金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国当局、貸出抑制に窓口規制

2010年01月21日 | 金融

「窓口規制」とは昔の銀行員には懐かしい言葉だが、最近の銀行員は知らないかもしれない。「窓口規制」とは日銀が民間金融機関に対して、企業に対する貸出増加額を適切と判断する範囲に留めるように直接指導したことだ。強制力はないが、高度成長時代に恒常的に資金不足だった都銀は、日銀からの借入でまかなっていたので、窓口規制に従うメリットを選択していた。しかし高度成長時代が終わり、金余りの時代がきた1991年に廃止されている。

中国では昨日当局(中国銀行業監督管理委員会)が、総ての銀行に対して貸出枠を当てはめるとともに、最も積極的に貸出を伸ばしている銀行については貸出をやめるように「口頭でガイダンス」を出したとFTは報じている。まあ、中国版窓口規制というところだろう。

昨日の市場はこのニュースを受けて、世界的に株価が下落した。たとえばブラジルの株価(ボベスパ指数)は、2.4%下落している。これは鉄鉱石などブラジル産品の最大のお客さんの景気が減速するだろうという想像が働いたものだ。

中国の銀行は昨年景気刺激策をサポートするようにという政府の命令を受けて、9兆6千億元の新規貸出を行った。これはその前の年の倍の金額だ。

今年に入っても貸出は異常なペースで伸びていた。1月の最初の2週間で1兆1千億元(1,610億ドル)の新規貸出が行われたとFTは報じている。仮にこのペースで行くと年間では30兆元というとてつもない貸出が行われるので、当局はブレーキをかけた。

銀行業監督委員会のLiu会長は「今年の新規貸出額は7兆5千億元(1兆1千ドル)で昨年比22%の減少になるだろう」と予想を述べている。この貸出増加額は経済成長を持続させる上で十分な金額なので、中国当局が政策転換をした訳ではないと判断される。むしろこれは準備率の0.5%引き上げやインターバンク金利の引き上げと整合性のあるインフレ抑制策であり、中国の経済成長を大きく阻害するものではないだろう。アナリストは中国がベンチマークとなる貸出金利の引き上げを年前半は行わず、後半に緩やかな引き上げを行うと予測している。

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How the mighty fall. あるいは小沢氏も

2010年01月21日 | 政治

昨日(1月20日)の日経朝刊・社説はJALの倒産に至る道筋を、ジム・コリンズの説を引用して説明していた。これは個人的なことながら、私にとっては誠にタイミングの良い文章だった。というのは地域金融機関向けの小雑誌(New Finance)1月号に私はジム・コリンズのこの意見を紹介したが、昨日この雑誌が読者のお手元に届く時期だったからだ。地域金融機関の役職員という読者層を考えた場合「偉大な企業はどのようにして失墜するか」(原題How the mighty fall)という内容はやや関心が薄いのではないか?というちょっとした懸念を持っていたからだ。だが恐らく何割かの読者は日経の社説と私の小文を重ねて読まれたのではないか?と推測している。

ところでこのmightyという言葉だが、形容詞として「力のある、強大な」という意味があるとともに、名詞としては集合的に「力のある人」という意味がある。用例としてはThe rich and the mighty(金持ちと権力者)というように。

今「力のある人」「権力者」というと、民主党の小沢幹事長の名前が頭に浮かぶ人が多いのではないだろうか?そしてHow the mighty fall.という文章から「権力者はどのようにして墜落するか?」ということに思いを巡らす人もいるだろう。

ジム・コリンズの破綻にいたる5段階説を再確認してみよう。第一段階が「成功が慢心を生む」段階、第二段階が「規律なき拡大を追及する」段階、第三段階が「リスクと危険を否定する」段階、第四段階が「ひたすら救世主にすがる」段階、そして最後が「救済手段が破綻して敗北する」最終段階だ。

小沢氏の政治資金問題について私はマスコミ情報以上の情報は持ち合わせていないので、この段階で白黒を述べるつもりはないが、小沢氏はもっと早く特捜部の事情聴取に応じるべきであったと考えている。

「昨年の総選挙で民主党が大勝したことで、政治資金疑惑問題は終了した」とか「検察と全面対決する」などという小沢氏の発言は、私には「成功が慢心を生む」段階と「リスクと危険を否定する」段階が混在した段階からの発言と聞こえる。

私は先の選挙で民主党に投票していないので、当然小沢氏の政治資金問題は解決していないと思っているが、民主党に投票された方の中の多くの人も民主党を選んだことと小沢氏の政治資金問題を不問にするということは別だと考えているのではないだろうか?

小沢氏およびそのエピゴーネンの一連の発言は「慢心しながら民意という救世主に頼ろう」とするように見えるが、民意はそれを認めるのだろうか?

コメント (1)
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