「窓口規制」とは昔の銀行員には懐かしい言葉だが、最近の銀行員は知らないかもしれない。「窓口規制」とは日銀が民間金融機関に対して、企業に対する貸出増加額を適切と判断する範囲に留めるように直接指導したことだ。強制力はないが、高度成長時代に恒常的に資金不足だった都銀は、日銀からの借入でまかなっていたので、窓口規制に従うメリットを選択していた。しかし高度成長時代が終わり、金余りの時代がきた1991年に廃止されている。
中国では昨日当局(中国銀行業監督管理委員会)が、総ての銀行に対して貸出枠を当てはめるとともに、最も積極的に貸出を伸ばしている銀行については貸出をやめるように「口頭でガイダンス」を出したとFTは報じている。まあ、中国版窓口規制というところだろう。
昨日の市場はこのニュースを受けて、世界的に株価が下落した。たとえばブラジルの株価(ボベスパ指数)は、2.4%下落している。これは鉄鉱石などブラジル産品の最大のお客さんの景気が減速するだろうという想像が働いたものだ。
中国の銀行は昨年景気刺激策をサポートするようにという政府の命令を受けて、9兆6千億元の新規貸出を行った。これはその前の年の倍の金額だ。
今年に入っても貸出は異常なペースで伸びていた。1月の最初の2週間で1兆1千億元(1,610億ドル)の新規貸出が行われたとFTは報じている。仮にこのペースで行くと年間では30兆元というとてつもない貸出が行われるので、当局はブレーキをかけた。
銀行業監督委員会のLiu会長は「今年の新規貸出額は7兆5千億元(1兆1千ドル)で昨年比22%の減少になるだろう」と予想を述べている。この貸出増加額は経済成長を持続させる上で十分な金額なので、中国当局が政策転換をした訳ではないと判断される。むしろこれは準備率の0.5%引き上げやインターバンク金利の引き上げと整合性のあるインフレ抑制策であり、中国の経済成長を大きく阻害するものではないだろう。アナリストは中国がベンチマークとなる貸出金利の引き上げを年前半は行わず、後半に緩やかな引き上げを行うと予測している。