10日に中国税関総署が発表した数字によると、2009年の輸出額は前年比16.0%減の1兆2016億ドルだった。中国の輸出統計については先週エコノミスト誌が予想を出すとともに、興味深い分析をしていたので紹介したい。
「中国の輸出シェアは1993年には3%だったが、ドイツを上回り輸出世界一となりそのシェアは約10%だ」
「外国人は中国の輸出シェアが伸びている主な理由は北京政府が人民元安を維持しているからだと主張する。しかし中国の輸出が世界的なリセッションの中で競争相手国より良かったことには幾つかの他の理由がある。収入減により消費者はトレードダウンをするため中国製の安い商品が売れたことや、米国政府が昨年1月に世界的な繊維輸入割当を廃止したことなどがあげられる」
「中国の輸出シェアはどこまで成長するだろうか?2008年までの10年間、中国の輸出は年間平均23%(ドルベース)で伸びてきた。これは世界の貿易量の伸び率の2倍だ。もし中国がこの勢いで輸出を伸ばすと、10年以内に中国の輸出シェアは世界の輸出の25%を占めるだろう。」
「これは1950年代初めにおける米国の輸出シェア18%を凌駕するだろう。米国の輸出シェアはその後8%まで下落している」「シェア10%というのは日本が1986年にそのピークを迎えた輸出シェアと同水準である。その後日本の輸出シェアは減少し、現在は5%程度だ。これは1985年から88年にかけての急速な円高で輸出業者が痛めつけられたからである。輸出業者の多くは工場を中国を含む海外に移転した」
「4つのアジアの虎(香港、シンガポール、韓国、台湾)の輸出シェアも10%に到達したがその後減少している。」
中国もまた競争力の低下や保護主義の台頭によりこの10%という壁にぶつかるのだろうか?
「2009年に公表されたIMFのワーキングペーパーは、理屈の上では中国が輸出依存型のまま8%の経済成長率を維持するとすれば中国の輸出シェアは2020年までに17%に拡大するだろう」「これが実現するためには中国は主要な輸出品である鉄鋼、船舶、機械類の価格を下げる必要がある」
しかしここでエコノミスト誌は中国の将来の輸出は鉄鋼など既存の輸出品目だけではなく、新しい産業例えばコンピュータ・チップだとか自動車によってももたらされるだろうと予測している。
その理由は「中国は日本が急速な円高を被ったようなことを避ける資本のコントロールにおける優位性を持っていること」と「中国の賃金の多重性」であるとエコノミスト誌は分析している。後者についていうと日本の場合は高付加価値の輸出にお傾斜した結果、生産性が向上し全般的に賃金が上昇した結果、繊維のような古い業界の賃金も上昇し、国際的な競争力を失った。
中国の場合、繊維・靴産業など低賃金による価格競争力の維持が必要な産業は労働コストの低い内陸部に移動するすることで競争力の維持を図っている。
ところで中国の立場からものごとを見ると違う様相が見えてくる。中国の輸出は2007年当時のGDP比36%から昨年の24%に下落している。また中国の輸入は輸出よりも力強い伸びを示している。年初から11月までの輸出を見ると前年比27%拡大している。
中国の世界経済への貢献については強力な擁護者もいる。エコノミスト誌は証券会社CLSAのアナリスト クリス・ウッド氏の「中国は世界経済のリバランスについて米国より貢献している。リバランスの要請は米国にはもっと貯蓄を、中国にはもっと消費を求めるものだが、中国は自動車や耐久消費財の買い替え促進プログラムで内需拡大に貢献しているが、米国の貯蓄拡大策より成果をあげている」という言葉で記事を締めくくっている。
市場の大きな関心事は北京政府が人民元の引き上げを認めるかどうかだろう。ファイナンシャルタイムズはCLSAの主任中国エコノミスト・Rothman氏の「人民元の切り上げを行う前に、中国政府は3つのことが起きるをのを待っている。それは中国の強力な景気回復、米国と欧州経済の安定、数ヶ月にわたる輸出の拡大である」
中国の輸出拡大が続くという予想が多いようだが、歴史を見ると「一人勝ち」に対しては通貨切上などのプレッシャーが高まる。中国の前にも世界シェア10%の壁が立ちはだかる。この壁を超えることができるかどうか、中々興味深い問題である。