをざっと振り返ってみよう。全世界の株式をカバーするFTSE All World Indexは昨年(2009年)32.3%上昇したものの、過去10年間では7.3%下落した。

米国株の指標であるダウは2007年10月に14,164.53ポイントの高値をつけたが、その後の信用バブルの崩壊で下落し、昨年のラリーはあったものの、10年間では9.3%下落した。またより、広く市場をカバーしているS&P500は過去10年間で24.1%下落している。日経平均の最高値は20年前の話で、過去10年間では44%下落している。ロンドン株の指標であるFEST100は1999年の年末に最高値を付け、過去10年では22%下落した。

対照的に高いパフォーマンスを上げたのは、エマージング市場だ。ロシアのMicex指数は過去10年で802%上昇し、ブラジルのボベスパは301%、インドのSensexは249%、中国の上海コンポジット指数は140%上昇している。

これら新興国の株式パフォーマンスが好調だったので、先進国株の大幅下落をカバーして世界全体の株式パフォーマンスの悪化を緩和したのだ。

FTによると昨年のエマージング市場ファンドへの資金流入は803億ドルと巨額だった(EPFR Global調べ)。これはEPER Globalが調査を開始して以来最大の資金流入だった。昨年の全世界の先進国株価指数FTSE All-World Deveroped Indexは28%の上昇だったが、エマージング市場の上昇は75%とはるかにアウトパフォームした。

もっとも今年もこの勢いが続くという保証はない。リーマンショックが世界を震撼させた2008年には495億ドルの資金がエマージングファンドから流出している。比較的堅調な回復振りを見せている米国経済が悪化すると、投資家はリスク回避的になり、一時的な下落は避けられないだろう。

ただし長期的に見ると経済成長率の違いから、発展途上国の株式が先進国の株式をアウトパフォームすることは間違いないというのが多くの人の見方である。株式は内外一体で運用するという考えは正しいのだろう。

コメント (1)
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